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アップサイクルとは・意味

アップサイクルとは?

本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること。

耐用年数を越えたソーラーパネルをテーブルとして利用したり、擦り切れたタイヤをカバンに作り変えたりと、アップサイクルは家具業界からファッション業界など、さまざまな業界で注目されている。

アップサイクルの歴史

アップサイクルの始まりは、1994年10月11日。レイナー・ピルツがドイツメディアSalvo Newsに向けてアップサイクルとダウンサイクルについて語ったのが初めてだと言われている。

しかし、1800年代のアメリカの思想家ラフル・ワルド・エマソンが「自然界には寿命を終えて捨てられるものはない。そこでは最大限利用された後も、それまで隠れていた全く新しい次のサービスに供される」と語ったように、それまでも人はごく当然にアップサイクルを行ってきた。

産業革命以降、「効率性」と「規模」が追求されるようになり、バージンマテリアル(=新品素材)を使って行う大量生産が当たり前になった。これにより、修理しながら使用することが前提の修理系アイテムを使い続けるよりも、修理しないで使用することが前提である非修理系アイテムを買い替えていく方が安く、「使い捨て」文化が定着していった。

しかし近年、地域社会・地域経済といった社会との関わり方や、地球や自然環境に対する意識の高まりやSDGsへの取り組みなど、個人のみならず企業の意識が変化しつつ有り、改めて「アップサイクル」という概念が注目されるようになっている。

日本におけるアップサイクル

東京都立産業技術大学院大学が2020年9月に実施したアップサイクルに関するアンケート調査(N=452人)によると、リサイクルという言葉の認知度は98%であるのに対し、アップサイクルという言葉の認知度は45.7%に留まる。

しかし、アップサイクルの内容を説明した上で、「アップサイクルは必要か?」という質問に対しては、91.7%の方が「必要」だと感じており、言葉の認知度と必要性への意識に大きなギャップが見られる。

日本では古く鎌倉時代から人糞を発酵させ肥料に変えることで有価物として取引を行っていた。また、綿や絹が貴重であった江戸時代には、着古した綿布や絹布を裂いて繊維に戻し、それを安価な麻糸と織り上げて“裂織“という織物に生まれ変わらせるなど、アップサイクルは身近なこととして行われていた。

当事者自身が言葉を意識せずに「アップサイクル」を行っていることもあり、改めて見直してみるとアップサイクルといえるものが世の中には多くある。

アップサイクルの事例

ファッション業界

ファッションブランドBEAMSでは、クリエイターが同社の在庫・デッドストック品を一点物として商品に蘇らせる「BEAMS COUTURE(ビームス・クチュール)」という取り組みを行っていたり、アパレルブランドのブランドタグを付け替え、新しい名前や新しい価格で新しい人に届ける、「Rename(リネーム)」というブランドとして販売したりするなど、ファッション業界ではさまざまなアップサイクルが行われている。

アパレルメーカーのみならず、売り場を提供する百貨店も動き出している。株式会社そごう・西武では、店舗で使用していた懸垂幕を、取引先や地元の大学等と協力しトートバックを作るなど、百貨店の持つ発信力を活かし、地域を巻き込んだ形での社会課題の解決を目指している。

建設業界

建築業界では、既存の躯体を活かしつつ新しいコンセプトを吹き込む「リノベーション」という手法が古くから日常的に用いられており、これも一種のアップサイクルといえる。

建物にとどまらず、建物を含むエリア一体でアップサイクルを行うことで、その地域そのもののアップサイクルにつながる場合がある。たとえば、横浜市にある「赤レンガ倉庫」を中心に広場や公園を備えた「赤レンガパーク」だ。

現在は商業・文化施設として親しまれているが、もともとは1911年に保税倉庫として竣工された建物である。竣工以来、赤レンガ倉庫が立地する新港埠頭は取扱貨物量を増やしていたが、貨物のコンテナ化が進行した1970年頃を境に貨物取扱量が減少し、1989年に保税倉庫としての役割を終えた。その後、再開発計画が動き始める1992年まで手つかずで放置されたため、壁面に落書きされるなど建物は荒れていた。

しかし1992年に横浜市が国から倉庫を取得し、「港のにぎわいと文化を創造する空間」をコンセプトに、屋根・外壁の補修や構造の補強工事を開始し、2002年に文化ホールを備えた商業施設として開業すると、現在ではみなとみらいを代表する施設となった。これは一度役割を終えた建物に、その建物が持つ雰囲気や日本最古のエレベーターなどの残存する価値に新しいコンセプトを組み合わせたことで、建物だけではなくエリアのアップサイクルがされた例と言える。

アップサイクル×ワークショップ

アップサイクルに取り組んでいる人々は、子どもから大人まで参加できるワークショップなどを開催し、体験を通してアップサイクルの意義を伝えている人も多い。大手メーカーから出る廃プラスチックをバックやポーチに作り変えるワークショップを開催しているのがVVV-Craft(ヴィークラフト)だ。

ヴィークラフトでは、楽しいワークショップを通して、地域の子どもたちに資源を大切にすることを教えたり、創造力の育成を行ったり、廃プラスチックを減らす一つの解決方法としてアップサイクルを伝え続けている。

企業とのコラボにも力を入れており、日清食品ホールディングス株式会社と協同で「チキンラーメン」の包装フィルムを使ったクラフトのワークショップを開催した。手を動かしながら環境の大切さを実感できる機会を創出しやすいのもアップサイクルのひとつの特徴ともいえるだろう。

アップサイクルを支える職人技

アップサイクルは、もとになる素材が中古品であったり、一点物の素材であるため、新品素材から商品を作るプロセスとは全く異なるものになる。

例えば、廃タイヤチューブからかばんを作っているSEAL(シール)では、タイヤチューブがかばんの素材になるまでに「タイヤチューブの選定⇒洗浄(複数回繰り返す)⇒工場への輸送⇒裁断(円から平面に)」の工程を要しているという。素材となってもそれが一点物のため、そこからかばんを作るには高い縫製技術と素材ごとの微調整が要求される。それを可能にしたのは日本の熟練した職人たちだ。同社では、職人が一点一点手作業でかばんを作っており、「彼らなしでは同社の製品が世に出なかった」と、SEALを運営する株式会社モンドデザイン代表の堀池洋平氏は語っている。

また、奈良に拠点を置く「UPCYCLE LAB(アップサイクルラボ)」では、廃棄消防ホースからかばんを作っている。こちらも筒状の消防ホースをかばんの素材に変えるまでに多くの工場や工房を訪ねて職人との試行錯誤を繰り返し、アイデアの着想から製品化まで長い時間をかけたと同社代表の小島忠将氏は話している。

両氏とも、日本では職人のなり手が減っていることで、工場・工房(往々にして小さな町工場だ)がその技術の継承に課題を抱えていることを問題視しており、将来的に自分たちの商品を作る作りてが居なくなってしまうのではないかという危機感を持っている。

アップサイクルとリサイクルの違い

アップサイクルは単純な「再利用」や「リサイクル」とは異なることを明確にしたい。アップサイクルは、これまでのリサイクルのように「原料」に戻すのではなく、元の製品として「素材」をそのまま活かす手法だ。

リサイクルでは原料に戻したり、素材に分解したりする際にエネルギーが使用されるのに対し、アップサイクルではそのままの形をなるべく生かすため、地球への負荷を抑えることができる。また、アップサイクルは単なる再利用のリユースとも違い、別の製品として生まれ変わらせることで、その寿命を長く引き延ばすことができる可能性がある。そのため、リサイクルよりもサステイナブルであるとされる。

アップサイクルの反対語のダウンサイクル

アップサイクルに対して逆の意味を持つ「ダウンサイクル」がある。たとえば、Tシャツから雑巾を作ったり新聞紙を再生紙にしたりと、元よりも価値や質が下がり、いずれはゴミとなる継続性のないリサイクルのことを指す。つまりアップサイクルはリサイクルによる製品のアップグレードで、ダウンサイクルはリサイクルによる製品のダウングレードとも言える。

監修=東京都立産業技術大学院大学

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(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「アップサイクル」を転載しております。)