50名以上のグローバル大手企業CEO・政治家・国際組織リーダー・慈善家は6月13日、新型コロナ危機からの「より良い復興(Build Back Better)」に向け、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させるべきだとする声明に署名し、13日のFinancial Times Weekendに掲載された。

世界が未曾有の危機に直面する中、同声明はこれまで以上にサーキュラーエコノミー移行に取り組むべきだと主張。サーキュラーエコノミーが社会や環境に貢献するとともに、経済を復興させるものとして、その重要性を再確認した形だ。さらに一歩踏み込んで、今後のプラスチック・ファッション・食・金融分野の大きな方向性を示し、経済界や各国政府にサーキュラーエコノミーに取り組むことやその目標レベルを引き上げることを要望した。

同声明に際して、エレン・マッカーサー財団の創設者エレン・マッカーサー氏は、「分散された、多様でインクルーシブ(包摂的)な経済を共に構築することができます」とその意義を強調した。「後退させるのではなく、今こそ前に進む時だ」が合言葉だ。

声明文の内容

新型コロナ危機が引き起こした問題に立ち向かう今、私たちに投げかけるべきは、「より良い復興をするか否か」ではなく、「いかにすべきか」という問いです。

今回の危機によって気候変動や環境問題から目をそらしてはいけないと、すでに多くの方は呼びかけてきたでしょう。

サーキュラーエコノミーはこれらの問題に対する解決策として提示します。廃棄を出さないように設計することや、製品と原材料を使い続けること、自然の仕組みを再生させることで、環境を回復し、雇用を生み出し、社会にも貢献しながら経済成長の機会を創出します。

主要な企業や政府は、サーキュラーエコノミーへの移行に向け、すでに歩みを進めています。プラスチック汚染に対する実践はその一例です。エレン・マッカーサー財団が掲げるプラスチック分野のサーキュラーエコノミー移行ビジョンと2025年目標を実現するために、850以上の組織が結集しています。この動きを今こそ加速させる時であり、速度を緩める時ではありません。

世界は今、未曾有の難題に直面していますが、私たちはサーキュラーエコノミーへの移行をさらに進めるべく、今まで以上に取り組んでまいります。その結果、社会や環境を良くしながら、ビジネス機会を創出することができるでしょう。

プラスチック分野においては、不必要なものを排除し、新しいビジネスモデルを作り、原材料を革新します。また、すべてのプラスチックを環境に漏出させず経済の中で循環させます。

ファッション分野においては、服がもっと使われ、(循環の中で)何度も作られ、安全で持続可能な原材料から製造されることを確実にします。

食分野については、自然の仕組みを再生し、廃棄物という概念をなくすために、また適切な場合において近郊地域の生産と消費を結びつけるために、製品やサプライチェーンを再設計します。

金融分野では、サーキュラー型ビジネスモデルを採用する企業を支援し、資金を結集させます。

これで終わりではありません。ヘルスケア・テクノロジー・運輸・電機・化学・建築といった復興に重要な役割を果たす他業界も同様に、サーキュラーエコノミー移行に向けて加速させることが可能だと考えています。

世界中の企業や政府、金融機関に私たちのこのサーキュラーエコノミー移行への歩みに加わっていただくよう、ここにお願いする次第です。共にサーキュラーエコノミーへの移行に投資し、既存目標達成に向けて取り組み、さらにその目標レベルを引き上げていきましょう。

主な署名者(一部)

欧州議会環境・公衆衛生・食品安全委員会委員長、フランス環境連帯移行大臣付副大臣、オランダ環境大臣、大ロンドン庁環境・エネルギー担当副市長、アムコアCEO、アラップ会長、バークレイズバンクUK会長、バーバリーCEO、ステラ マッカートニー氏、H&MグループCEO、ロイヤル フィリップスCEO、ロレアルグループ会長兼CEO、コカ・コーラ会長兼CEO、ペプシコ会長兼CEO、ネスレCEO、ダノン会長兼CEO、イケア財団CEO、ルノー暫定CEO、ユニリーバCEO、ヴェオリア会長兼CEO、エレン・マッカーサー氏、WBCSDプレジデント兼CEO、地球環境ファシリティCEO兼評議会議長、PACE共同議長、世界経済フォーラム専務理事、Sea the Future共同創業者、世界自然保護基金事務局長、気候変動枠組条約COP26ハイレベル気候チャンピオン など

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サーキュラーエコノミーに特化した経済復興の声明としては最も大きなものに

欧米で新型コロナウイルスが感染拡大していた3月頃から、グリーンリカバリーに取り組むべきだとする声明が出始め、現在まで政府や各業界団体がそれぞれの立場で表明してきた。5月27日には欧州委員会がグリーンリカバリー案を公表したが、最近ではグリーンリカバリーを経済復興に取り入れるか否かという議論の段階は過ぎつつあり、グリーンリカバリーをどう実現していくかという方法論に焦点が移ってきている。声明の冒頭にもそれが反映されている。

声明は単なる掛け声だけにとどまらず、プラスチック・ファッション・食・金融分野の今後の大きな方向性をグリーンリカバリーの文脈で示した点が特徴だ。これらの4つの業界を牽引するグローバル大手企業はこれまでもサーキュラーエコノミーに取り組んできた。危機に直面したこのタイミングで官民各組織のトップマネジメントが名前を連ね、改めて取り組みを中断しないことを表明した意義は大きい。

グリーンリカバリーの柱の一つはサーキュラーエコノミーの推進だが、コロナ危機におけるサーキュラーエコノミーに特化した声明としては、同声明がその署名者や組織の大きさから見ても最も大きなものになろう。主に衛生の観点や投資の優先順位の低下などから、サーキュラーエコノミーへの移行を一時中断する動きも起こっている。しかし、声明が他業界に呼びかける形で締めくくっているように、今後この動きが一つの潮流として展開していくことが考えられる。

【声明全文】A solution to build back better: the circular economy
【参照記事】‘It’s time to step up, not step back’ — more than 50 global leaders pledge to build back better with the circular economy
【関連記事】欧州委、グリーンリカバリー計画を公表。強調されたサーキュラーエコノミーの3要素