欧州委員会はこのたび、欧州の消費者がグリーンとデジタルへの移行において積極的な役割を果たすことを目的として、新しい消費者アジェンダを発表した。同アジェンダは、2020年から2025年までの欧州における消費者政策のビジョンを提示し、以下の5つの分野に焦点を当てている。

  1. グリーン移行

    欧州委員会は、EU市場の消費者が持続可能な製品を利用でき、選択に際してより良い情報を入手できることを目指す。同委員会は2021年に製品の持続可能性に関するより良い情報を消費者に提供し、グリーンウォッシングや早期陳腐化などに対処する案を提示する。持続可能な消費を支援してグリーン移行を促進するべく、修理と持続可能でサーキュラーな製品を奨励し、企業と協力する

  2. デジタルトランスフォーメーション

    デジタルトランスフォーメーションは消費者生活を根本的に変え、新しい機会を提供して課題を提示する。同委員会は、情報に基づいて選択する消費者の権利を無視したり、行動バイアスを乱用したり、ダークパターンやサブリミナル広告などの意思決定プロセスを歪めたりするオンライン商慣行に対処する。デジタル経済とAIの要件を管理する規定を設定する際には消費者権利を適切に考慮しなくてはならない。現在の規定をデジタル化とコネクテッド製品の増加に適応させるために、同委員会は製品安全関連指令も検討する。小売・金融サービスのデジタル化において消費者保護を強化しなくてはならないため、消費者信用と金融サービスのマーケティングに関する指令を見直す

  3. 消費者権利の効果的な執行

    消費者権利の執行は加盟国の責任であるが、同委員会は調整と支援の役割を有し、消費者法の適時の実施と施行において消費者保護協力ネットワークなどを通じて加盟国を支援する。革新的な電子ツールのツールボックスを展開して、違法なオンライン商慣行に取り組み、安全でない製品を特定する能力を強化するなど、加盟国を支援する

  4. 特定消費者グループの特定ニーズ

    子どもや高齢者、および障害者などの特定消費者グループは、特別な保護を必要とする場合がある。同委員会は、育児製品の基準要件を調査し、コロナ禍で経済状況が悪化した人への加盟国の債務アドバイス改善のための資金増額を計画している。また、オンラインおよびオフラインで情報にアクセスする方法に関する地域のアドバイスを提供するイニシアチブを支援する

  5. 国際協力

    現在、オンライン購入が国境を越えて行われており、国際協力が重要になっている。同委員会は2021年、オンライン販売製品の安全性向上を目指して中国と共同で行動計画を策定するとともに、アフリカを含むEUパートナー地域向けの規制と技術支援、および能力開発を行うことを予定している

新型コロナウイルス感染症についても、同アジェンダで言及された。オンライン詐欺や旅行手配のキャンセルなど、新型コロナウイルス感染症が消費者生活に大きな影響を及ぼしたことから、欧州委員会は同感染症が欧州の人の消費パターンに及ぼす長期的影響を分析する。同委員会は分析結果を将来の政策イニシアチブの基礎として位置付け、新型コロナウイルス感染症の蔓延中および収束後において消費者保護と回復力向上を目指す。消費者詐欺に取り組み、旅行がキャンセルされた場合の旅行者の欧州での権利を保護するべく、同委員会は消費者保護協力ネットワークと協力して、プラットフォームおよびすべての関係者と対話する。

今後、欧州委員会は同アジェンダで発表したイニシアチブを推進し、優先事項と行動、および今後数年間で消費者保護を促進するための方法について、すべての利害関係者と広く協議を進めていく意向だ。

欧州委員会の司法委員であるディディエ・レンデルス氏は、「欧州の消費者は世界的変化の中心を担い、彼らの行動は大きな違いを生む可能性があります。消費者は持続可能な選択を行う権限を与えられ、あらゆる状況で自分の権利が保護されることを確信しなくてはなりません。新アジェンダは、消費者行動が国境を越えていることを考慮に入れて、公正なグリーン社会とデジタル社会を促進する措置を導入しています」と述べている。

【プレスリリース】New Consumer Agenda: European Commission to empower consumers to become the driver of transition