経済産業省はこのほど、2021年11月に設置した有識者会議「これからのファッションを考える研究会~ファッション未来研究会~」のもと、ファッションロー(※)ワーキング・グループ(WG)を設置すると発表した。

ファッション産業の健全な発展を目指し、ファッションに関わる法的論点などの整理とファッション産業に携わる事業者などの行動指針となるガイドラインを策定するべく、ファッションローに関して幅広く検討していく意向だ。経済産業省は今回のWG設置発表にあたり、以下の見解を示した。

同WG設置に至った背景は、グローバル化の進展・サーキュラーエコノミーへの世界的進行・情報通信技術およびデジタル技術の急速な発展などをもとに、知的財産・契約交渉・人権問題などのファッション産業に関連する法領域の総称を示すファッションローに係る議論が活発化していることだ。

創作物は、思想や感情などを背景に多大な人的・金銭的コストを投じて生み出され、他者が断りなく模倣などによって利益を得ることは許されない。しかし、ファッションは既存のデザインなどから着想を得て、新たな価値や流行を生む側面もあり、模倣などに対する問題認識や対策は、他の産業に比べ十分に取り組まれていないとの指摘もある。

仮想空間上のファッションやNFT(非代替性トークン)の活用など、デジタル領域にも市場を広げるファッション産業の潮流や、近年の価値観の多様化に伴って、環境問題・人権問題・サステナビリティへの配慮が求められるなど、創作活動や契約交渉などの複雑化も指摘されている。

こうした法的問題に加え、明確な基準のない諸問題への対応の難しさが課題とされるなか、今後、国内のファッションブランドが創造力を最大限に発揮し、国内をはじめ、デジタル市場や海外市場などの新領域においても発展していくためには、世界的なファッション事業において求められる基準を的確に示していくことが必要である。

同WGは、2022年11月下旬から計3回程度開催し、年度内に報告書を取りまとめる予定だ。

日本のアパレル業界における課題は、環境負荷・世界的サプライチェーンにおけるトレーサビリティや人権に関する問題・ファストファッション台頭などによる製品価格の低下・国内生産比率の落ち込み(国内アパレル市場における輸入浸透率は97.7%)など、幅広い。同WG設置によって、知的財産・契約交渉・人権問題をはじめとする適切なガイドラインが策定され、日本のアパレル業界の発展に貢献していくことが期待される。

なお、経済産業省は2022年5月、「これからのファッションを考える研究会~ファッション未来研究会~」の議論の結果を「ファッションの未来に関する報告書」で発表している。

※ ファッションロー:ファッション業界で活動する人の権利保護を目的としてアメリカで生まれた学問で、日本では2015年に知的財産教育協会内の団体として「Fashion Law Institute Japan(FLIJ)」が発足している(アトニーズマガジンより)

【プレスリリース】「ファッション未来研究会~ファッションローWG~」を新たに設置します
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