富士通株式会社(以下、富士通)と帝人株式会社(以下、帝人)は2023年1月、ドイツに本拠を置く2社と共同で、自転車のフレームに使用されるリサイクル炭素繊維の「資源循環における環境価値化実証プロジェクト」を開始した。

2社は、炭素繊維強化プラスチックを使った自転車フレームの製造・販売のV Framesと自転車メーカーのE Bike Advanced Technologies。プロジェクトは、2023年3月まで実施される予定だ。

同プロジェクトでは、自転車フレームに使用される材料の資源や環境負荷に関する証跡データを収集・管理し、工程の実現性を評価して、可視化したデータの価値を検証する。プロジェクト実施にあたって、帝人と富士通が2022年7月より構築を進めている「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」を活用する。4社は、「資源のトレース可能なデジタルツインを実現し、トレースデータの開示やステークホルダーのカーボンマネジメントなどに活用することで、価値を創出すること」と「ESG投資の評価やクレジットとしての活用に展開すること」を目指す。

同プロジェクトにおける各社の役割は、以下のとおり。

  • 帝人:各工程における環境評価の支援とエコシステム構築に向けたステークホルダーとの連携
  • 富士通:ブロックチェーン利活用サービス「Fujitsu Track and Trust」によるプラットフォームの実装およびトレースデータの可視化ツールの開発
  • V FramesとE Bike Advanced Technologies:自社の各工程における環境負荷情報のプラットフォームへのアップロード、データの収集工程やプラットフォーム上で可視化されたデータの検証

4社が同プロジェクトを開始した背景は、世界的な環境規制の強化に伴い、企業に厳格なカーボンマネジメント対応が求められていることと、資源の循環利用に関する証明の活用を制度化する動向だ。これに対応するべく、帝人と富士通は上述の「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」構築に向けて共同で取り組みを進めている。

一方、欧州の自転車産業に携わる多くの企業は、アジアで製造されたフレームを使用し、使用済みフレームをアジアで埋め立て処分しており、資源の長距離輸送によるエネルギー消費や資源の循環利用問題が指摘されている。こうしたなか、V Framesは温室効果ガス(GHG)排出量削減を目指し、ドイツ国内での資源活用や製品寿命を迎えたV Frames製自転車フレームを再利用したフレームの製造に取り組んでいる。帝人と富士通は、V FramesのGHG排出量削減の成果を可視化することで、自転車市場をはじめ炭素繊維を扱う業界の意識向上に向けた試みとして、V FramesとE Bike Advanced Technologiesと共同で同プロジェクトを開始した。

帝人および富士通は同プロジェクトの実施後、「資源循環における環境価値化プラットフォーム」の実装・導入を進め、2023年度の事業化を目指す。今後も同取り組みに賛同した企業や団体との議論および実証などを進め、他産業でもリサイクル市場の発展に取り組み、素材産業起点でのサーキュラーエコノミー移行に貢献していきたい考えだ。

規制強化や経済安保、脱炭素などの理由から、今後廃棄物を地域で資源として循環させる取り組みが世界で加速していくと予測される。4社が取り組む同プロジェクトが、資源循環におけるトレーサビリティの実現やカーボンマネジメントの活用による価値創出に向けて実装化が進むか、注目される。

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*冒頭の画像の出典:帝人株式会社、富士通株式会社