資源循環戦略コンサルティングのレコテック株式会社と都市政策シンクタンクの公益財団法人福岡アジア都市研究所(以下、URC)、および「量子コンピュータ×AI」サービスの株式会社グルーヴノーツは11月17日、循環型経済の実現に向けて、廃プラスチックにおける流通プラットフォーム構築の実証事業を開始したことを発表した。同事業は、公益財団法人福岡県リサイクル総合研究事業化センターの「令和2年度IoT技術等を活用した資源循環システム実証試験」に採択された。

同実証事業における3社の役割、および取り組むテーマは以下である。

3社の役割

  • レコテック:レコテックが開発・提供する再生資源分析クラウドプラットフォーム「Material Pool System(以下、MPS)」と廃棄物見える化アプリ「GOMiCO」を用いて、これまで回収が困難だった商業施設の廃プラスチックの総排出量を可視化する
  • URC:市内の事業系ごみに関する知見を提供し、資源循環に取り組む事業者間ネットワークを構築して、参加団体と共同で品質評価やリサイクルコストなどを分析する
  • グルーヴノーツ:量子コンピューティング技術やAI技術などを活用して、廃プラスチックの分別・収集・リサイクル(リペレット)などにおける静脈産業の活性化と生産性向上に向けた仕組みについて検討と検証を行う

上記3社に加え、福岡市内商業施設と株式会社パイプドビッツ、新興産業株式会社と福岡大学、および双日株式会社も同実証事業に参加している。


廃プラスチックの流通プラットフォーム化に向けた取り組み(出典:グルーヴノーツ)

取り組むテーマ

  1. 廃プラスチックの排出から再利用までのビッグデータの収集・分析・可視化
  2. AI技術を活用した廃棄物の発生量予測、量子コンピュータ技術を活用した廃棄物収集・運搬業務の生産性向上、運搬効率化によるCO2排出の抑制
  3. 品質評価などによる、再生プラスチックなどの再生資源のプライシング適正化
  4. 福岡大学の最新リサイクル技術を適用した、高品質なリサイクルプラスチックの製造

このうち、テーマ1と2は次の方法で実施される。

テーマ1

プラスチックを排出する事業者が、スマホなどの入力端末からレコテックの「GOMiCO」にごみの種類や量を入力し、MPSでごみの種類・量・発生時間などをマッピングする。これらの情報や過去の排出量データをもとに資源の発生量を予測して、市内の資源賦存量などを検証し、実際にリサイクルされた再生プラスチックの品質試験を行う。

テーマ2

収集したデータや、グルーヴノーツのクラウドサービス「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」が提供する気温・湿度・降水量といった気象データなど、予測の要因となるデータを蓄積する。それらをもとに排出事業者と廃棄物の種類などによってMAGELLAN BLOCKSのAI技術でごみ発生量を予測する。この予測結果に基づいて、排出事業者の場所や収集車両の積載可能量、収集作業時間などの条件を考慮して、最小の車両台数かつ最短の移動距離で確実に廃棄物を回収するルートを、MAGELLAN BLOCKSの量子コンピューティング技術で高速計算する。


量子コンピュータ活用による効率化イメージ(出典:グルーヴノーツ)

同実証事業は2020年9月に開始され、大型商業施設などから排出された廃プラスチックのデータ収集が順調に進んでいる。10月中旬から福岡大学などで実際に回収した廃プラスチックをリペレット加工しており、11月以降はデータ分析や品質試験を実施していく。3社は同実証事業を通して、プラスチックをはじめとする、さまざまな資源の循環型経済への移行に不可欠な「静脈資源サプライチェーン」に必要な条件を明確化できると期待している。今後は、収集したデータと天候などのデータをもとにグルーヴノーツのAI技術で廃プラスチックの発生量を予測することで、排出から再利用までの資源循環の需要と供給の見える化を進めていく意向だ。

【プレスリリース】サーキュラー・エコノミーの実現に欠かせない「廃プラスチックの流通プラットフォーム構築」実証事業を開始