アラブ首長国連邦(UAE)と国連75周年記念イニシアチブが今夏に発表したレポートによれば、6つの変革トレンドが、2025年までに世界経済に最大30兆ドルをもたらす。

この「未来の可能性レポート2020」は、UAE政府と「UN75:2020 and Beyond」イニシアチブが共催する「私たちが望む未来の機会」と呼ばれる世界的な対話の場でローンチされた。

同レポートは、新しいビジネスモデルや技術、行動の変化が6つの変革をもたらし、今後5~10年の間に各産業に影響を与えると解説している。高齢化や、都市生活の再設計、国際間移動(グローバルモビリティ)、若い世代の影響力、世界貿易の変化、多様化する投資、新興国の中間層、経済成長以外の繁栄指標の発達が、新しい変革トレンドを生む基盤になっている。

6つの新しい変革トレンドは、以下のとおり。

1. エクサバイト・エコノミー(ビッグデータ)

コンピュータの処理能力の向上とストレージの低価格化や効率化により、5Gテクノロジーが普及展開され、AI技術の改善が促される。2025年までに経済価値は8兆ドルに達する。

2. サーキュラーエコノミー

環境負荷を減らす必要性の認知が高まり、資源利用の最適化と廃棄物削減が進むため、バリューチェーン全体に新しい可能性が開かれる。これまで以上にリサイクルやアップサイクルがメインストリーム化するという。また、現在5,220億米ドルの市場規模があるプラスチックの持続可能な代替プラスチックへの切り替えが加速。さらに、空気からの水生成や脱塩などの技術革新が進む。これらにより、サーキュラーエコノミーには最大4.5兆米ドルの潜在価値があると言及している。

3. 幸福経済

個人や組織、コミュニティレベルで身体的および精神的幸福への関心が高まり、経済価値は数年以内に7兆米ドルに達する可能性がある。

4. 経験経済

顧客のニーズはモノの消費ではなく経験を好むトレンドが高まっている。2025年までに最大6.5兆米ドル相当の経験経済を形成する可能性がある。

5. ネットゼロ経済

炭素排出量を削減するため、世界的に技術革新が進み、新しい投資モデルと市場が創出される。また、再生可能エネルギーの需要増大により、2025年までに2.3兆米ドル以上の市場価値をもたらす可能性がある。

6. バイオエコノミー

農業および新しいバイオマテリアルの開発により、2025年までに1兆米ドルを超える経済価値がもたらされる。

各国はこれらの可能性を実現するため、コア・キャパシティを高めることが求められる。コア・キャパシティとは、長期的な戦略を策定・遂行する政府の強いビジョン、アイデアを実現する高度なICT基盤とデジタル技術、研究開発、労働流動性を高めることを可能にするスキル育成、法の支配・腐敗の欠如、最低限の官僚主義など事業活動に優しい仕組み、投資を促進する市場力学などを指す。

【参照レポート】FUTURE POSSIBILITIES REPORT 2020