産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会電気・電子機器リサイクルワーキンググループと中央環境審議会循環型社会部会家電リサイクル制度評価検討小委員会の合同会合はこのほど、「家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書」を刊行した。

2001年に本格的に施行された「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」は、回収後の家電の多くが埋め立て・廃棄されている状況の改善と、資源の有効活用促進を目指して策定された。2021年4月、合同会合は同法施行以来3度目の見直し検討を開始した。合同会合は「家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)」を取りまとめ、経済産業省と環境省は同案について2022年3月10日から約1カ月間、意見を募集した。寄せられた意見をもとに、合同会合は同報告書を作成した。

同報告書は、第1章「家電リサイクル制度の現状」、第2章「家電リサイクル制度における課題・論点」、第3章「課題解決に向けた具体的な施策」の3章で構成される。第3章で提示された7つの施策は以下のとおり。

  1. 対象品目:有機ELテレビの対象品目への追加など
  2. 家電リサイクル券の利便性向上:記載事項の簡略化や小売業者による保管の電子化など必要な合理化を検討する
  3. 多様な販売形態をとる小売業者への対応:立入検査の重点化・合理化などや、モールサイト運営事業者との連携により、EC事業者に対する計画的な確認と指導を検討する
  4. 社会状況に合わせた回収体制の確保・不法投棄対策:指定引取場所のあり方について製造業者などと連携し検討する。社会状況の変化などに応じ消費者が適正排出しやすい方法とともに、消費者にわかりやすく伝える方法を検討する。義務外品の回収体制構築や不法投棄の取り組みへの支援を継続し充実させる
  5. 回収率の向上:エアコンの回収率(令和元年度の回収率は37.6%)向上のための施策を検討し、新たな回収率目標を設定する(2030年に70.9%)
  6. 再商品化など費用の回収方式:現行制度と制度を変更した場合の課題などに関して、技術的・実務的に検討を続ける
  7. サーキュラーエコノミーと再商品化率・カーボンニュートラル:環境配慮設計など、リサイクルの質の持続的向上に基づきサーキュラーエコノミー移行に貢献する。フロンを使用するエアコンの回収率向上により、温室効果ガス排出を削減する

なお、第1章「家電リサイクル制度の現状」では、下記が報告された。

  • 令和元年度の家庭・事業所からの使用済み特定家庭用機器(エアコン、ブラウン管式テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機の家電4品目)の総排出台数は、推定約2078万台
  • 総排出台数の約71%に当たる約1477万台が製造業者などによってリサイクルされている。そのほか、廃棄物処分許可業者などによるリサイクルが約7.5万台、市町村による一般廃棄物としての処理が約4.5万台、国内リユースが約271万台、海外リユース向け販売が約75万台と推計される
  • 令和元年度の回収率は64.1%で、平成28年度の50.7%、平成30年度の59.7%から上昇している。品目ごとでは、エアコン37.6%、テレビ73%、冷蔵庫・冷凍庫86.7%、洗濯機・衣類乾燥機89.3%

日本は「第四次循環型社会形成推進基本計画」に基づき、循環型社会の実現を目指して取り組みを進めている。サーキュラーエコノミーは資源・エネルギー・食糧需要の増大や廃棄物量の増加、および気候変動などの問題解決に貢献するとともに、事業活動の持続可能性を高め中長期的な競争力の源泉となりうるとの考えを同報告書は示した。サーキュラーエコノミー移行やカーボンニュートラル実現に向けて、国・地方公共団体・企業・消費者などが同報告書をもとに共同で施策の具体化に取り組み、家電リサイクル制度の改善を通じて貢献していくよう期待するとしている。

今後、合同会合は家電リサイクル制度の施行状況や施策の実施状況などを毎年1回以上検証していく意向だ。

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