ファッションのデジタル化と循環型経済への移行を目指すソーシャルプラットフォーム伊lablacoはこのほど、新レポート「YEAR ZERO サーキュラーファッションレポート2020」を発表した。

同レポートは、lablacoと以下の7組織が共同開催したサーキュラーファッションサミット(CFS)によって作成された。7組織は、ファッション出版の英Vogue Business・サービス業の英PwC・コンサルタント業の英Anthesis・法律事務所の英Rödl&Partner・デンマークに本拠を置くスタートアップアクセラレータのネットワークStartupbootcamp・国際的高等教育機関ESSEC Business Schoolおよび蘭ワーヘニンゲン大学研究センターである。CFSはSDGsを支援する世界的サミットで、2019年9月に催されたパリ・ファッションウィーク中に開始され、2020年10月に第2回目が開催された。

現在、世界的なファッション・アパレル業界の価値は3兆ドル(約309兆円)で、バリューチェーン全体での雇用者数は3億人であると同レポートは報告している。しかしながら、サーキュラーファッションはまだ新しい概念であり、明確に定義されていないため、CFSはサーキュラーファッション市場規模を予測するとともに、サーキュラーファッションへの移行に向けた課題などを提示した。

CFSは、2020年におけるバリューチェーン全体のサーキュラーファッション市場は、5.3兆ドル(約546兆円)の価値があると予測した(上記の3兆ドルを含む)。現在のファッション・アパレル業界の価値3兆ドルに加算される2.3兆ドルの内訳は、以下のとおりだ。リサイクル材料による機会3,500億ドル(約36兆円、西半球のみ)、エコファイバー市場400億ドル(約4兆円)、アパレル製造5,540億ドル(約57兆円)、高級容器包装210億ドル(約2兆円)、サステナビリティによる市場価値の上昇180億ドル(約2兆円)、3Dプリンター市場160億ドル(約2兆円)、バーチャル試着室市場66億ドル(約7,000億円)、VR・AR市場180億ドル(約2兆円)、ファッション偽造市場4,500億ドル(約46兆円)、衣料廃棄やリサイクルの欠如によって毎年生じている価値損失5,000億ドル(約51兆円)、洗濯サービス1,800億ドル(約20兆円)、衣服修理サービス20億ドル(約2,000億円)、ファブリックケア市場1,010億ドル(約10兆円)、再販640億ドル(約6兆円)である。

消費者について同レポートは、「消費者は、買い物するときにアパレル企業のサステナビリティへの努力に着目している。ごみやエネルギー消費削減の必要性についての意識もとても大きく、政府や企業による行動を期待している。取り組みの実施方法とイニシアチブを企業が透明性を持って提示することが、顧客の信用を得るための重要な手段だ」と考察している。

同レポートは、原材料と設計、および利用・再利用の枠組みごとにデジタル化の重要性についても言及している。材料および製品設計においては、トレーサビリティやブロックチェーン、3Dプリントやデジタルモデリング、およびVR・ARなど。利用・再利用においては、オンデマンド販売やカスタマイズ化、在庫の最適化やシェアリングなどである。lablacoおよびCFSは、「デジタル化は、ファッションを循環させ、トレーサビリティを実現するための鍵である。私たちはいま、より持続可能に大規模にファッションを収益化することで、消費モデル(顧客が製品を消費)から所有モデル(顧客が製品にアクセス)への移行に向けて取り組んでいる」と記している。

Vogue Businessは、「サーキュラーファッションは、ファッション業界においてはまだ初期のビジネスモデルだが、企業が炭素排出量の大幅削減と、新しい原料の使用を目指しているため、優先度が高まってきた。リニア型モデルからサーキュラー型モデルへの移行には、製品設計とインフラを含む、業界全体の戦略的な変革が必要である。それには、新しいパートナーシップとサプライチェーンにおける緊密な関係構築および新しいツール、そして多くの場合において、新しいテクノロジーとイノベーションが必要だ」と提案している。

【参照サイト】Circular Fashion Report 2020 — Year Zero.