三菱ケミカルグループ株式会社はこのほど、ポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂)ケミカルリサイクルの世界初※の事業化に向け、2030年に年間1万トン規模の処理能力の実現を目指す検討を開始した。

現在、福岡事業所に実証設備を建設中で、2023年8月の完工後、同年度中に実証実験を完了し具体的な事業化検討を進める予定だ。同実証事業は、環境省の「令和4年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」の補助事業として採択されている。三菱ケミカルグループ株式会社が発表した内容は、以下のとおり。

PC樹脂は透明性・耐衝撃性・耐熱性・寸法安定性に優れたエンジニアリングプラスチックで、自動車の内装部品やヘッドランプ、建設資材などに使用されている。使用済みPC樹脂はマテリアルリサイクルによる再資源化が一般的だが、劣化したものや異なる樹脂が混入していると、十分な品質のリサイクル樹脂を得られないという課題がある。これに対して、使用済みPC樹脂を解重合して原料モノマーに戻し、再重合するケミカルリサイクルを実施することで、より広範囲の使用済みPC樹脂を高品質なリサイクルPC樹脂に再生できる。

三菱ケミカルグループ株式会社は、ケミカルリサイクル技術の確立とともに、使用済みPC樹脂のリサイクルシステム構築も目指しており、PC樹脂を製品に使用する企業などとの連携も進めていく。2023年4月には、エンジニアリングプラスチック事業強化に向けて、高付加価値PC樹脂「XANTAR™(ザンター™)」などの展開も開始する。

ケミカルリサイクルについて、同社はすでに他組織と協働して「ペットボトルの再資源化」「廃プラスチックの油化」「使用済み自動車から回収したアクリル樹脂のケミカルリサイクル事業化」など、さまざまな取り組みを進めている。今回同社が発表したPC樹脂ケミカルリサイクル事業化に向けた取り組みが、プラスチックの再資源化拡大に貢献していくことが期待される。

※ 三菱ケミカルグループ株式会社調べ

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*冒頭の画像は、PC樹脂のケミカルリサイクル品(出典:三菱ケミカルグループ株式会社)