三菱ケミカル株式会社(本社:東京都千代田区)と日本製紙株式会社(本社:東京都千代田区)は9日、両社の再生可能な原料から製造される生分解素材を用いた循環型包装材を共同開発したと発表した。三菱ケミカルの生分解性樹脂「BioPBSTM」と日本製紙の紙製バリア素材「シールドプラス®」から構成され、循環性と機能性を兼ね備えているという。

BioPBSTM は、三菱ケミカルが開発し、基本特許を保有する。三菱ケミカルとタイ PTT Global Chemical 社が折半出資する PTT MCC Biochem Company Limited が製造する植物由来の生分解性樹脂で、自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解される。また、他の生分解性樹脂に比べて、低温ヒートシール性・耐熱性・柔軟性などで優れた性能があるという。

シールドプラス®は、日本製紙がこれまで培ってきた紙の製造技術と塗工技術を応用し、再生可能な循環型素材で、生分解性も有する「紙」に酸素・香りのバリア性を付与した、環境配慮型素材だ。バリア機能により、主に食品などの内容物の品質を維持し、外からのにおいの移りを抑えることが可能だという。さらに、「紙製」なので、フィルムとは異なる紙独特の風合いがあるのも特徴。

今回発表された包装材は、再生可能な原料を用いて、循環性を高めた製品でありながらも、BioPBS™のヒートシール性とシールドプラス®のバリア性により内容物の品質劣化を防止する高い機能性を有するとしている。菓子やコーヒー豆等の食品をはじめとしたパッケージ用途として国内外に展開する予定だ。

三菱ケミカルホールディングスは、同社グループが掲げるKAITEKIビジョンの実現に向け、製造プロセスから製品使用後までの製品ライフサイクル全体を循環化させるための施策を遂行し、サーキュラーエコノミーの推進を加速させている。その横断的司令塔としての「サーキュラーエコノミー推進部」の新設エンジニアリングプラスチックのリサイクル会社買収、ガゼインを原料としたポリマーを製造する企業への出資などを例としてさまざまな取り組みが行われている。

日本製紙もその事業特性からグループとしてサーキュラーエコノミーの重要性を認識し、木質資源の有効活用(木のカスケード利用)や木材からなる高性能プラスチックの研究開発、繰り返し使えるペーパータオルの販売、外食チェーン ゼットンと共同でオフィス古紙から「パルプモールドコースター」を開発するなど、「紙でできることは紙で。」を合言葉に、「紙化ソリューション」を展開している。

循環型素材の設計・生産の際には、「循環性」とともに「質」や「機能性」が大きなポイントとなる。今回の両社の強みを掛け合わせた循環型素材が国内外にどのように展開されていくか、その行方が注目される。

【参照記事】生分解性樹脂と紙製バリア素材による循環型包装材を開発
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