マイクロ波化学株式会社はこのほど、マイクロ波(※)を用いたケミカルリサイクル技術の大型汎用実証設備を完成させ、実証試験を開始したと発表した。処理能力は、1日あたり1トン。

同実証の目標は、廃棄プラスチックを原料(モノマー)として回収することだ。ポリスチレンの分解ではスチレンモノマーを主成分として回収・精製・再重合することで、プラスチックに再生できることを確認したとしている。

同社は、2020年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発フェーズ」において、「マイクロ波プロセスを応用したプラスチックの新規ケミカルリサイクル法の開発」に取り組んでいる。プラスチックにエネルギーを直接伝達できるマイクロ波技術によって、従来の熱分解プロセスと比較して約50%の省エネ効果を実現することを目標に技術開発を進めている。

2021年、同社は1時間あたり約5kgの処理能力を持つ小型実証設備を完成させ、その後「高温複素誘電率測定装置」などを開発し、今回の実証設備を完成させた。

2022年度内に同実証設備を本格稼働させ、汎用樹脂を中心に実証試験を実施する予定だ。今後は処理能力を年間1万トンに高め、2025年までに化学メーカーなどと共同で社会実装していく考えだ。マイクロ波化学株式会社は、同事業を通じてマイクロ波プラスチック分解技術「PlaWave®」の確立と、2030年の国内の省エネ効果量3.9万kl(原油換算)を目指す。

同社は、ケミカルリサイクルについての見解および取り組みを以下のように示している。ケミカルリサイクルはプラスチックのサーキュラーエコノミー移行において有力な手段の一つと考えられているが、既存技術では化石燃料などを用いた外部加熱のプロセスを用いるため、エネルギー消費・CO2排出・コスト・安全性に課題があるとされてきた。そこで同社は、エネルギー効率が高いとされるマイクロ波を用いたプロセスを開発している。再生可能エネルギー由来の電気でマイクロ波を発生させ、廃棄プラスチックを分解することで、CO2を排出せずに再資源化できることから、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー実現に同時に貢献できるとしている。

世界的な消費財業界ネットワークのザ・コンシューマー・グッズ・フォーラムのプラスチック廃棄物行動連合は、ケミカルリサイクルはプラスチック廃棄物の課題に対する最良の解決策ではないとしながらも、サーマルリサイクルの割合が上昇している国(EU全体の2030年までの政策の方向性)では、リサイクル困難なプラスチック廃棄物の解決策として、ケミカルリサイクルの規模拡大により温室効果ガス排出量が削減される可能性が高いとの声明を発表している。マイクロ波化学株式会社が開発した同設備などのソリューションにより、プラスチックのサーキュラーエコノミー移行が加速していくことが期待される。

※ マイクロ波:電場と磁場の変化を伝搬する波である電磁波の一種で、周波数300MHzから300GHzの電磁波がマイクロ波と呼ばれている

【プレスリリース】国内初、マイクロ波を用いたケミカルリサイクル技術の大型汎用実証設備が完成 ―廃プラスチックの再資源化で、サーキュラーエコノミーの実現に貢献―
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*冒頭の画像は、今回完成した実証設備(出典:マイクロ波化学株式会社)