資源循環戦略コンサルティングのレコテック株式会社(以下、レコテック)は1月25日、総合商社の双日株式会社(以下、双日)を引受先として第三者割当増資を実施し、再生資源調達プラットフォーム「Material Pool System(以下、MPS)」の社会実装を目指すことを発表した。

急増する世界人口や過剰消費により、気候変動への影響や資源枯渇が懸念され、欧米を中心に循環型経済への移行が緊急の社会課題となっているとレコテックはみている。特にプラスチックにおいては、深刻化する海洋プラスチック問題などに対して、欧米で具体的な法整備が進められている。日本ではプラスチック資源循環戦略において、2030年までに60%のプラスチック容器包装をリユースまたはリサイクルすることが掲げられている。また、プラスチックに限らずサプライチェーン全体で再生しやすい素材の開発や製品設計、マテリアルリサイクルの拡大とそれを支える回収システムの確立が求められている。こうしたことを受け、世界的に事業展開する大手企業は特に、リサイクルしやすい材料や代替素材への切り替えと、PCR材(※)の使用比率向上に向けて取り組む必要があると同社は考える。

しかし、現在PCR材の需要が増加する一方で材料調達には課題が多く、今後必要な供給量を確保できていない。エレン・マッカーサー財団が主導する「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」の参加企業を含む多くの企業がPCR材の利用率向上を目標に掲げているが、2019年時点での達成状況との差は大きく、今後ますますPCR材の確保が競争を左右するとレコテックは予想している。同コミットメント参加企業のうち、年間プラスチック消費量上位10社だけ見ても、2025年の目標に対して全体で約8割不足しており、達成には207万トンものPCR材をさらに調達する試算となる。

PCR材を自社の原材料調達のポートフォリオに組み込むためには、静脈資源に関する以下の要件が重要だとレコテックは考える。

  1. 発生量(調達量)の把握
  2. 品質の確保
  3. トレーサビリティ
  4. 効率的な回収

さらに、法令を遵守して安全性を確保した静脈資源の効率的な回収には、発生量などを地域単位で可視化し、PCR材のサプライチェーンを滑らかにつなげていく必要があるとしている。

レコテックが展開するMPSは、排出元入力アプリ「GOMiCO」やそのほかのデータにより、ごみの種類・発生場所・量を種類と地域ごとに可視化する。蓄積される廃棄物のデータとAI技術を活用することで、収集運搬と再資源化の効率を向上できる。これにより、コストを削減しながら、安定調達(発生量)・品質管理・トレーサビリティを担保するPCR材を製造業者へ供給することを目指す。現在、川崎市と福岡市にて、MPSを活用したプラスチックの静脈サプライチェーン構築に向けた実証事業を進めている。これらの実証事業で回収されたPCR材の品質評価や経済合理性の検証を通して、製品への持続的な活用手法を構築中だ。

レコテックは今後、上記の実証事業の検証結果に基づき、AIによる発生予測やブロックチェーンの活用によるインセンティブ設計などを視野に入れて、開発を加速していく。双日と協業して関連資産を活用することで、MPSの社会実装をより一層推進する構えだ。

※:ポストコンシューマーリサイクル材の略で、使用済み製品からリサイクルされた材料のこと(一般社団法人サステナブル経営推進機構 製品カテゴリールールより)
【プレスリリース】再生資源調達プラットフォームの社会実装に向けた第三者割当増資を実施
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