石油化学企業のShell(以下、シェル)と、工業メーカーであるRolls-Royce(以下、ロールス・ロイス)がこのほど、航空業界の脱炭素化とネット・ゼロ・エミッション(以下、ネット・ゼロ)への移行を支援する覚書(基本合意書)を締結した。

シェルはオランダに本拠を置き、石油の採掘、生産、輸送、販売を行うグローバル企業で、ロールス・ロイスは大型民間航空機やビジネスジェット向けエンジンの製造を行う英の大手企業だ。締結の具体的な内容は、主に持続可能な航空燃料であるSustainable Aviation Fuel (以下、SAF)の航空機エンジンでの使用を推進することに関連している。シェルは、自社が開発するSAFの供給を通じてロールス・ロイスの炭素排出量削減を支援し、ロールス・ロイスは、技術的専門知識を提供してシェルの新燃料開発に助言し、新型航空機や電力システムのための革新的な低炭素エネルギーの代替品を提供するとしている。

今回の締結は、両社の長きにわたる協力関係に基づいており、両社の2050年までの目標であるネット・ゼロ、脱炭素化の達成にも貢献するものだ。一方で、両社は今後協力して航空業界団体やフォーラムに積極的に働きかけ、戦略的な政策課題を進展させる予定だ。また、航空業界全体のステークホルダーとも密接に協力し、ネット・ゼロに向けた広い範囲での進展を支援することも視野に入れている。

航空業界のネットゼロ、カギを握るSAFとは?

SAFは、航空業界が今後脱炭素化、ネット・ゼロを実現するにあたり最も重要な役割を果たすとされている。これまでの航空燃料は原油を主な原料としていたのに対し、SAFは植物や海藻、使用済み食用オイル、固形廃棄物などを原料とする燃料だ。シェルによると、SAFは既存の燃料と比べてライフサイクル全体でCO2の排出を80%削減できるとしており、これまで使用していた輸送やエンジンの仕組みを変えずに使用できる。SAFは、現在は既存の燃料と混ぜ合わせて使用されているが、今後は100%SAFを使用することが理想とされており、両社はその認証取得にも尽力するとしている。

シェルのジェット燃料子会社であるシェル・アビエーションの社長、アンナ・マスコロ氏は今回の締結に関して「ロールス・ロイスとシェルは、航空分野のバリューチェーンの異なる部分に位置しているため、相互に補完的な専門知識、経験、アイデアなどを持ち寄ることができます。今回の協力関係は、航空業界と我々の顧客がネット・ゼロへの道を歩むのに役立つ新しいソリューションの推進に大きく貢献します」と述べている。

航空業界の脱炭素化のためには、バリューチェーン全体の協力が必須である。今回の締結に後押しされるであろう、航空業界の脱炭素化、ネット・ゼロへの移行の推進に期待したい。

【参照記事】Shell and Rolls-Royce sign agreement to accelerate progress towards net zero(プレスリリース)
【参照サイト】Rolls-Royce
【参照サイト】Shell