株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(以下、ソニー CSL)はこのほど、エネルギーと電力分野のオープンソース技術イノベーションを推進・維持する非営利コンソーシアムである米Linux Foundationの非営利団体LF Energyと提携したことを発表した。両組織は共同で、再生可能エネルギーのP2P(ピアツーピア)配電を自動化するためのマイクログリッド イニシアチブ「Hyphae」を発足させた。

気候変動や自然災害による影響への対応において、エネルギー資源やインフラは多くの課題を抱えていると両組織はみている。Hyphaeは、マイクログリッド(※)を使用してグリッドの復元力と柔軟性の向上を目指し、地域で発電された再生可能エネルギーを自動的かつ効率的に直流グリッドで配電するソニー CSLの既存ソフトウェア Autonomous Power Interchange System(自立型電力融通制御ソフトウェア、APIS) を交流グリッドに対応させる。この体系においては、レジリエントでPP2P(Physical Peer to Peer)電力融通技術を介することで、遠隔地でも大規模な発電所や送配電網に接続することなく、エネルギーを自動的に貯蔵・配電できる。オープンソースの自動化されたマイクログリッドコントローラーとHyphaeのような取引プラットフォームにより、利用者のコストを削減しつつ、より迅速なイノベーションが可能になるとしている。

Hyphaeの特徴は、以下のとおりだ。

  • 柔軟なグリッド拡張:自動的に電力融通されるため、システムを再設計することなく、マイクログリッドを柔軟に拡張できる
  • 再生可能エネルギーの有効利用:PP2P電力融通技術は、分散発電源と分散蓄電装置間の電力を融通できるため、発電量の変動にかかわらず再生可能エネルギーを効果的に使用できる
  • レジリエンス:これらの特性により、高いレジリエンスを備えた電力システムを構築できる

LF Energyの常任理事であるShuli Goodman氏は、「ソニー CSLはHyphaeを立ち上げることで、世界で最も複雑な問題の一つである脱炭素化を共同で解決する意向を表明しています。ソニー CSLと協力することで、先進国のエネルギー変革を促進し、エネルギーが不足している世界の地域に電力をもたらすでしょう」と述べている。

ソニー CSLの代表取締役社長である北野宏明氏は、「LF Energyと協力することで、世界のネットワーキング エネルギーとの関係を革命的に変化させる、相互運用可能なクラウドネイティブで設定可能なマイクログリッドへの道筋が見えてきました。私たちは気候問題に取り組む緊急性を共有しています。そのため約10年にわたる研究の一部をオープンソース化し、LF Energyと協力することを決意しました。同時にこれは、家庭・産業向けエネルギーシステムや電力システム、および輸送のよりグリーンなエネルギー供給を含む、世界的なエネルギー状況に変革を起こすために、世界の大企業に行動を呼びかけるものです」と語っている。

今後、両組織は発電者と協力してHyphaeを拡張し、マイクログリッドへの柔軟なアプローチを可能にする機能を追加していく意向だ。特に、Hyphae Technical Steering Committee(Hyphae技術運営委員会)は、完全に相互運用可能なシステムを確保するためのハードウェアパートナーとの協働を歓迎するとしている。

※:太陽光発電などの再生可能エネルギーをはじめとする分散電源を活用して、温室効果ガス排出量を抑制するとともに、一定地域で使用する電力を地域内で発電・蓄電・配電することで、送配電距離を最小化し、分散自律型であることにより自然災害などの影響を最小化するレジリエンスの高い電力システムのこと(OESのOpen Source化 Autonomous Power Interchange System(APIS)より)

【プレスリリース】LF EnergyがソニーCSLと提携し オープンソース マイクログリッド プロジェクトを発足
【プレスリリース】LF Energy、ソニーコンピュータサイエンス研究所と提携しオープンソース マイクログリッド プロジェクトを発足
【参照サイト】OESのOpen Source化 Autonomous Power Interchange System(APIS)
【参照サイト】マイクログリッドシステムの中核モジュール(電力融通制御ソフトウェア)無償提供を開始