東芝エネルギーシステムズ株式会社・東洋エンジニアリング株式会社・株式会社東芝・出光興産株式会社・日本CCS調査株式会社・全日本空輸株式会社はこのほど、環境省地球環境局が公募した「令和3年度二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業」において、6社が提案した「人工光合成技術を用いた電解による地域のCO2資源化検討事業」が委託事業として採択されたと発表した。

これまで6社は株式会社東芝研究開発センターが開発した二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)に転換するCO2電解技術を用い、COと水素から液体燃料を合成するFT(※1)合成技術と組み合わせて、持続可能な航空燃料(SAF)を製造するP2C(※2)による炭素循環ビジネスモデルを共同で検討してきた。

同取り組みが環境省の委託事業に採択されたことを受け、6社は9月から共同で実証事業を実施する予定だ。地域のインフラや特徴を活かしてカーボンリサイクルを地域内で実現させ、脱炭素化促進と地域振興の両立を検討するとしている。

実証事業の概要は、以下である。

  1. 東芝エネルギーシステムズ株式会社が実用規模のCO2電解装置のプロトタイプを製作し、同社工場で運転実証を実施する
  2. 1をもとに、各社はCO2の分離回収からSAF製造・消費までの全工程の実証を想定した基本計画を作成する
  3. 得られたデータ・知見を地域における炭素循環社会モデルに反映させ、事業成立性を評価する

実証事業の期間および各社の役割

期間

2021年9月~2025年3月末(予定)

各社の主な役割
  • 東芝エネルギーシステムズ株式会社:炭素循環社会モデルおよび事業モデル検討、実用規模のCO2電解装置プロトタイプの製作と実証、P2Cプラント検討、総括
  • 東洋エンジニアリング株式会社:FT合成プラントの基本計画、P2Cプラント計画の取りまとめ
  • 株式会社東芝:CO2電解技術の実証
  • 出光興産株式会社:SAFの認証制度・規格調査、SAF混合設備および品質管理の基本計画
  • 日本CCS調査株式会社:P2C実証プラントサイトの検討、地域連携計画検討
  • 全日本空輸株式会社:SAF市場の調査、空港内燃料供給の検討

地域での炭素循環社会モデル(イメージ)(出典:東芝エネルギーシステムズ株式会社、東洋エンジニアリング株式会社、株式会社東芝、出光興産株式会社、日本CCS調査株式会社、全日本空輸株式会社)

2020年10月に日本政府は「2050年温室効果ガス実質排出ゼロ達成」を宣言し、カーボンリサイクルなどの革新的イノベーションが達成への重要な要素であることを示した。これを受け、経団連は2020年11月に新たな成長戦略である「。新成長戦略」を発表し、CCUS(二酸化炭素の回収・有効利用・貯留)などのイノベーションを国家プロジェクトとして官民連携で強力に推進することを表明している。

航空業界ではICAO(国際民間航空機関)がCORSIA(国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム)においてCO2排出削減目標を定め、効果的な削減手法の一つであるSAFを使用する運航に向けた安定的製造・供給が求められている。

P2Cは、新たな化石資源を採掘せずに再エネ電力や再エネ由来の水素を有効利用するため、CO2排出量を大幅に削減できカーボンニュートラルに大きく寄与すると期待されていると6社は認識している。6社は同実証事業を通じて、炭素循環に基づくSAFサプライチェーンの商業化や地域活性化の促進に貢献していく意向だ。

※1 FT(フィッシャー・トロプシュ)法:COと水素から触媒反応を用いて液状炭化水素を合成する技術
※2 P2C(Power to Chemicals):再エネや再エネ水素などを用いてCO2を環境価値の高い有価物に再利用する技術で、CCU/カーボンリサイクル技術の一つ

【プレスリリース】環境省「令和3年度二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業」に採択
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