英国のグラント・シャップス運輸大臣は9日、サイクリングとウォーキングを推進することを盛り込んだ環境配慮型交通政策に20億ポンド(約2650億円)を投じることを明らかにした。新型コロナウイルス感染症の影響でかつてないほど自転車や徒歩へのニーズが高まる中、旅行や健康的な習慣のために公共交通機関に代わる選択肢を提供しつつ、将来の公共交通網の需要の増大に備えるものだ。

自転車修理バウチャーや電動スクーター貸し出しも

同プランには、サイクリング専用レーンの増設や歩道の拡張、安全な横断歩道、バスやバイクの専用道路の整備などが盛り込まれている。今後数週間以内に、2億5000万ポンド(約330億円)の緊急旅行ファンドの一環として、さらにサイクリングやバス交通の推進に向けて2月に発表された総額50億ポンド(約6600億円)の新たな予算の第一弾として執行される。

また、使っていなかった自転車を修理して再び乗ってもらえるよう自転車修理バウチャーを発行し、自転車修理市場の活性化を目指す。通勤に自転車を利用する人への自転車購入割引制度も導入される。

シャップス運輸大臣は会見で、「交通が完全復旧したとしても、2メートルの社会的距離政策を適用するならば、輸送力はこれまでの10分の1となる」と言及。これまで以上に賢い交通手段の選択が求められることを強調した。

さらに、将来の交通システムを実証している英国内4つの地域(ゾーン)で、電動スクーターの貸し出しを早ければ6月から試験的に開始。電動スクーターの公道における影響を含め、貸し出しによる効果を測定するとしている。

加えて、新型コロナウイルスの影響が緩和された後に電気自動車の導入を促進するため、住宅地に充電設備を設置する費用として、現状の予算の2倍に当たる1000万ポンド(約13億2000万円)を追加で投入する計画もある。

その他にも、デジタル技術が最適な公共交通の選択をどのように提案できるかについて模索をするため、GoogleやZipabout、Trainline各社との会合を実施したと発表。公共交通の混雑度合いを警告するアプリなどが解決策として考えられるという。

シャップス運輸大臣は「これからも多くの人々にとって車が最も主要な交通手段であり続けるはずだが、将来を見据えた時、われわれはより環境に配慮した旅行の習慣やきれいな空気、健康的なコミュニティによって国を良くしていかなければならない」と述べた。

英政府は2025年までにサイクリングとウォーキングを倍増させる計画で、今夏にもサイクリングとウォーキングの投資戦略の最新版が首相から発表される見通しだ。

【参考記事】£2 billion package to create new era for cycling and walking