2020年12月、ちょっと気になる海外ニュースを目にしました。

「5G導入で気候変動に悪影響の可能性?」

21世紀のデジタル社会のありようを大きく変えると言われる第5世代移動通信システム(5G)をめぐって、フランス政府の独立諮問機関である気候高等評議会(HCC)は、5Gが広く普及されれば温室効果ガスの排出量が今後10年間で増える可能性が高いとする報告書を発表したのです。5Gについては、電波塔の設置に伴う電磁波による健康面への悪影響を指摘する向きがすでにありますが、環境面でも悪影響を及ぼす可能性が示された形です。

報告書によると、フランスで5Gが導入されると2030年の排出量はCO2換算で270万~670万トンになる可能性があると示されました。デジタルテクノロジー分野全体の現時点での排出量(CO2換算で約1500万トン)と比べると、相当な量であることが分かります。排出量の大部分は、5Gインフラの部品や5Gを使用するための新たな機器の製造によるものだとしています。

これに対して、5Gを世界規模で早期に展開することによって、2030年までの排出量を累積で5億トン削減できるとする調査レポートも出されています。5Gを世界で強力に推進するファーウェイとコンサルティング会社によるレポートなので、内容については割り引いて考える必要性があるものの、ライフサイクルで見た場合に5Gの普及は脱炭素を目指している世界全体にとって果たして有益なのか考えざるを得ません。と同時に、ある問いが頭をよぎったのでした。

ならば、サーキュラーエコノミー(CE)も本当に地球環境のためになるのか――。

5Gは、CE実現のカギを握るDX(デジタル・トランフォーメーション)を根本から支えることになるであろう通信技術です。それが健康面だけでなく環境面でも議論の分かれる技術であることが分かったことで、私はCEの未来像にモヤモヤと霧が立ち込めるような感覚に陥っているのです。

リサイクル素材だとしても…

このモヤモヤ感、最近一般ニュースでも見聞きすることが多くなったサーキュラーエコノミーを意識した日本企業の実際の製品やサービスからもますます募ります。

「タイの工場で、ペットボトルからカーペットをつくっています」

CMから聞こえてくる言葉に思わずテレビ画面のほうを向くと、ニトリが販売するペットボトルをリサイクルした再生ポリエステルを使用したカーペット「Neco(エヌエコ)」が紹介されていました。

Necoの再生ポリ使用割合は43%。バージン素材の使用量を削減している点は評価できるものの、そうして作られたカーペットを輸入する際にはCO2排出が避けられません。製品について説明するウェブサイトには、「物質的な豊かさを追求する大量生産・消費・廃棄の経済社会システムの問い直し」という文言とともにSDGsの目標12のアイコンが掲げられ、そこから生じた矢印の先には同社の取り組みが循環型社会の形成に貢献するとうたわれています。

しかし、ここまで見てふと思うのです。

仮に私がこのカーペットを買い、自宅で使い続けて、もはや使えなくなったとき、結局は粗大ごみとして捨てるしかない――。

そう、現状ではエコとうたうこの製品も、一方通行のリニア型そのものなのです。サーキュラーエコノミーの「実現」ではなく「貢献」と言っているので間違いではありませんが、ああやっぱりな…とモヤモヤしてしまうのです。

“ごまかし”なのかもしれないというモヤモヤ感を抱いて進もう

今、環境危機時代の資本主義のあり方を考察した「人新生の『資本論』」(斎藤幸平 集英社新書)が話題です。著者は、飽くなき成長を是とした上でSDGsを推進することを“大衆のアヘン”“ごまかし”と評して警鐘を鳴らしています。そんな著者にしてみれば、現在の資本主義の枠組みの中でサステナビリティを追求する文脈で進んでいるサーキュラーエコノミーも“ごまかし”なのかもれません。

しかし私たちは、たとえごまかしであろうともCEを推し進めていかなければならない宿命にあると言えます。日本の廃棄物最終処分場は、満杯まで残り16年余(「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(平成29年度実績等)について」より)私たちはすでに、モノを簡単に捨てられない時代に足を踏み入れているのです。それは同時に、私たちはそろそろ自由にモノが買えない時代に入りつつあるということです。これは何を意味するのでしょうか。

それは、製造・販売だけでなく、回収までをサービスとみなして実施する事業しか生き残れない時代がやって来るということです。ビジネスモデルの根本的な変革を求められる中、今から準備しても遅いかもしれません。ましてや、今何もやらずにいることはもはやあり得ないはずなのです。

CEを推進することで本当に環境負荷は削減されるのか、本当に持続可能な社会につながるのか――。日本も脱炭素社会を目指して大きな一歩を踏み出したことで、いよいよ日本でもCEが推進されるであろう今だからこそ、このモヤモヤした感覚を常に持ち歩きながらCEと向き合っていきたいという思いを新たにするのです。

【参照記事】5G Could Worsen Climate Change, Claims French Government Advisor(Forbes.com)
【参照レポート】CURTAILING CARBON EMISSIONS – CAN 5G HELP?(STL Partners&Huawei)
【参照記事】グレタ トゥーンベリさん世代に向けて 「人新世の『資本論』」 を書いた。斎藤幸平さんが伝えたかったこと(ハフィントンポスト日本版)
【参照】産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(環境省)