Circular Economy Hubでは、サーキュラーエコノミーが各業界や領域に広がる未来像を学べるオンライン学習プログラム「Circular X(サーキュラーエックス)」シリーズを毎月開催している。

2022年9月のテーマは、「サーキュラーエコノミー移行で生まれる企業連携と共創の新たなカタチとは?〜アールプラスジャパンの取り組みに学ぶ〜」

サーキュラーエコノミーの移行においては個社のみではなく、バリューチェーン全体で一貫した取り組みを行う必要があるため、これまで企業間で分断されていた情報・知見・リソースの共有など、ときには競合も含めた他企業・他分野・他領域との連携・協働が不可欠だと言われる。

今回は、使用済みプラスチックの再資源化事業に賛同した企業による共同出資で設立された株式会社アールプラスジャパン代表取締役社長の横井恒彦氏が登壇。本記事では、イベントの概要をレポートする。

ゲストスピーカープロフィール

株式会社アールプラスジャパン 代表取締役社長 横井 恒彦 氏

1961年愛知県小牧市生まれ。東京工業大学化学工学科卒業後、1984年サントリー入社。ビール、ソフトドリンク、ワインの各種パッケージング設備設計を担当。中国赴任で飲料事業を経験後、包材部にてサステナブルな包装材料の開発に従事。2020年株式会社アールプラスジャパン社長に就任。

 

アールプラスジャパンのこれまでの取り組みと企業連携のカタチ

横井氏には、アールプラスジャパン設立のきっかけや、これまでの取り組みをお伺いするとともに、バリューチェーン構成各社が業界を超えて参画するアールプラスジャパンの運営の仕組みや工夫などについてお話しいただいた。以下、横井氏の説明より。

設立のきっかけとなったのは、サントリーと米国バイオ化学ベンチャー企業アネロテック社で行っていたバイオペットボトルの共同開発の過程で、一般的なプラスチックからもプラスチックの素原料となるキシレンやエチレン、プロピレンなどを生成できることが判明したことに始まる。この技術を活用することで、現状はその多くが熱エネルギーとしてサーマル利用されている使用済みプラスチックについて、資源として循環させるケミカルリサイクルへの転換に貢献できると見込み、サントリーが単独で取り組むのではなく、プラスチックの製造から利用、回収、再資源化などバリューチェーンに関わる企業から広く参画企業を募ることにした。

参画企業を募る際、共同出資という仕組みを選択したことや、企業にとっての参画メリットの整理、アールプラスジャパンの事業性について外部評価を行うなどの準備を整えた上で、バリューチェーンに関わる様々な企業に説明を行った。結果として、設立当初から同業他社や異業種を含む12社が賛同し、アールプラスジャパンは設立に至った。

運営において、下記の点に注力した。

  • アールプラスジャパンの事務局としての役割の明確化
  • 共通の指針となるパーパスと理念の設定
  • 分科会の実施
  • 全体での定期的な情報共有などの仕組み化や運営の工夫
  • 事務局としてのコミットメントや参画の遅い早いに関わらない対等なコミュニケーション

「共創事業の重要なポイントはバリューチェーンのピースを埋めること」

横井氏は「共創事業の重要なポイントの一つはバリューチェーンのピースを埋めること」と話す。設立から2年で参画企業は40社まで増え、当初欠けていたバリューチェーンの領域が埋まるようになったことで、例えば新しい回収モデルの構築を行うなど、一社ではなし得なかった課題解決に共同で取り組めるようになってきていると説明。引き続き多様な企業と連携を図りながら、研究開発のフェーズを経て2030年までにプラントの稼働につなげていきたいとしている。

横井氏にお話しいただいた詳しい内容については、アーカイブ動画を下記より購入・視聴することができます。

「サーキュラーエコノミー移行で生まれる企業連携と共創の新たなカタチとは?~アールプラスジャパンの取り組みに学ぶ~」 from ハーチ株式会社 on Vimeo.

編集後記

プラスチックの再資源化のようなCEをめぐる課題は、企業同士はもちろん、行政、自治体、研究機関など様々なステークホルダーが協働しなければ解決することが難しい。一方で、企業として事業性の確保や、情報開示の範囲、様々な立場や考えを持つステークホルダーが参画するがゆえの多方面への配慮など、考慮しなければいけない点が多くある。

横井氏が「未来の社会が経済性やお金だけで価値を測るような時代にはなって欲しくない。そのためにも資源の持続性やその他の評価指標をつくっていくことにも取り組んでいかなければいけないと思っています」と話す通り、共通のパーパスの達成のために、長期的目線で一丸となって取り組むことの価値を評価し、社会全体でサポートする仕組みづくりが重要ではないだろうか。

引き続き、Circular Xでは、Circular Economy Hub 編集部からのインプットと各業界・領域のフロントランナーの皆さまの実践や知見とを掛け合わせながら、ご参加いただく皆さまとともにサーキュラーエコノミーを深める化学反応を起こしていくことを目指して参ります。

【参照記事】【アーカイブ動画購入可能】「サーキュラーエコノミー移行で生まれる企業連携と共創の新たなカタチとは?~アールプラスジャパンの取り組みに学ぶ~」

【次回イベント】【10月25日開催】「サーキュラーエコノミーで私たちは”幸せ”になれるのか?~ウェルビーイングが高まるコミュニティのカタチ」

【参考】アールプラスジャパン