DIC株式会社(以下DIC)とartienceグループの東洋インキ株式会社(以下東洋インキ)は2026年10月7日、フィルムパッケージ(軟包装)のマテリアルリサイクルのしやすさを、業界で共通の方法で評価するための「業界共通プロトコル」を策定したと発表した。軟包装を再生プラスチックにする際に重要となる、印刷インキの除去とフィルム同士の分離のしやすさについて、評価方法を統一した。両社はこれを業界初としている。国内のサプライチェーン全体で、異なる企業や材料のリサイクルのしやすさを共通の基準で評価・比較できるようにする。

食品、日用品、医薬品など幅広い分野で使われる軟包装は、内容物の保護や軽量化、輸送効率などの点で優れた機能を持つ一方、用途ごとに異なる機能を実現するため、フィルムや印刷インキ、ラミネート接着剤など複数の材料で構成されている。使用後に高品質な再生プラスチックとして循環利用するには、印刷されたインキを除去する「脱墨」と、重なったフィルム同士を分離する「剥離」の工程が重要になる。しかし、これまで脱墨・剥離性の評価は各社が独自の試験条件や評価基準で実施していたため、異なる企業や材料間で評価結果を比較することが困難だった。評価項目や報告形式も統一されておらず、パッケージの設計段階におけるリサイクル性の検討や関係者間の情報共有を進めるうえでの課題となっていた。こうした課題は個社のみでは解決が難しく、サプライチェーン全体が共通して活用できる評価基盤の整備が求められていた。
今回のプロトコルは、DICと東洋インキが印刷インキ業界を代表する企業として競争の枠組みを超えて協力し、両社が保有する印刷インキ、ラミネート接着剤およびリサイクル技術に関する知見を持ち寄って策定した。プロトコルは「試験手順」「評価基準」「報告形式」の3つで構成される。試験手順では、使用する機器や試験条件、材料の取り扱い、操作手順などを明確にし、試験の再現性を高めた。評価基準では、脱墨・剥離の状態と、得られた再生プラスチックの品質を判断する基準を設けた。報告形式では、試験条件と結果を統一フォーマットで整理し、関係者間で結果を共有・比較しやすくした。
欧州では、軟包装のリサイクル性に関する評価手法や設計ガイドラインが整備されている。欧州のRecyClassは2018年、PEフィルムのリサイクル性評価プロトコルを公表した。プラスチックリサイクル業者協会(APR)と連携して策定したもので、粉砕、洗浄、浮沈分離、押出、フィルム成形といったリサイクル工程を実験室規模で再現し、インキや接着剤、非PE層などの新しい技術や材料が、リサイクル工程や再生PEの品質に悪影響を与えないかを評価する。また、軟包装のサーキュラーエコノミーを目指すイニシアチブCEFLEXは、欧州の選別・リサイクル工程に基づいたポリオレフィン系軟包装の設計ガイドライン「Designing for a Circular Economy(D4ACE)」を策定し、使用する素材やバリア層、インキ、接着剤などの設計指針を示している。CEFLEXは2022年から2024年にかけて600以上のサンプルを用いて選別・マテリアルリサイクル試験を実施し、その結果を反映して2025年にガイドラインを更新した。
両社は、今回のプロトコルの活用によりサプライチェーンの各関係者に次のような効果が期待されるとしている。包装材の印刷・加工を担うコンバーターは、リサイクル性を考慮した印刷・加工条件や材料を選定しやすくなる。食品・日用品などの製品メーカーであるブランドオーナーは、客観的なデータに基づいてリサイクル性の高い包装材料を選定しやすくなる。再資源化事業者であるリサイクラーは、材料特性に応じた適正な処理条件の設定や、再生プラスチックの品質向上につなげることができる。
【プレスリリース】DICとartience、業界初となるフィルムパッケージのリサイクル評価に関する業界共通プロトコルを策定
【参照記事】Is your plastic film recyclable? Test it!(RecyClass)
【参照記事】Recyclability Evaluation Protocol for PE Films(RecyClass)
【参照記事】Testing: Introduction(CEFLEX D4ACE)
【関連記事】ペプシコら大手食品企業、ベルギーで食品用軟包装のリサイクルへデジタル透かし技術を検証
【関連記事】英共同基金、軟包装の研究プロジェクト開始。2030年に40万トンの循環を目指す
【関連記事】複雑素材のリサイクル促進へ。欧州RecyClass、自動車・電子機器向けリサイクル設計基準を策定
