経済産業省の産業構造審議会と環境省の中央環境審議会の合同会合は、小型家電リサイクル制度の施行状況に関する評価・検討報告書を取りまとめ、経済産業省が2026年10月9日に公表した。回収量が目標に届かず、市町村が処理費を支払って国が認定した事業者(認定事業者)に引き渡す「逆有償」の取引が増えている。リチウム蓄電池による発火事故も急増している現状を踏まえ、回収方法の改善や再資源化の高度化、発火対策、モバイルバッテリーなど4品目の対象追加を提言した。年間14万トンの回収目標は据え置いた。
資源確保と経済安全保障を担う「促進型」の制度
小型家電リサイクル法は2013年4月に施行された。認定事業者が使用済み小型家電を広域的に引き受け、解体・破砕・選別を経て製錬事業者などに原料として引き渡す仕組みである。ほかの個別リサイクル法のように製造業者などに義務を負わせて一つの方法に限定するのではなく、関係者が協力し、自発的に回収やリサイクルの方法を工夫する「促進型」の制度となっている。
報告書は冒頭で、レアメタルなどの金属資源は、日本がその多くを輸入に頼り、採掘や製錬も特定の国に握られていると指摘した。そのため、使用済み製品から有用な金属を回収して再び使うことは、資源循環だけでなく経済安全保障の面でも重要だとした。国内のリサイクル原料の多くが焼却・輸出されている現状にも触れ、再生材の質・量の確保や、日本の製錬技術やリサイクルの知見を生かして日本をハブとする国際的な資源循環ネットワークの構築を目指すべきだとした。
回収量はピーク時から減少、自治体間で大きな差
制度への参加は広がっている。2025年6月時点で、小型家電の回収・処理を「実施中」または「実施に向けて調整中」の市町村は、数で約86%、人口で約95%に達した。2026年9月時点の認定事業者は60事業者で、全都道府県で複数の事業者が収集区域の認定を受けている。
一方、年間回収量は2020年度の約10万2,000トンをピークに減少し、2024年度は約8万7,000トンだった。報告書は、小型家電の流通量の減少や製品の軽量化などの影響と推察している。同年度に認定事業者が再資源化した金属は約4万4,000トンだった。
回収が伸びない要因として、報告書は市町村間の取り組みの差を挙げた。目標達成の目安である住民1人当たり年1kg以上を回収した市町村は、回収を実施する1,486市町村のうち391で、約26%にとどまった。また、0.1kg未満の市町村の人口は、回収を実施する市町村の人口の約43%を占めた。
報告書は、こうした差は主に回収方法の違いによるものと考えられるとした。1kg以上の市町村の約78%は、ごみ集積所での資源回収と合わせて集める「ステーション回収」か、収集したごみなどから清掃工場などで選別する「ピックアップ回収」を実施していた。一方、公共施設や小売店に箱を置く「ボックス回収」は、持ち込む手間や投入できる製品の大きさが制約となり、実施する615市町村の1人当たり平均回収量は0.1kgだった。ピックアップ回収を実施する395市町村では0.6kgだった。報告書は、地域の実情に応じて複数の回収方法を組み合わせることや、できるだけ多くの品目を回収対象にすることを求めた。
家電量販店などによる直接回収の拡大も
市町村を介さない認定事業者の直接回収は、2024年度に約3万3,000トンで、その約6割を家電量販店での回収が占めた。ホームセンターでの拠点回収や宅配便、引越し事業者を通じた回収も広がっている。
報告書は、認定事業者には回収拠点の拡大など直接回収の拡大に努めるよう求め、ポイント付与などのインセンティブが回収量の増加につながる可能性も示した。家電量販店などの小売業者には、購入時の声掛けなどに積極的に取り組むよう求め、個社ごとの回収実績の公表にも期待を示した。約6割で横ばいとなっている制度の認知度を高めるため、自治体や認定事業者などが回収拠点の情報提供や見える化を進めることが重要だとした。
「逆有償」の取引が半数超、採算が悪化
採算面では、引き渡しの構図が大きく変わった。制度開始当初は市町村が認定事業者に小型家電を売却する取引が多かったが、報告書によると、制度対象品目の取引に占める逆有償の割合は2013年度の0.3%から2021年度には67.9%まで上昇し、2024年度も54.9%だった。
背景には、2019年以降に中国などが使用済みプラスチックの輸入規制を強化したことによる残さ処分費の上昇がある。電池の取り外しや、防爆機能付き破砕機、消火装置の導入といった発火対策のコストも、逆有償化の一因と考えられるという。また、回収金属の価値は金・鉄・銅の3種で約9割を占め、報告書はこれらの価格変動も認定事業者の採算を大きく左右するとした。
リチウム蓄電池による発火は4年で急増
発火は廃棄物処理システム全体の課題となっている。小型家電リサイクル協会の調査では、認定事業者での発火は2020年度の50件から2024年度には312件に増えた。関係省庁は2025年10月に「リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議」を設置し、同年12月末に「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を取りまとめている。
報告書は、市町村にはごみカレンダーなどでの排出方法の周知を求め、製造業者にはリチウム蓄電池を使った製品かどうかを消費者が判別できるよう、製品本体への表示に努めるよう促した。電池を容易に取り外せない電池一体型の製品は、消費者が解体せず電池を取り出さないまま廃棄し、取り外せる製品は電池を外して廃棄することが望ましいと整理した。国には、電池の検知機や発煙・発火の検知消火システムの導入支援を求めた。
プラスチックの約6割は熱回収、再資源化の高度化へ
再資源化の質にも課題がある。2024年度に認定事業者が選別したプラスチックは、再資源化された約1万2,000トンに対し、熱回収されたものが約1万8,000トンで、約6割が熱回収にとどまっている。報告書は、プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ法)の施行や自動車向け再生プラスチックの需要の高まりを踏まえ、プラスチックのリサイクルを推進すべきだとした。半導体基板やリチウム蓄電池に含まれるパラジウム、ニッケル、コバルト、リチウムなど重要鉱物の回収に向けた選別の高度化や、自治体と認定事業者によるリユースの促進も盛り込んだ。
認定事業者の間でも取り組みに差が出ている。認定取得後に小型家電リサイクルを実施していない事業者が約1割、パソコンやスマートフォンなどの特定対象品目だけを扱う事業者が約4割ある。報告書は、市町村からの引取実績や全品目の取り扱いなどを評価して国のウェブサイトで公表することや、事業者の同意を得たうえで個社ごとの回収・再資源化実績や個人情報の消去方法を公表することを提案した。
モバイルバッテリーなど4品目を対象に追加
対象品目については、現在の28品目に加熱式たばこデバイス、電子たばこデバイス、モバイルバッテリー、ポータブル電源の4品目を追加すべきだとした。市町村が回収したこれらの製品を認定事業者が引き取る受け皿を増やす狙いだ。ただし、多くの市町村がすでにリチウム蓄電池などの分別回収を始めており、すべての自治体で小型家電リサイクル法の仕組みで回収するとは限らないため、品目追加の周知は慎重に行う必要があるとした。
回収目標14万トンは据え置き、2030年度に再評価
回収目標の14万トンは、2011年の排出量推計65万3,000トンの約20%として設定されたものである。報告書は、2024年度の実績を踏まえると、現時点での引き上げは適当ではないと判断した。改正資源有効利用促進法や再資源化事業等高度化法の認定制度など、ほかの制度で回収された小型家電も、重複計上を避けたうえで合算し、目標の達成を目指す。2030年度をめどに制度を改めて評価し、目標年度はその前年の2029年度とした。
報告書は、関係者が引き続き連携して実情に合った回収・リサイクルを工夫するとともに、国が国際的な資源循環の動向を見据えつつ、提言した施策の具体化に取り組む必要があると結んでいる。
【参照記事】産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 小型家電リサイクルワーキンググループ 報告書
【参照記事】小型家電リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書
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