欧州委員会の共同研究センター(JRC)は11月14日、製品を所有ではなく「利用」に基づいて提供する Product-as-a-Service(PaaS:製品のサービス化) モデルが、EUのサーキュラーエコノミー推進、とりわけ重要原材料(CRMs)の循環確保に貢献するとの科学的評価を公表した。報告書は、PaaSがサーキュラーエコノミーに寄与するかどうかはサービス設計に左右されるものの、適切に構築されたPaaSは資源効率を大きく高める可能性があると指摘している。報告書の著者には、エコデザイン分野の第一人者であるリンショーピング大学の坂尾知彦教授も名を連ねている。
今回の評価では、EU市場で提供されている家電、とくに掃除機を題材にPaaSの実装効果を分析した。その結果、モーターやバッテリーなどに含まれる重要原材料をより効率的に利用できる可能性が示された。背景として、PaaSでは事業者が製品の所有権を維持するため、使用済み製品を確実に回収しやすくなることが挙げられる。また、事業者は回収した製品の構造や性能を把握しているため、部品の取り出しや再利用がスムーズに行え、結果として製品寿命全体での資源循環性が向上するという。
JRCは企業に対し、PaaSには運用面での複雑さがあるものの、資源効率とサステナビリティの向上を両立し得るモデルであることから、導入可能性を検討する価値が高いと提言した。政策面では、資源効率の高いPaaSをEU市場に広げるため、消費者が持続可能なサービスを選択しやすくする公平な評価制度やラベリング制度の整備が必要だとしている。
EUでは現在、経済安全保障の観点から重要原材料の安定確保が大きな課題となっている。今回の分析は、PaaSがその解決策の一つとなり得ることを科学的に裏付ける内容となった。
【参照レポート】Product-as-a-Service as an essential enabler for circular economy in the EU
【関連ページ】欧州委JRC、自動車プラの循環性向上へ3つの政策オプションを提示。再生材利用義務化も視野
【関連ページ】米国の循環市場、2032年に3554億ドルへ。リサイクルやPaaSを中心に成長





