紛争鉱物とは?
紛争鉱物は英語でConflict Metalと呼ばれ、アフリカなどの紛争地域で採掘された鉱物のことを指す。アメリカのオバマ政権時代の2010年7月に成立したドット・フランク法においては、その紛争鉱物は、コンゴ民主共和国やその周辺諸国(ザンビア・アンゴラなど)で採掘されたすず・タンタル・タングステン・金の4つが対象となっている。紛争地域においては、これらの紛争鉱物が武装勢力の資金源となっていることが多い。また、その資金は、奴隷労働、児童労働、強制労働、人身売買、虐待、戦争犯罪などの非人道的行為と密接に関連していることが懸念されている。そのため、世界的に紛争鉱物を規制する動きが活発になっている。
世界での規制の動き
このドット・フランク法では、米国証券取引委員会(SEC)に報告書を提出している企業が対象で、コンゴ民主共和国またはその周辺の鉱物の原料が含まれている場合、「紛争鉱物報告書」を作成し、第三者機関の監査を受ける必要がある。また、ウェブサイトにも公表する必要があり、企業のブランドイメージが低下することにもつながる。ドット・フランク法の成立後、コンゴ民主共和国やその周辺諸国の鉱物からは一切調達しない米国企業が続出した。しかし、コンゴ民主共和国やその周辺諸国の鉱物であっても、武装勢力とは関わりのないもののあるため、それらの鉱物採掘業者の売上が減ったという例もある。
一方EUでは、紛争鉱物の地域をコンゴ民主共和国または周辺諸国に限定をせず、全世界の紛争地域および紛争の高リスク地域へと広げた。この規制は2021年1月1日から適用される。EUの精錬事業者や輸入事業者が、調達した鉱物が人権侵害や紛争を助長していないことを証明するデューデリジェンスを実施、報告、さらにはホームページでの開示が求められる。ただし、規制対象は、精錬事業者や輸入事業者に限られるため、製造業者や販売事業者にその義務はない。対象業者はアメリカとEUでは違うものの、EUのほうが一歩先んじており、世界のスタンダードになる向きもある。
これらの動きを受けて、特にドット・フランク法成立後、日本の大手企業では、責任のある調達として、紛争鉱物は使わない方針を表明する動きが相次いだ。
さらに、世界では「責任ある鉱物イニシアチブ(Responsible Mining Initiative)」が2008年に結成された「責任ある企業同盟 (Responsible Business Alliance)」のイニシアチブとして、ガイドラインの策定や第三者監査(責任ある鉱物保証プロセス(Responsible Minerals Assurance Process))の実施、報告書テンプレートの作成、各種情報提供を行っている。現在このイニシアチブには、10の業界から380の企業や団体が参加しており、ますます紛争鉱物の回避を含めた責任ある調達が拡大している。
(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「紛争鉱物」を転載しております。)