統合報告とは?
統合報告(Integrated reporting)は、企業や規制当局、NGOなどからなる世界的な非営利団体IIRC(国際統合報告評議会)が開発・促進する、企業の情報のルールを定めたものである。企業のこれまでの業績などの財務情報だけでなく、環境保全や地域貢献をどれだけしているかという非財務情報もまとめて公開するというフレームワークで、2013年に公開された。
目的は、投資家に向けて自社の長期的な持続可能性を示すこと。なので、短期的に売り上げが伸びたことや、数年後にこんな利益を出す、ということを伝えるだけでなく、長い目で見たときの環境インパクトや社会的インパクトまでを考慮している、という情報を伝えることが大切なのだ。
企業の将来的なポテンシャルを見せることで投資家からの信頼が高まるだけでなく、社内の部署間の情報交換や人材獲得に向けた資料としても有用だというメリットもある。
他にも、統合報告には「効率的な資本の分配のために利用可能な情報の質の改善」や「長期的な価値創造に影響する要因をまとめて効率化する」、「知識・人・社会・自然といったリソースに関するアカウンタビリティを向上させ、リソース間の相互関係についての理解を深める」、「価値創造能力にフォーカスした統合思考、意思決定、行動を推進する」などの狙いがある。
IIRCは、2020年内に統合報告をアップデートする計画を立てている。今回のアップデートでは、以下の三つの要素が含まれるので、続報に期待だ。
- Responsibility for an integrated report(統合報告書への責任)
- Business model considerations(ビジネスモデルに関する検討事項)
- Charting a path forward (今後に向けて)
アニュアルレポート(年次報告)やCSR報告書との違い
統合報告が日本にも入ってきた当初、日本では「財務情報」と「非財務情報」の統合、さらには「アニュアルレポート(年次報告書)とCSR報告書レポートを合わせたもの」だと解釈された。
しかし実際には、統合報告書は複数の要素をまとめたレポートではなく、物的・人的資源や、資金、地域社会、環境、SDGs(持続可能な開発目標)といった要素を包括的に考える「統合的思考(※1)」のフレームワークに基づいて、報告書を作る行為そのものを意味する。つまり、レポートという成果物ではなく、レポートをつくる過程を「統合報告」というのだ。
- アニュアルレポート(Annual report):企業が年次で出す報告書
- CSR報告書(CSR report):企業がCSRに取り組んでいることを伝える報告書
- 統合報告(Integrated reporting):包括的に社会と経済を考え、報告するプロセス
※1 長期に渡り価値創造能力に影響を与える要素のつながりと相互関係を考慮するもの。その内容には、資本間の相互関係、ステークホルダーのニーズや関心への対応、事業戦略の組み立て、資本に関する活動実績といったものが含まれる。
統合報告を出している企業一覧
統合報告書の発行企業には、次のような例がある。
- 日立製作所
- キリンホールディングス
- 伊藤忠商事
- 三井化学
- 丸井グループ
- 住友化学
- 花王
- 三井物産
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス
- ミネベアミツミ
- 不二製油グループ
【参照サイト】Integrated Reporting – 国際統合報告フレームワーク
【参照サイト】年金積立金管理運用独立行政法人
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(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「統合報告」を転載しております。)