
SDGs(持続可能な開発目標)とは?
近年、企業や学校がこぞって掲げる「私たちはSDGsに取り組んでいます」「SDGsは大事だから学ぼう」という言葉。これはどういう意味なのだろうか。
「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標 )」の略語であるSDGsは、2015年の国連サミットで、193の国連加盟国が全会一致で採択し、2030年までに達成すべきと定めた国際目標だ。これまで環境や社会など、時代によってさまざまな国際目標が立てられてきたが、SDGsは環境・社会・経済に関するさまざまなトピックを包括し、対象範囲も「すべての加盟国」としたことが特徴だ。
世界196か国中、国連に加盟しているのは日本を含む193か国なので、地球上のほぼすべての国と地域、そして企業が対象だと言える。
ここでは、SDGsの意味や企業の事例、課題・問題点、実際の解決案などをご紹介していこう。
目次
社会課題に関する17の目標とは?
SDGsは、環境や社会など世界のさまざまな課題に関する17の目標と、169のターゲットで構成される。
Image via 国連広報センター
- 貧困の撲滅
- 飢餓撲滅、食料安全保障
- 健康・福祉
- 万人への質の高い教育、生涯学習
- ジェンダー平等
- 水・衛生の利用可能性
- エネルギーへのアクセス
- 包摂的で持続可能な経済成長、雇用
- 強靭なインフラ、工業化・イノベーション
- 国内と国家間の不平等の是正
- 持続可能な都市
- 持続可能な消費と生産
- 気候変動への対処
- 海洋と海洋資源の保全・持続可能な利用
- 陸域生態系、森林管理、砂漠化への対処、生物多様性
- 平和で包摂的な社会の促進
- 実施手段の強化と持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップの活性化
※「持続可能な開発のための2030アジェンダ/SDGs」(環境省)より引用
これらの包括的な目標を掲げることで、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」社会を目指すのがSDGsである。そのためには政府だけでなく民間企業、市民社会などすべてのステークホルダーによる取り組みが求められる。地球が危機を迎える現代において、取り組まない企業は国際競争力がないとされる。これが、近年さまざまな企業が「私たちはSDGsに取り組んでいます」と掲げる理由だ。
169のターゲットについては、農林水産省のページでわかりやすく記載してある。
SDGsについて、一緒に知っておきたい3つの言葉
SDGsの前身となった「MDGs」
SDGsの前身となったMDGsMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)とは、2000年9月に国連ミレニアム・サミットで採択された国際社会共通の目標だ。
具体的には、「極度の貧困と飢餓の撲滅」など 8つの目標を掲げ、2015年の達成期限までに一定の成果をあげた。MDGsが途上国における開発目標を定めていたのに対し、その後継として策定されたSDGsは、先進国を含むすべての国に普遍的に適用されるグローバルな目標を定めている。
MDGsの目標を広くし、さらに対象範囲を大きく広げたアップデート版が、SDGsと言っていいだろう。
17の目標を3つの層に分けた「SDGsウェディングケーキ」
SDGsの17の目標を、「生物圏(Biosphere)」「社会圏(Society)」「経済圏(Economy)」の3つの層に分類したものをSDGsウェディングケーキという。文字通り、ウェディングケーキのような形をしていることが名前の由来だ。
credit: Azote Images for Stockholm Resilience Centre, Stockholm University
スウェーデンの首都ストックホルムにあるレジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム氏らによって2016年に提唱されたこのモデルは、一番下の層が生物圏で、その上に社会圏、さらにその上に経済圏が乗っている。
つまりこれは、生物(地球環境)の基盤があることで、私たちの社会、そしてお金を生み出すための経済が成り立っていることを表している。たとえば、貧困や教育など社会の問題を解決しても、水不足や気候変動など、根本的な環境の問題が解決しなければ生きられない、などだ。すべての目標は密接につながっており、個別に達成するものではないことも伝えているのである。
日本社会で目指される「Society 5.0」
経団連は、2017年11月に「Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱として、企業行動憲章を改定」したことを発表。
Society 5.0が目指すのは、SDGsでも提唱されている「誰一人取り残さない」社会を実現することだ。そのために、最新のテクノロジーを活用し、人々の快適な暮らしとあらゆる社会課題の実現を目指している。
具体的には、以下のようなことを行なっていくとしている。
- IoT活用により、地域ごとで受けられるサービスの格差を埋める
- AI活用により、膨大な量のデータを正確に読み解く
- AI活用により、様々なシステムの効率化・最適化を図る
- 最新技術を活用し、言語などによる分断をなくす
- 最新技術を活用し、障害や年齢による行動の制限を取り払う
SDGsの課題:アピールしても実態が伴わない「SDGsウォッシュ」
SDGsウォッシュ(SDGsウォッシング)とは、SDGsに取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉。実際はそうでないにも関わらず、広告などで環境に良いように思いこませる「グリーンウォッシュ」が元になっている。
たとえば、事業の内容に直接関係のない「グリーンなイメージ(自然の写真や、緑色の包装など)」を使う石油企業や、衣服の製造過程で通常よりも多くの水や土地を使うにも関わらず、「天然」または「リサイクル素材」でつくられている、と良い面だけをアピールするファッションブランドなどが当てはまる。
では、自社のビジネスがSDGsウォッシュにならないためにはどうするべきか。「SDGsコミュニケーションガイド」では、ウォッシュを避けるための4つのポイントが書かれている。
- 根拠がない、情報源が不明な情報を避ける
・根拠となる情報の信頼性が希薄な場合、あるいは検証材料がない場合 - 事実よりも誇張した表現を避ける
・それほどでもないSDGsへの取り組みを大きく強調して訴求したり、小さな取り組みを大げさに取り上げたりするケース
・法律で規制されている事項を、自主的に配慮しているように表現するケース - 言葉の意味が規定しにくいあいまいな表現を避ける
・言葉の意味が規定しにくく、SDSsへの対応の具体性に欠けるコピーワークなど - 事実と関係性の低いビジュアルを用いない
・SDGsへの配慮の事実がないにもかかわらず、「貧困」「教育」等の写真でSDGsイメージの付与・増幅を狙うことなど
SDGsウォッシュという言葉が出てきたことは、情報を受け取る側の意識の向上を意味することにもなる。上辺だけでない、本当に持続可能なビジネスを行う企業が評価される時代になってきているのだ。
結局、この時代に企業はどう振る舞えばいいのか
SDGsを企業はどう活用するか。その企業行動指針を示すものに、「SDGsコンパス」がある。これは、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアティブ)とUNGC(国連グローバル・コンパクト)、そしてWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の3団体が共同で作成したものだ。
SDGsコンパスによると、企業は以下の5つのステップを追っていくことが大切だという。
- SDGsを理解する
- 優先課題を決定する
- 目標を設定する
- 経営へ統合する
- 報告とコミュニケーションを行う
▶︎ 全文はこちら:SDGs Compass(日本語)
まとめ:もはや海外では「SDGs」という言葉が使われない?
ここまでSDGsについてカバーしてきたが、実は「SDGsが今盛り上がっているのは日本だけ」という言説もある。確かに「SDGs」という言葉を検索するのは日本人が多く、インスタグラム等のSNSでも、「SDGs」というタグを検索すると日本の個人や企業による投稿ばかりが目に付く。
しかし、これは決して海外が環境や社会の問題について関心がないというわけではない。SDGsとまったく同じ意味ではないとしても、”ESG”や”circular economy”、”regeneration”、”Diversity and Inclusion”などさまざまな言葉が使われている。自社のすでに実施している取り組みにSDGsを当てはめ、それらしいバッヂをつけて満足するのではなく、今後も他の企業や団体、自治体などと連携しながら取り組みを進めていくことが大切だ。
【参照サイト】SDGs ― よくある質問 | 国連広報センター
【参照サイト】環境省_持続可能な開発のための2030アジェンダ/SDGs
【参照サイト】外務省: “誰一人取り残さない”世界の実現-「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択
【参照サイト】「企業行動憲章」の改定について | お知らせ | 一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren
【参照サイト】 Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
【参照サイト】SDGs Compass
【関連ページ】SDGsウォッシュとは
【関連記事】SDGs達成にはサーキュラーエコノミーが必要不可欠か?(「世界循環経済フォーラムと気候変動に関するハイレベル会合」レポート#4)
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(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「持続可能な開発目標(SDGs)」を転載しております。)
