環境省は2026年9月29日、市町村におけるリチウムイオン電池等の処理状況に関する調査結果(2025年度実績)を公表した。あわせて、市町村によるリチウムイオン電池等の排出方法の周知事例集と、膨張・変形したリチウムイオン電池等への対応事例集も公表した。
調査は、リチウムイオン電池等に起因する火災事故等の防止を目的に環境省が2025年4月15日付けで発出した通知「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」を踏まえ、市町村の処理体制の構築状況などを把握するフォローアップ調査として実施したもの。2026年4月28日から5月28日にかけて、事務組合と特別区を含む全国1,741市町村を対象に行い、すべての市町村から回答を得た(回収率100%)。
調査結果によると、2025年度に廃棄物処理時にリチウムイオン電池等に起因すると疑われる火災事故等(発煙・発火を含む)は3万9,282件発生し、2024年度の2万3,068件から増加した。2019年度は9,732件だった。内訳は、出火し散水装置等の設備で自動的に消火されたものが1万7,792件、火花・煙が発生し出火しなかったものが1万1,550件、出火し職員が手動で消火したものが9,287件、出火し消防隊により消火されたものが169件、その他が484件だった。職員または消防隊による消火が行われた火災事故等が発生した市町村は392に上り、前年度の272から増加した。
発生場所は、破砕・選別・圧縮等を行う再資源化施設(保管場所を含む)が3万5,694件と最も多かった。環境省は、リチウムイオン電池等が市町村の定める分別区分に排出されず、ごみ処理施設の破砕機等で衝撃が加わった際に発火して火災事故につながるケースが多いと考えられるとしている。火災事故等が発生したごみ区分は不燃ごみが393件で最も多く、可燃ごみが171件、粗大ごみが164件で続いた。品目別ではモバイルバッテリーが203件で最も多く、加熱式たばこが102件、コードレス掃除機が80件だった。環境省は、小型で安価なものや表面がプラスチックのものが多い傾向にあると考えられるとしている。
市町村の火災対策では、全回答市町村のうち、拠点回収において難燃性または金属製の容器で保管している市町村が28.0%、収集運搬車両に消火器等を搭載している市町村が39.1%だった。一方で、収集運搬時の火災対策を特に実施していない市町村は46.0%だった。廃棄物処理施設等では、処理前にリチウムイオン電池等の抜き取り(手選別)を実施している市町村が51.1%、防火・消火設備等を設置している市町村が44.8%だった。
リチウムイオン電池またはその使用製品を回収している市町村は86.2%となり、前年度から8.9ポイント増加した。回収を行っていない240市町村(13.8%)のうち106市町村が分別回収の実施を検討しており、そのうち87市町村が回収を開始する予定があると回答した。都道府県別では、回収している市町村の割合が80%以上の都府県が40に上った一方、80%未満の道県が7あった。回収を行っていない理由としては、組織体制の整備や人員確保が困難であることが最も多く挙げられ、近隣に引き取り可能な事業者等がいないこと、収集・処理を委託している事業者との調整が困難であることが続いた。
回収方法は、電池単体、使用製品ともに清掃工場への持込みが最も多く、それぞれ57.9%、60.5%だった。処理方法では、電池単体は電池類と一緒に民間事業者に処理委託している市町村が729、使用製品は小型家電と一緒に認定事業者に処理委託している市町村が650で、それぞれ最多となった。処分を行っていない市町村では、回収量が少ないため保管のみ行っているとの回答が最も多く、処理先が見つからないとの回答が続いた。
膨張・変形したリチウムイオン電池またはその使用製品について、回収方法を明示して回収している市町村は41.3%だった。膨張・変形した電池単体を回収している1,366市町村のうち、通常の電池とは別の方法で回収しているのは39.0%で、そのうち80.1%が市町村窓口での手渡し(清掃工場への持込みを含む)により回収している。一時保管施設ではペール缶等で保管する市町村が最も多かった。処理方法では民間事業者への処理委託が最も多かったが、処理方法が分からず保管している市町村も、電池単体で66、使用製品で55あった。
周知事例集と対応事例集も発表
周知事例集では、ごみ分別カレンダー、チラシ・冊子、広報誌、ホームページ、動画、SNS、ごみ分別アプリの7つの媒体について、千葉県柏市・市川市、東京都世田谷区、千葉県流山市、神奈川県横浜市、千葉県習志野市、東京都町田市、福岡県久留米市の取り組みを紹介した。各事例を、イラスト等による情報の伝え方や住民への届け方、誤った排出による火災リスク・危険性の伝え方、分別・排出方法の伝え方の3つの観点から整理している。習志野市が実験動画で発火リスクを伝えるとともに、生成AIによるイメージ動画でクリーンセンターの全焼といった火災被害を表現した事例や、久留米市がごみ分別アプリのプッシュ通知で収集情報を届け、トップページで火災リスクを注意喚起する事例などを取り上げた。
膨張・変形への対応事例集では、7市区町の回収・運搬・保管・処分の取り組みを、背景や手法の選定理由、導入時の調整事項、運用上の課題とともにまとめた。福岡県北九州市は金属製の蓋付きペール缶を回収ボックスとして使用しており、2026年4月に回収拠点を約90か所から約140か所へ拡大し、これに合わせて新規容器にはアラミド繊維製の内袋を採用した。熊本県菊池市はステーション回収で膨張・変形品を別袋で排出するよう周知し、窓口回収分は金属製ペール缶と防火シートを用いて運搬・保管している。東京都練馬区と品川区は消火剤を設置した金属製ペール缶で運搬・保管しており、品川区は回収品をペール缶へ移す頻度を週1回から毎日に変更した。このほか、端子を絶縁し個別に包装したうえで砂を入れたペール缶で保管する青森県五戸町、真水に浸して保管する東京都渋谷区、既存の回収ルートの対象外となる電池の引渡し先を確保した東京都小平市の事例を掲載した。なお環境省は、同事例集は市町村の取組事例を整理した参考資料であり、特定の手法を推奨するものではないとしている。
【参照記事】市町村におけるリチウムイオン電池等の処理状況調査結果(令和7年度実績)及び関連事例集の公表について
【参照記事】市町村におけるリチウムイオン電池等の処理状況調査結果概要(令和7年度実績)
【参照記事】市町村におけるリチウムイオン電池等の排出方法の周知に関する事例集
【参照記事】膨張・変形したリチウムイオン電池等への対応に関する事例集
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