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循環経済を推進する企業は、都市に何を求めるのか。建築・製造・包装・データの現場から【APCC2026レポート】

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循環経済への移行に向け、企業の取り組みを後押しする都市の役割が問われている。再生素材の安定供給に向けた回収・再資源化インフラの整備、資源循環に関するデータの共有、企業と自治体が連携した実証環境の構築など、都市に求められる機能は、従来の廃棄物処理の枠を越えて広がりつつある。

2026年9月、横浜市で開催されたアジア太平洋循環型都市フォーラム(Asia-Pacific Circular Cities Forum:APCC-Forum)。2日目のビジネスセクター・セッション「循環経済に向けた産業変革と都市の役割~循環経済を推進する企業は都市に何を求めるか~」では、建築、製造、包装、デジタル技術などの分野で循環経済に取り組む企業が実践事例を共有した。各社の取り組みと課題を踏まえ、循環型の産業構造を支える都市のあり方や、企業と自治体の連携による可能性について議論が交わされた。

横浜市の循環型都市戦略、産業と資源をつなぐ6つの視点

セッションの冒頭、モデレーターを務めた大学院大学至善館 循環未来デザインセンターの加藤佑氏は、横浜市が2026年に策定した4か年計画「横浜市中期計画2026-2029」で、施策横断プロジェクトの一つに位置付けられた「循環型都市への移行」について紹介した。

加藤氏は、取り組みを進める上での重要な要素として、人口約370万人という都市の規模、既存資源に多様な視点から新たな価値を見いだすこと、市民参加の3点を指摘。「廃棄物を資源として見ることができれば、それは新たな循環型ビジネス、イノベーション、ソリューションの機会になります」と語った。

重点領域は6つ。食品・建築・消費財の3分野と、リサイクラーと製造業者をつなぐ循環型バリューチェーンの構築(Connect)、地場の中小企業や大企業との協働による循環型設計・製造(Make)、都市全体のマテリアルフローの可視化(Visualize)という3つの手段を組み合わせた構成だ。

加藤氏は、本セッションの登壇企業がこれらの領域を幅広くカバーしていると説明。横浜市の都市戦略を背景に、各社が取り組む資源循環の実践と課題が共有された。

地域文化や素材特性から「アジア型の循環建築」の可能性を探る

最初に登壇した竹中工務店の海野玄陽(うんの・げんき)氏は、建築分野で循環経済を実現するため、資源の採取から建物の解体・廃棄まで、ライフサイクル全体を設計の対象とする「サーキュラーデザイン・ビルド」の重要性を指摘した。

天然資源の採取・加工は、世界の温室効果ガス排出の55%以上、生物多様性の損失の90%以上に関わるとされる。資源を大量に消費し、建設や解体に伴う廃棄物も多い建設業は、資源循環に向けた変革が求められる分野の一つだ。

同社は、埋め立て廃棄物を2030年までに10%削減し、2050年までにゼロにする目標を掲げ、循環型デザインガイドブックの作成や、建物の新築・改修における取り組みを進めている。

海野氏が提起したのは、素材を長く使い続けるだけではなく、地域の文化や素材の特性に応じて部材を交換・再利用する循環型建築のあり方を重視すること。欧州では「石の文化」を背景に、素材は劣化しないという前提のもと、耐久性の高い素材を長く使い、再利用する建築が発展してきた。

一方、日本には伊勢神宮の式年遷宮のように、20年ごとに社殿を建て替え、古材を鳥居の建設や被災した神社の修復に活用するなど、建材を新しいものに替えながら歴史的建造物を維持してきた例がある。こうした知見は、循環型への移行に多くの示唆を与えるだろう。

また、海野氏はインドネシアの竹建築にも着目する。地域の職人が竹の部材を交換でき、取り外した竹も別の用途に活用できることから、地域の技術や文化を生かした資源循環の可能性があるという。

「建築の形やシステム、理念を受け継ぎながら、部材は地域の職人が何度でも交換することができます」と語った海野氏。竹や木材などの素材を地域の技術や文化と結び付け、コンクリートや鉄骨などとも組み合わせながら活用することが、アジアで循環経済を推進する一つの方法になると強調した。

再生材の活用から、包括的な資源循環へ

ヤマハ発動機の原田久氏は、同社の環境計画と資源循環に向けた取り組みを紹介した。同社は2050年に向けた環境計画で、気候変動、循環経済、生物多様性の3分野を重点領域に位置付けている。

資源循環については、バージン材を再生素材に置き換える目標を掲げ、2035年までに30%、2050年までに100%の置き換えを目指す。

目標達成のための取り組みは、3Rを基本としている。製造プロセスとライフサイクル全体を通じた原材料・エネルギー消費の削減(Reduce)、製品の再利用や長期使用の促進(Reuse)、原材料や部品を生産サイクルに戻すリサイクル(Recycle)だ。

原田氏は具体例として、二輪車への環境対応型リサイクルポリプロピレン材の採用や、グリーンアルミニウムの活用を挙げた。また、水上オートバイの一部に使用する、セルロースナノファイバーなどのバイオ由来素材を用いた強化樹脂の開発も進めている。

一方、販売後の製品の使用・修理・リサイクルの実態把握や、循環型製品の顧客価値の向上、回収した資源を再び同種の製品に活用する仕組みの構築は、今後の課題だという。

原田氏は「二輪車のクローズドループ・リサイクルシステムの確立には依然として課題がある」と指摘。その上で、二輪車や部品の再利用・再生整備を推進し、製品のライフサイクル全体を通じた資源循環を目指す考えを示した。

廃棄物データの可視化が、資源循環への民間投資を促す

続いて、レコテックの大村拓輝氏は、都市の廃棄物データを収集・活用する仕組みが循環経済の実現に向けた民間投資を促す鍵になると指摘した。「データがなければ、資金も集まらない」と述べ、廃棄物の種類や量、品質、排出場所などを継続的に把握する重要性を強調した。

アジアの多くの都市では、廃棄物処理による環境衛生の維持が優先課題となっている。一方、埋め立て施設や焼却施設、リサイクル施設の整備には多額の費用がかかる。こうしたインフラへの民間投資を促すには、投資リスクを評価するためのデータが欠かせない。廃棄物の発生状況を把握できなければ、施設の立地や収集ルート、稼働率を適切に計画できず、金融機関も投資判断を下しにくいためだ。

大村氏は、廃棄物が排出される現場で一次データを継続的に取得する仕組みを、都市のルールとして整備するよう呼びかけた。

同社が開発したクラウド型の廃棄物計量管理システム「pool」は、廃棄物の排出・回収・調達の3段階をデータでつなぐ。横浜市では約1,200カ所で導入され、廃棄物の重量や種類、排出場所などの記録・管理に活用されている。手作業による記録業務の負担軽減に加え、排出事業者、収集事業者、行政が同じシステムを利用することで、収集ルートの最適化や報告業務の効率化にもつながっているという。

さらに大村氏は、廃棄物を都市に分散する資源と捉え、経済安全保障の観点から資源循環を考える必要性を訴えた。

大村氏は「都市の足元には、油田のように資源が分散しています。それらを活用するために必要なのが、データなのです」と述べ、データ基盤の整備を通じて民間投資を促し、資源を消費するだけではなく供給する都市へと転換する展望を示した。

回収の仕組みと再生品の需要づくりで、紙容器の資源循環を促進

日本テトラパックの大森悠子氏は、紙容器の資源循環を進めるため、国内の回収拠点の拡大や消費者への啓発に加え、再生素材を使った製品の市場づくりにも取り組んでいると紹介した。

同社は、容器の設計から回収、リサイクルまでを一体的に捉え、素材をできるだけ長く活用することを目指している。2025年の取り組みとして、世界で約130万個の紙パックを回収しリサイクルした実績や、ジュースパックのアルミニウム使用量を減らして紙ベース素材に置き換えることで、パッケージ単体のカーボンフットプリントを約23%削減した事例を紹介した。

一方、日本国内の紙パックの回収・リサイクル率は約23%にとどまる。大森氏によると、回収量の約半分をスーパーマーケットの店頭回収が占めており、自治体による回収と合わせて、回収機会の拡大が課題となっている。

大森氏は「循環は回収から始まり、回収は消費者から始まります」と述べ、紙パックのリサイクルに関する認知を高めるとともに、自治体などと連携し、消費者が情報に触れる機会を増やす必要性を指摘した。

同社はさらに、リサイクル素材を使った付加価値の高い製品の開発にも着手している。回収を促すだけでなく、再生素材を使った製品への需要を生み出すことで、資源循環を継続的に拡大させる考えだ。

企業単独では超えられない、資源循環の壁

続くパネルディスカッションでは、各社の実践を踏まえ、循環型ビジネスの普及を阻む課題と、都市や自治体に求められる役割について議論が行われた。

竹中工務店の海野氏は、建設分野における再生材や再利用材への価値観の転換が課題だと指摘。品質が低く、洗練されていないというイメージが根強く、建物の所有者に受け入れられにくいという。一方でヤマハ発動機の原田氏は、そうした再生素材の導入ではコストと品質の両立および社内合意形成の難しさも挙げた。

レコテックの大村氏は、廃棄物データの収集を促すインセンティブの設計と、データの規模を確保することの重要性を指摘した。データ入力の負担に見合う直接的なメリットがなければ企業の参加は進みにくく、ネットワークの立ち上げ時には先行企業の負担も大きい。データの価値が生まれるまでに時間がかかることも、普及を妨げる要因となっているという。

日本テトラパックの大森氏は、回収の難しさを課題に挙げた。紙容器は軽量である一方、消費場所が広く分散しているため、単独で回収すると輸送効率が悪く、経済性を確保しにくい。そのため、既存の店頭回収網を活用しながら、新たな回収の仕組みを整え、リサイクル製品の開発を進める必要があると述べた。

こうした課題に共通するのは、個々の企業の努力だけでは解決しにくいという点だ。議論では、規制や経済的インセンティブの整備、業種を越えた連携、消費者への教育・啓発など、都市や自治体に期待する役割が示された。

海野氏は、課題の解決に向けて「政府による評価システム」と「協働」が重要であると提示。例えば、自動車産業で回収したアルミニウムを建築に転用するなど、異業種から出る素材を建築資材として活用できれば、新たな用途が生まれる。こうした連携を進めるには、行政による支援と、企業同士が協働する機会の創出が重要だという。

これを受けて原田氏は、他産業から回収したスチールやアルミニウムなどの再生材を、より付加価値の高い素材として活用していくために、リサイクラーなどとの連携も必要だと指摘した。また、同社では既に多くの再生材を導入しているものの、サステナブル製品の顧客価値の創出は依然として課題だという。都市や自治体との協働を通じ、市民の資源循環に対する意識を高める教育・啓発プログラムの必要性に言及した。

大村氏は、300以上のテナントがある玉川髙島屋への「pool」の導入を例に挙げ、「公的スケールが民間のインセンティブを生み出す」として、都市規模で共通のデータ基盤を構築することを提案した。廃棄物データを集約し、資源の所在や品質を把握できれば、都市に分散する資源の有効活用につながる。そのためには、参加企業を増やすためのルール整備が必要だという。

大森氏は自治体に対し、回収を促進する制度や、再生素材の利用を後押しする政策支援を求めた。回収を民間企業だけで担うことには限界があり、自治体による支援と制度整備が資源循環を加速させると指摘。また、海外では紙容器由来の再生素材を石こうボードや屋根材などの建築資材に活用する事例があると紹介し、行政の支援があれば、異業種連携による新たな市場を生み出せる可能性があると述べた。

最後に加藤氏は、循環型製品やサービスの将来市場を育てる上で、教育が重要な役割を果たすと指摘した。都市や自治体は公共教育を通じて市民の理解を広げられる。企業との連携を通じて循環型社会への移行を後押しすることが、アジア太平洋地域全体で循環型の未来を実現する鍵になると述べ、議論を締めくくった。

企業の取り組みを、都市全体の循環へ

本セッションでは循環経済の実践を広げる上で、企業の技術開発や経営努力に加え、それを支える社会の仕組みが必要であることが浮かび上がった。

再生材の品質や価格、顧客にとっての価値、使用済み製品の回収効率、データ収集への参加を促す仕組み。各社が直面する課題は異なるが、その多くは一社だけでは解決が難しい。再生材の供給と需要を結び付け、回収にかかる負担を分かち合い、循環型の製品やサービスが市場で選ばれる条件を整える必要がある。

その接点となるのが、都市や自治体の政策である。共通のルールや経済的支援によって企業の参入を促し、異なる産業の間で素材やデータを活用できる環境を整える。市民への教育・啓発を通じて循環型製品への理解を広げることも、需要の創出につながる。企業の個別の取り組みを、都市全体の資源循環へとつなぐ基盤づくりが求められている。

技術的に可能な取り組みを、経済的にも成立し、継続できる仕組みへと発展させるには、企業の実践と都市の政策をどう結び付けるかが問われる。都市や自治体が制度や支援策を整え、企業間の連携や市民の参加を促すことで、循環型ビジネスが広がる条件も変わっていく。企業の実践を都市全体の資源循環へと発展させるために、都市がどのような仕組みを築き、産業と社会をつないでいくのか。今回の議論は、その役割を改めて問いかけるものとなった。

【参照サイト】アジア太平洋循環型都市フォーラム2026(Asia-Pacific Circular Cities Forum 2026)

Edited by Natsuki Nakahara

金田 悠

金田 悠

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