バイオミミクリーとは?
生物の仕組みから学んだことを技術開発に活かすこと。この言葉を最初に唱えたのは1997年に「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」という本を出版したサイエンスライターのジャニン・ベニュス氏。生物を意味する「Bio」と模倣を意味する「Mimicry」を合体させた言葉。学問用語にとどまらず、近年は実社会でもこの考え方の適用が進んでいる。
バイオミミクリーの具体例
バイオミミクリーの研究が実用化されている例として、500系新幹線の先頭部分の尖った形状はカワセミの口ばしを元に考案されている。カワセミは餌を取るために水中に飛び込むが、そのとき水しぶきがほとんど飛び散らない点が注目され、空気抵抗を極力抑えた先頭部分の設計に繋がった。新幹線の空気抵抗を抑えられれば騒音対策になり、近隣に住む人たちにとってより優しいデザインとなった。この他にも、海藻の生態から学んだ波のゆれを利用する波力発電システム、アリ塚の構造を模倣した省エネ効果のある建築デザインなど、バイオミミクリーを活用した研究は多く行われている。
バイオミミクリーと持続可能性
バイオミミクリーの意義は、単に自然からアイディアを拝借して人間に恩恵をもたらすだけではない。現存する生物のありようを模倣するということは、長い年月をかけて最適化された形態や仕組みを取り入れることを意味し、それは地球環境への負担が少ない持続可能なつくりである可能性が高い。地球環境保護への関心が高まっているこの時代に、生物の多様性から学んで人間が地球に適応していくことを促すバイオミミクリーの発想は広く受け入れられた。国連環境計画もこのコンセプトの提唱者であるジャニン・ベニュスを表彰し、優れたバイオミミクリー関連技術を紹介するプロジェクト「Nature’s Best 100」を実施している。
(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「バイオミミクリー」を転載しております。)