気候変動とは?
「気候変動」とは、長い時間軸で見たときの気候(大気の平均状態)の変化・変動を言い、主な原因として自然的要因と人為的要因が挙げられています。自然的要因の1つとしては、海洋の変動、太陽活動の変動や、火山活動による大気中の微粒子の変化があります。一方、人為的要因は人間が行う活動、例えば化石燃料の燃焼や森林伐採などによる二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの増加が挙げられます。
近年、特に温室効果ガスの増加による地球温暖化に対する懸念から、人為的要因が気候変動に与える影響に関心が高まっています。また農作物生産への影響や大規模な自然災害の増加、野生生物の絶滅危機など、自然環境や生態系への影響も危惧されています。国連は気候変動を「今日の我々の問題」と捉え、かつてない程に深刻な気候変動が地球規模で起きていると警鐘を鳴らしています。
気候変動の問題点とは?数字と事実、原因、解決策などの情報をまとめました。
数字で見る気候変動
世界で話題となっている気候変動の現状に関する数字と事実をまとめています。
気候変動の状況
- 二酸化炭素量の増加:2015年から2019年の5年間に排出された二酸化炭素量は、その前の5年間と比べて20%上昇(2019年、WMO)
- 平均気温の上昇:2015年から2019年の5年間の世界の平均気温が観測史上最も高くなり、その前の5年間と比べて0.2度上昇、産業革命以前と比べて1.1度上昇(2019年、WMO)
- 海面の上昇:2014年5月から2019年の5年間で海面が年間5mm上昇。2007年から2016年の10年間の年間上昇(4mm)や1993年からの平均年間上昇(3.2mm)と比較すると、上昇速度が速まっている(2019年、WMO)
- 海水温の上昇:気候変動により生じた熱エネルギーの9割以上が海洋に吸収、蓄積されていると言われています。海抜700mまでに蓄積された熱量は2018年が過去最高値(2番目は2017年、3番目は2015年)(2019年、WMO)
- 海洋酸性化:海洋は毎年の人為的な二酸化炭素排出量のうち約3割を吸収、蓄積しており、大気中の二酸化炭素割合の増加が抑えられる一方で、海水の酸化が進んでいます。産業革命以前と比較すると、海洋の酸性度は26%増加していると言われています(2019年、WMO)
世界が掲げる目標
- パリ協定(2016年11月4日):2020年以降の世界の温室効果ガス削減等のために、先進国、開発途上国の区別なく、各国が気候変動対策の行動をとることを合意しました。2016年の締結時点で175の国と地域が署名し、現在は183の国と地域が批准している。
パリ協定では、産業革命以前と比較して平均気温の上昇を2度より低く抑えること、そして1.5度以内に抑える努力を続けることを目標に掲げています。 - 国連気候行動サミット(2019年9月23日):アントニオ・グテーレス国連事務総長はこのサミットで、各国のリーダーに対して2020年までに各国の具体的な計画を提出するよう呼びかけました。サミットでは、65カ国が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを約束し、70カ国が2020年までに自国の行動計画を強化予定、もしくはすでに強化を始めていることを発表しました。民間セクターでも、時価総額で計2.3兆米ドル(約230兆円)を超える大企業87社や、世界の銀行セクターの3割にあたる130行が、パリ協定の目標に沿ったビジネス行動を起こすことを約束しました。一方、パリ協定から離脱したアメリカでは、民主党の議員グループが提案するグリーンニューディール政策が注目を集めています。温室効果ガス排出ゼロを目指し、10年以内に再生可能エネルギーへの移行や、電気自動車の普及や公共交通機関の拡充、製造業、農業における二酸化炭素排出量削減等を掲げた気候変動政策です。実現に向けた資金調達の難しさや技術的課題が指摘されていますが、気候変動に懐疑的な姿勢を取るトランプ大統領率いる共和党との間で、2020年の大統領選挙の争点の一つになるとも言われています。
活発化する市民運動
2019年9月23日気候行動サミットに先駆けて行われた、若者達によるグローバル気候マーチ(Global Climate Strikes)は世界185カ国以上で 400万人以上が参加しました。始まりは、2018年夏にスウェーデンの女子高生だったグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんが、気候変動のための学校ストライキを始めたことがきっかけでした。
その夏、北欧は記録的な熱波に見舞われており、選挙権のなかった彼女(当時15歳)は、スウェーデン政府に気候変動への対策強化を訴えるため、学校をストライキし一人でストックホルムにある国会議事堂前で座り込みを続けました。そしてスウェーデン政府がパリ協定に沿った具体的な行動を起こすまで、毎週金曜日は気候変動ストライキを行う日として活動を続けたのです。
彼女の行動はソーシャルメディアを通して人々の注目を集め、多くの若者の共感を呼日ました。そして 「未来のための金曜日(Fridays for Future)」として、世界各地の若者達が毎週金曜日に学校をストライキし、気候変動への対応を求めるグローバル気候マーチを始めました。
気候変動はなぜ問題なのか?
気候変動の影響は様々な形で表れています。この20年で観測された6,457もの自然災害の約9割は気候状況により発生しており、特に近年ヒートウェーブ現象や森林火災、熱帯低気圧、洪水など、世界各地で被害が深刻化しています。
また気候変動と紛争の因果関係も指摘されています。2010年から2012年にかけて起きた「アラブの春」で、シリアでは気候変動による干ばつや水不足から農作物生産量が低下し、農村部から都市部に人が大量に移動したこと、これにより都市部の人口が過密化し失業や政治不安から内戦や移民の増加に繋がったと言われています。同じような状況がサブサハラアフリカでも確認されています。
気候変動が他の動植物に与える影響も指摘されています。気候変動や森林伐採といった人間の活動により、約100万種以上の動植物が数十年のうちに絶滅の危機に晒されると警告されています。この絶滅のペースは過去1000万年の平均より10倍から100倍速いです。
気候変動により生じる恐れのある問題
- 自然災害の増加(森林火災、洪水、干ばつなど)
- 農作物の収穫、食物不足
- 資源の争い、紛争、移民の発生
- 動物、植物の絶滅危機
気候変動のためにできること
気候変動というと規模が大きく、難しい話のように聞こえるかもしれませんが、温室効果ガスの削減のために身近でできることも多くあります。
- エネルギーの節約を心がける(公共交通機関を利用する、電気をこまめに消す、省エネ製品に買い換えるなど)
- 再生可能エネルギーを職場、学校、家庭などに導入する
- 温室効果ガス排出量削減に取り組む企業やNGOを応援する
- 気候変動や環境問題に関する知識を広める
気候変動対策に取り組む関する団体
- 国連環境計画(UNEP)
- 世界気象機関(WMO)
- Friends of the Earth
- 未来のための金曜日(Fridays for Future)
- Global Climate Strikes
- Sustainable Japan
【関連記事】モンクレール、循環型経済や気候変動対策などの5つの目標を主軸とした新たなサステナビリティプランを発表
【関連記事】「サーキュラーエコノミーと気候変動、より良い復興のために」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #12
(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの「気候変動」を転載しております。)