Circular Economy Hubでは、サーキュラーエコノミーの実現を目指す国内外のさまざまな動きを発信している。そもそもサーキュラーエコノミーとはどのようなもので、実際の社会に適応されるとどのように機能するのかーー。サーキュラーエコノミーについて理解を深めるため、筆者はエレン・マッカーサー財団が10週間にわたって提供するオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」に参加している。そこで得た学びを、毎回レポートする。

※本レポートは、エレン・マッカーサー財団に許可を得たうえで、講義内容等を掲載したものです。

これまでの講義レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール
第10回「壮大な見取り図
第11回「再生する農業

バリューチェーン上すべてのプレイヤーで経済の仕組みごと変える

私たちはこれまでのシリーズ全11回で、様々な角度からサーキュラーエコノミーについて学んできた。ここで改めて振り返っておきたい。

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?」では、サーキュラーエコノミーの基礎について学んだ。サーキュラーエコノミーの3原則を学んだ上で、サーキュラーエコノミーの本質は「ごみから設計する」のではなく「ごみのない設計」にあること、重要なのは「製品を『高い価値を保った状態で』使い続けること」だということ、さらに、目指すのはレジリエンスがあり、同時に効果的な、自然を再生する仕組みであり、「拡大するには効率がいい」仕組みを目指すのではないこと、という3つの大きなサーキュラーエコノミーの誤解(misconceptions)を明らかにした。

第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン」では、エレン・マッカーサー財団のJoe Ilesとともにサーキュラーデザインを学んだ。「なぜオムレツをもとに戻せないのか」、なぜ(サーキュラーエコノミーにおいて)、すべてはデザインから始まるのか。利用者にとっての製品だけに注目するのではなく、仕組み全体をズームイン・ズームアウトすることで、生産や利用、その後の影響についても見わたしたデザインが必要なことを明らかにした。

第3回「循環するビジネスモデル」では、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルについて学んだ。ビジネスの産業的変革が求められていること、そして企業にとってサーキュラーエコノミーに移行するビジネス的メリットや、移行しないと消費者に選ばれなくなった現状を明らかにした。

第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー」では、サーキュラーエコノミーのフレームワークの有識者、ケン・ウェブスター氏と共にシステム思考と循環型の製品とサービス、そしてサーキュラーエコノミーを可能にする条件の3つをサンドウィッチに例えて考えた。効果的なシステムは効率的でレジリエントでなければならず、そのシステムを実現するのに必要なのは相互接続性と多様性だということが明らかにされた。

第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー」は、サーキュラーエコノミーを、プラスチックという特定の資源のマテリアルフローから、仕組み全体が同時に変わらなければいけないことを学んだ。エレン・マッカーサー財団のニュープラスチックエコノミーの取り組みから見る、世界を同時に巻き込むイニシアチブの重要性についても明らかにされた。

第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~」では、都市を建築・交通・食料システムのハブとして見るとき、政策と政策立案者がサーキュラーエコノミーへの移行おいて担う役割を学んだ。サーキュラーエコノミー実現のためには、政策立案者たちが主要なプレイヤーを巻き込み、ロードマップを描くことが重要になる。ここでいう政策とは、規制と法令以上のものであり、エンゲージメント・都市管理・経済インセンティブによる誘導など多岐にわたることが明らかにされた。

第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー」では、何度もより長く利用される服を作ること、さらに再利用可能な素材と安全な資源で服から服を作るデザインについて学んだ。非常に環境負荷・社会的負荷の高い既存の産業を脱却し、サーキュラーエコノミーへ移行する方法と実際に起きているうねりを確認した。

第8回「食のサーキュラーエコノミー」では、食は都市を介して生産から消費までがつながっていることを明らかにした。環境再生型の生産、地産地消、製造される食品の有機資源が生態系に還されることは、すべて食のサーキュラーエコノミー実現に重要な要素だ。健康的な食品の選択肢をデザインしたり、市場に投入したりする方法も合わせて見ていった。

第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール」では、企業のサーキュラーエコノミー達成度をいかに数値化して測定可能にすることで、実際にどこまで目標を達成できたか把握できる仕組みの重要性と、その方法について見ていった。

第10回「壮大な見取り図」は、エレン・マッカーサー財団のCEO アンドリュー・モーレーが財団の見据える先と、システム思考、そして彼自身がサーキュラーエコノミーに取り組む中で得た学びについて明かした。さらに、大企業のCEOたちがどのようにサーキュラーエコノミーを捉え、取り組むのかという視点は重要な学びとなった。

その後参加者に出された、サーキュラーエコノミーとは何かを30秒以内で説明するエレベーターピッチをショートムービーとして投稿しなさいというお題は非常に興味深いものだった。(6歳児に対してサーキュラーエコノミーとは何かを説明できればなおよし、というものだった)

第11回「再生する農業」は、活動家で再生型農業の第一線で活躍するハンター・ロビンス氏をゲストスピーカーに招き、すでに起こっている再生可能エネルギーへの移行と、環境再生型農業の大きな可能性、この変化は確実に起こるというポジティブな意見に耳を傾けた。

このプログラムからの大きな学びは、サーキュラーエコノミーを仕組みとして捉えなければ、本質的に理解し変化を起こすことはできないこと。そしてこの仕組みの役割、バリューチェーン上すべてのプレイヤーたちが連携する必要があるのではないだろうか。また、デザイン思考、特にアップストリーム・デザインがサーキュラーエコノミーへの移行では重要な鍵となること。再生型農業や再生型思考がサーキュラーエコノミーの完成には欠かせないこと。政府や政策立案者の役割の幅と重要性も非常に興味深いものだった。

そして最後に、エレン・マッカーサー財団創業メンバーのひとりで、取締役のJocelyn Bleriot氏(以下ジョス)が、サーキュラーエコノミーや気候変動の関連性、グローバル・アジェンダとしてのサーキュラーエコノミーについて語った。ジョスはこれまで10年にわたり欧州委員会らと直接サーキュラーエコノミー促進のための施策を協議してきた。この10年でサーキュラーエコノミーを取り巻く環境はどのように変わったのだろうか。また、新型コロナ危機の影響から「より良い復興」を目指すうえで、サーキュラーエコノミーはどのような役割を担うのだろうか

サーキュラーエコノミーに取り組んで10年、エレン・マッカーサー財団の現在地

 

こんなところまで来ることは、10年前に財団を立ち上げた当初想像もできませんでした。 

エレン・マッカーサー財団は、エレン・デイム・マッカーサー本人と、当時エレンの右腕として活躍していたKatie、初代CEOになったJamieと4人で立ち上げました。その後、ディレクターとしてケン・ウェブスターを迎えたことは、私たちにとって大きな転機となりました。理想はあるもののどのように進めていいかわからないでいたことを、ケンがフレームワークに落とし込んでくれたからです。思考と学びを、ひとつのフレームワークに落とし込むことはケンが得意とすることでした。エレンは信じたものを貫く力を持っており、ケンのフレームワーク化する力と合わせることで非常にパワフルな機動力を持ちました。それらを用いて創業2年で発表したサーキュラーエコノミーについての調査結果「Towards the Circular Economy Vol. 1: an economic and business rationale for an accelerated transition(サーキュラーエコノミーへ向けて Vol. 1: 移行を加速するための経済的・ビジネス的根拠)」は、サーキュラーエコノミーについて国際的な注目を集め、私たちをサーキュラーエコノミーといえばエレン・マッカーサー財団、という今の立ち位置まで持ち上げてくれました。私たちのサーキュラーエコノミーへの移行という大きな目標を世界に知らせる非常に重要な機会になったのです。

この10年でサーキュラーエコノミーを取り巻く環境は大きく変わりました。この間、サーキュラーエコノミーの概念は、今の時代という文脈にぴったりと合うようになりました。

世界に広がるサーキュラーエコノミー

私たちが創設した2010年当時、中国の政策担当者がサーキュラーエコノミーを2カ年計画の政策として取り入れることを明らかにしましたが、まだまだヨーロッパではそのような動きはありませんでした。しかし、その後間もなくヨーロッパでも原材料の価格変動が大きくなり先が見通しづらい状況の中、資源の枯渇化が深刻になってくると、ビジネスの現場は恐怖に陥りました。ヨーロッパは資源のない大陸で、外からの資源輸入に頼ってきたからです。

2011年には、例えば自動車産業で原材料の価格がたった一晩で50%も高騰する状況に直面しました。付加価値に対してではなく、効率の改善によって収入を得てきた産業にとっては非常に難しい局面でした。産業のサプライチェーン全体が波及効果で大きな打撃を受けました。資源が自由に得られないことに加え、ヨーロッパでは廃棄物を埋め立てるための土地が尽き始めたことが、プレイヤーたちをサーキュラーエコノミーへと大きく動かすことにつながりました。 

サーキュラーエコノミーは廃棄物管理がきっかけ、つまり、ダウンストリーム(資源の流れ)の最も下から始まったことになります。

サーキュラーエコノミーは、当時の欧州委員会が2012年にヨーロッパ資源効率プラットフォーム(European Resource Efficiency Platform)を立ち上げた頃から急速に前進します。私たちエレン・マッカーサー財団は、このプラットフォーム立ち上げに当たり専門家として呼ばれることになりました。この、エネルギー効率化のためのグループとともにヨーロッパで最初のサーキュラーエコノミーパッケージ(提案書)を作ったのです。2014年頃までには、多くの企業がサーキュラーエコノミーとは資源供給を確保するために重要な手段で、新たな収入源を生み出す事業構想だと認識するようになっていました。

その後、他の重要案件があるという理由で、2015年には欧州委がサーキュラーエコノミーに関するアジェンダを中止するか後回しにするとみられた時期がありました。しかし驚くべきことに、企業らが一丸となり、欧州委員会にサーキュラーエコノミーに関するアジェンダを守り、コミットすることを要求したのです。彼らが主張したのは、サーキュラーエコノミーは環境のためではなく、ビジネスの中核として重要だという点です。すでにサーキュラーエコノミーに投資したのだから、その後に続く結果が見えるまでコミットしてくれないと困る、というわけです。これが大きなターニングポイントとなり、結果EUはサーキュラーエコノミーに向けて大きく前進することとなりました。 

現在サーキュラーエコノミーの大きなハブとなっているのは、ヨーロッパと中国です。

世界の他の地域では、まだまだサーキュラーエコノミーは始まったばかりのところも多くあります。特に回収と分別のインフラが整っていない地域では、ヨーロッパの例と同様に、廃棄物管理上の課題に対応するためにサーキュラーエコノミーへと舵を切る傾向が見られます。これらの国がヨーロッパのような過ちを犯すことなく、今このタイミングでサーキュラーエコノミーへと向かうことが非常に重要です。なぜならば、一度大きな投資を入れてリニア型のインフラを作り上げてしまうと、そこからたった数年で方向転換をすることは、金銭的な意味でも人々のマインドセットという意味でも、不可能に近いものになってしまうからです。

しかし、世界は着実にサーキュラーエコノミーへと歩みを進めています。南米のチリでは政府が国を挙げたサーキュラーエコノミーのロードマップを策定しました。国連工業開発機関(UNIDO)は、非常に意欲的に国際開発におけるサーキュラーエコノミーの導入を進めています。ラテンアメリカ・カリブ海地域ではサーキュラーエコノミー共同体が動いており、アフリカでもサーキュラーエコノミーに向けた取り組みが多く行われています。

プラスチック、上流からの対策で根本的な原因を取り除く

東南アジアでは、特にプラスチックに特化した取り組みが目立ってきました。プラスチックが捨てられて生態系に影響を及ぼしていることが広く理解され、インフラが足りない中どのようにプラスチックの自然界への流出と生態系への影響を防げるかという議論になっています。ボランティアによるビーチクリーンアップやダウンストリーム(資源がごみになってから)の対策では埒が明かないことが広く理解されるようになったのです。 

サーキュラーエコノミー・パッケージの役割は、進むべき方向を明らかに示してくれることでしょう。単に廃棄物管理の話なのではなく、市場に悪い事象を引き起こさないようにするためには、もっとアップストリーム(上流)で対策を打ち、根本の原因を取り除くことが重要だと示す存在です。サーキュラーエコノミーを完成させるためには正しい資源を使っているのか。私たちが議論するサーキュラーエコノミーのビジネスモデルは素晴らしいが、そんなビジネスは本当に実現できているのか。支援が足りず実現にはまだほど遠いのか。こういった疑問を投げかけたうえで、本当に変化を起こしたいのであれば、その地域全域で資源の本質とそれを取り巻くリニア型の現状を理解することの重要性と、それらをどのように「repurpose(目的と利用方法の再定義)」するのかという指針を示さなければなりません。

ビジネス・アズ・ユージュアル(従来型のビジネス)の原則ではなく、どのようにサーキュラーエコノミーの原則に置き換えて考えていくのかーー。これを決めるのが、サーキュラーエコノミーのロードマップの役割です。

どんなサーキュラーエコノミーのロードマップも、読むだけで「私たちは従来型ビジネス(を変えること)に挑戦します」という強いメッセージが感じられるはずです。その決意表明こそがもっとも重要なポイントなのですから。この先数十年にわたるイノベーションに、国や地域を上げてコミットするというメッセージとなるからです。

気候変動とサーキュラーエコノミーとの大いなる関係性

従来の効率偏重型ビジネスにおけるサステナビリティとは、根本的に解釈が異なります。システム・リセット(リニア型経済を根本から変えること)の必要性は新型コロナのパンデミック以前から叫ばれてきましたが、今回のパンデミックによって状況はさらに切迫しているということがわかりました。建設的な議論を行い、どのように新しいサーキュラーエコノミーという仕組みを共創していけるのか、すぐにでも対話し行動に起こさなければいけない状況です。 

気候変動とサーキュラーエコノミーとが直接関係することを連想できない人もいるかもしれないので、シンプルな例を挙げましょう。

ひとつの製品をたったひとりではなく複数の利用者が使えるようにすることで、製品を作る個数とそれに必要となる原材料の需要を抑えることができます。採掘と輸送が減り、製品を作るためのエネルギーが減れば、それだけ気候変動の影響は緩和することができるはずです。すべてがつながっているのです。現在お互いに話したり情報交換をし合う関係性にないグループをつなげていく必要があるのは、すべてがつながっているからです。

かつて、気候変動は再生可能エネルギーとエネルギー効率だけの話でしたが、今は違います。私たちがモノを作り、消費する方法、例えば、現在の食の仕組みをサーキュラーエコノミーへと変えていかなければ、気候変動含めSDGsをひとつも達成することもできないはずです。エネルギーは仕組みを変える上で重要な要素のひとつであることは間違いありませんが、それ単体では仕組みを変え、気候変動の影響を減らすことはできないのです。国連の掲げるSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」とは、そのものがサーキュラーエコノミーへの移行という目標ともいえるでしょう。

2019年私たちが発表した調査結果では、再生可能エネルギーに移行しても気候変動による影響は55%しか解決せず、残りの45%は製品の製造と消費の仕組みをサーキュラーエコノミーに移行できるかという点にかかっていることが明らかになりました。

エレン・マッカーサー財団が2019年9月に発表したCompleting the Picture: How the Circular Economy Tackles Climate Change」より

採掘・製造・流通からなる産業モデルは、より多く売ることでより多くの収益を上げるビジネスモデルです。白物家電ひとつとっても、環境負荷の70%は採掘と製造の工程でかかることがわかっています。製品の寿命を延ばし、耐久性を上げること、修繕やカスタマイズ可能にする。こういった必要性があるというのは、製品自体を考え直し、作り変える必要があることを意味します。

オフィスの営業時間でさえも100%使われていない建物は、使われていない部屋がその時間だけ異なる目的で違う人が利用できるようにすることができます。そのために新たな建物を作る必要がなくなります。もし、この先10年ほどしか必要とされないと知りながらも建物を建てるのであれば、利用する資材が今後再度活用できるように追跡し、そもそもの設計も使い終わったら壊すのではなく分解できる仕様にする必要があります。資源がきちんと活用されるようになれば、もっと採掘する必要はなくなるのですから。 

現在私たちは国連と、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でサーキュラーエコノミーに特化したセッションが行われるよう協議しているところです。気候変動の影響を食い止めるため、各国が自国のコミットする目標を明らかにし、互いにそれを認め合う。これが気候変動緩和という結果を残せる必須条件だと私は考えています。しかし、まだCOPはサーキュラーエコノミーについてコミットを表明する影響力を持っておらず、非常にもったいないことだと感じています。

気候変動について議論すると、再生可能エネルギーに論点を限定してしまったり、二酸化炭素だけの話に絞ってしまうことはありますが、視野を広げて、全体として取り組むことが必要なのです。一部の人たちがすべてを変えようともがくよりも、仕組みを通してつながっているすべての人たちが、少しずつ自分たちの持ち場でできることを実践するほうが、ずっと早く的確に変革を進めることができるのですから。 

さらに、一部の人たちができることだけに絞っていては、結局のところ気候変動の問題を根本的に解決することはできません。すべての人、すべての機関が関わらなければリニアの仕組みは変わらないのです。経済自体を大きな生態系の一部と捉え、その根本から変えていかなければ、いくら気候の専門家たちが話し合っても変えられない領域だと考えています。

より良い復興にはサーキュラーエコノミーが欠かせない

フィナンシャル・タイムズ紙は2020年6月、新型コロナ危機から「元通り」にするのではなく、「より良い復興(build back better)」を目指さなければならないというグローバル企業や政府系団体の意見を掲載する記事を出しました。今までの経済のサプライチェーンは、私たちにいつでもどこでも、モノを早く効率的に届けてくれるシステムでした。しかし、パンデミックが起き、あっという間に物流が分断すると、その脆弱性は誰の目にも明らかになりました。

それでは、サーキュラーエコノミーのフレームワークを用いることで、どうして「より良い復興」につながるのでしょうか?

「効率的」だと考えられてきた仕組みが一瞬にしてバラバラになり、大きな代償を払うことに(そして今も払い続けています)なりましたが、例えば、近郊農業を拠点に作る食のサーキュラーエコノミーは、物流の分断に対する大きな対策になります。それだけではありません。こういった時代だからこそ、人々は自分や家族の口に入る食べ物がどこから来たか、どのように作られたのか知りたいと感じています。新型コロナウイルス感染症のような健康に関わる問題では、私たちの健康維持に必要なもの、特に食に意識が向かったのではないでしょうか。自然の生態系にどのような影響を及ぼすのか知りたいと感じた人は多かったはずです。

現在の食の生産・消費の仕組みがどこかおかしいことに気づいているからではないでしょうか。実際に現在の食の仕組みの結果、土壌は痩せ、石油由来の肥料を用いるため多くの採掘を行い、その結果として生産される食物は、品質に疑問の残るものです。長くは続けていけない方法だということはすでにわかっています。実際に現在の食の仕組みは、自然の仕組みを再生するというサーキュラーエコノミーの3つ目の原則を満たしていません。有機廃棄物は資源として捉えられるべきなのに、そうはなっていません。 

有機廃棄物の資源としての価値はきちんと理解されておらず、環境を汚染する方法で扱われています。分別と収集の重要性が認識されておらず、実施されることなくすべて廃棄物としてまとめられてしまっているためです。栄養のループを閉じ、循環するようにしなければなりません。都市で消費された後の有機廃棄物(=有機資源)は、土に還されなければならないのです。現在は生産の土地に戻されることなく、焼却処分もしくは埋め立てられ、環境に負荷をかけます。再生型農業を行うことで炭素は地中に戻され、その結果として気候変動の影響に歯止めをかけることにつながります。

また、新型コロナ危機の渦中、人工呼吸器が故障した際に自分たちでは直せないという課題には、3Dプリンターを用いて必要な部品を作り出す人が現れました。これも同じです。そもそも製造と利用の前提がリニア型であり、修理して使うことを想定していなかったことが、最も大きなそして根本的な課題です。自ら修理し、使い続けられる循環型モデルであれば、最初から課題にはならなかったはずです。

イギリスでは実際に、人工呼吸器の製造メーカーに圧力をかけ、修理マニュアルをオープンソースとして一般公開するよう求め、実際に公開されたケースがありました。同様に、イギリスで自動車工場が人工呼吸器に切り替えて生産を行う場面もありました。

今後新型コロナのパンデミックが収束した後でも、同様のイノベーションを他の産業にも広げていけば、世界的な危機が起きたとしても対応できるような、もっとダイナミックで適応力の高い社会経済システムを作れるはずです。

産業が規格を合わせるよう協議することで、例えばスマホの部品をプリンター複合機の部品として使うようなことが可能になるかもしれません。やるべきことは多くありますが、ようやくここまで来たのです。3Dプリンター・グリーンリカバリー・サーキュラーエコノミー・再生型アプローチが鍵になると欧州委が公言していることは、非常に大きな意味を持ちます。

「修理する権利」から見える良い兆し

2020年、欧州委は「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」の中で修理する権利を明記して、これを保証したことはとても良い意味で驚きでした。サーキュラーエコノミー実現の障壁となっていたのは、まさに修理できないことだったのですから。イギリスの農家が、多額のローンを組んで買ったトラクターが壊れ、資産を所有しているのにも関わらず利用できないという状況が起きていました。大型トラクターは一台50万ユーロ(約6,100万円)ほどで売られます。しかし、せっかく買ってもトラクターは多くの時間、駐車されたままです。シェアすることもなかなか難しい。ソフトウェアのライセンスなども関わると非常に複雑です。第4次産業革命による変化を、利用者をロックイン(閉じ込める)するために使うのではなく、自由に解き放つために使うべき時がきています。

環境変化について数値目標を掲げる時、例えばリサイクル率の向上というところに論点が行きがちですが、根本的な解決とイノベーションを求めるのならば他に考えるべきことがあります。

自由に活用する権利を取り戻すことで、人は社会の一員として認識され、尊重されていると感じます。リペアカフェなど、自分の持つ製品を自らが直すことができることを、とても嬉しく感じます。自分は経済の一部であり、自ら何かすることができると実感できるからです。こうするととたんに、経済とは大きな手の届かないものではなく、すべての人のものになります。あなた自身が実践しているのですから。例えば、一昔前では企業の後ろ盾がなければできなかったようなものを作ったり売ったりすることが、フリーランスの一個人でも可能になるような仕組みが増えています。こうなると、もうかつてのように社会のルールを一方的に決めてしまう存在としての経済ではありません。テクノロジーとマインドセットの変化はサーキュラーエコノミーを可能にし、社会と経済の関係性を適切に変えていくことができるはずです。サーキュラーエコノミーは、地域コミュニティの人々を結びつけ、自らのコミュニティに貢献できるようにしてくれます。さらに、自分で組み立てたり修理すると、その製品に愛着が湧き、簡単に捨てようと思わなくなるから不思議です(自分で組み立てると愛着が湧くことを、財団では「イケア効果」と言うこともあります)

ヒトが経済の一部になり、コミュニティに貢献する

サーキュラーエコノミーは、これから最も骨の折れる局面を迎えるでしょう。広く多くの人が賛同してくれているものの、ここからはスケールアップできるかという勝負になるからです。その概念を証明し、理解してもらうことはできましたが、実際に変化を起こせなければ机上の空論に終わってしまう。私たちが最も避けたいのは、世界中の企業が従来型のビジネスの片手間に、少しだけサーキュラーエコノミーの原則をまぶした事業をやっている、という状況です。

例えば、過去数ヶ月イギリスが再生可能エネルギー中心に動くようになったことはあまり誰の目に留まりませんが、25年前と比べてEUではポルトガル一国分と同じ面積の森林が生まれたことも同様にニュースにはなりません。もちろん、短期間で森林を作っただけでは豊かな生物多様性を生み出すことはできません。すべての破壊行為をなかったことにできるわけでもありません。しかし、こうやってひとつずつ積み重ねていけば向上させることができるのです。次にすべきことをデザインして、実行していくことが重要なのです。確実に仕組みの根本を変えるというコミットメントが、本質的な変化を起こします。一夜にしてすべて変えることはできませんが、私たちは再構築する仕組みに責任を持つ。こう考えるだけで変わることがあると信じています。

最後に、10週を通して司会進行を勤めたエレン・マッカーサー財団のイルマが、参加者へ向けたメッセージでプログラムを締めくくった。

「サーキュラーエコノミーへと移行するには、今後たくさんのものを作り変えていかなければなりません。それには、現在の『普通』に疑問を持ち、問いかけ続けていくことが重要なのではないでしょうか。実際に、こんなにも多くの人たちがサーキュラーエコノミーに取り組み、プログラムに参加してくれています。こんなにも多くの人たちが志を同じくすると知るほど心強いことはありません。私たちはきっと新しい仕組みを共創していけるはずです。

10週の学習プログラムを参加者の皆さんとともにし、改めて思うことは、サーキュラーエコノミーの完成とは、多様性抜きには語れないということです。参加してくれた方すべてに、それぞれの個性や得意なことがあるはずです。あなたの『niche(得意分野)』を見つけ、そこで力を発揮することこそがサーキュラーエコノミー実現に重要だと信じています。10週間お付き合いいただきありがとうございました。そして、今後も多くのサーキュラーエコノミーの対話が続いていくことを願います」

エレン・マッカーサー財団が10週間にわたって提供するオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」に参加し、そこで得た学びをレポートしました。

なお、2020年8月25日を初回として、今回の学びを読者の皆さまにお届けすべく、全7回にわたる連続オンラインセミナーを開催する予定です。詳細はCircular Economy Hub上で追ってご案内いたします。

全12回レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール
第10回「壮大な見取り図
第11回「再生する農業
第12回「サーキュラーエコノミーと気候変動、より良い復興のために

【参照レポート】Towards the Circular Economy Vol. 1: an economic and business rationale for an accelerated transition(サーキュラーエコノミーへ向けて Vol. 1: 移行を加速するための経済的・ビジネス的根拠)
【参照レポート】Completing the Picture: How the Circular Economy Tackles Climate Change
【参照サイト】European Resource Efficiency Platform
【参照サイト】フィナンシャルタイムズ
【関連記事】エレン・マッカーサー財団、サーキュラーエコノミーの無料オンライン学習プログラムを提供開始