本記事で紹介しているエレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular」の内容を基に、9月1日~11月24日にかけてCircular Economy Hub主催・全7回のオンライン学習プログラム「エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミーの全体像 ~ゲストセッション付き~」を開催いたします。本記事の内容を基にさらにサーキュラーエコノミーに関する知見を深めたいという方はぜひご参加ください。


Circular Economy Hubでは、サーキュラーエコノミー(以下CE)の実現を目指す国内外のさまざまな動きを発信している。そもそもサーキュラーエコノミーとはどのようなもので、実際の社会に適応されるとどのように機能するのかーー。サーキュラーエコノミーについて理解を深めるため、筆者はエレンマッカーサー財団が10週間にわたって提供するオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」に参加している。そこで得た学びを、毎週レポートする。

※本レポートは、エレン・マッカーサー財団に許可を得た上で、講義内容等を掲載しています。

これまでの講義レポートはこちら

第1回サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?

サーキュラーデザインを考えるための問い

第2回の今回は「Design for Circular Economy(サーキュラーエコノミーのためのデザイン)」。講義が始まる前に、事前に主催者側から質問が与えられた。サーキュラーエコノミーのためのデザインを考えるための4つの写真と質問だ。

資源の選択はサーキュラーデザイン戦略において重要な要素だ。

次の4枚の写真を見て、考えてみよう。

・どんな資源が使われているだろうか?
・使われているのは生物資源?それとも(自然に還せない)人工資源?
・どのように資源が組み合わせられているか?
・それぞれの資源は使われた後どこに行くのか?
・有毒性や汚染リスクは?
・使用されている資源や、資源の組み合わせは最適?もっと良い代替案は?

あなたはどう思うだろうか。次に紹介する講義の内容を読み進める前に、一度考えてみてほしい。

デザインとは「生産者の意思決定の集合体」

私たちを取り巻くすべてのものは誰かによりデザインされている。私たちが着ている服、暮らす家、食品が売られるスーパーマーケットなど、すべて。製品やサービス・仕組みは、誰かのニーズを満たすためにデザインされている。そして、デザインする過程で、必ず誰かにより重要な意思決定がされている。どのように製品が作られ、使われ、価値を失うことなく経済にとどまり続けるか、もしくは廃棄され海を汚染する存在になるか、という意思決定だ。そうした意思決定の集合としてのデザインは、その製品・サービスのみならず、取り巻く仕組みそのものをサーキュラー型に変えていくか、リニア型のままにするかを決定づけている。

それでは、サーキュラーデザインとは一体誰の仕事なのだろうか。デザイン事務所に勤務する人?なんとかデザイナーという肩書の人だろうか?いや、違う。答えは、すべての人だ。

エレン・マッカーサー財団で数年前に調査したところ、マテリアルフローについて意思決定をする立場にいる人は、2025年までに全世界で1億6000万人に上ることがわかった。これは全労働人口の5%にも上る。製品に使われる素材(資源)を決めるという、直接的な意思決定に関わる人だけでもこれだけいるわけだ。

それだけではない。その他の95%、いや、定義上労働人口に含まれない人たちも含め、この世界のすべての人たちはサーキュラーデザインに関わっている。デザインするということは、アイデアを形にする、コンセプトを実践に移すということ。これは、仕事でも学校でも家の中でも、すべての人が行っていることだ。

サーキュラーエコノミーのためのデザインとは?

「You can’t unscramble an omelet(オムレツを卵を混ぜる前の状態に戻すことはできない)」

今週のゲストスピーカーで、エレン・マッカーサー財団のサーキュラーデザインを担当するJoe Iles氏(以下、ジョー)は、一度デザインされてしまったら、巻き戻すことは難しいことをこのように表現した。

さまざまな資源が混ぜられて加工されると、製品としての役目を終えた後、それぞれの資源に分けて再度利用することは難しくなってしまう。結果、ごみや汚染となる。今日存在するほとんどのものはリニア型の考え方に基づいてデザインされているため、オムレツのように混ぜられ、資源に戻すことができない。「ごみ・汚染を出さない設計(デザイン)」はサーキュラーエコノミーの三原則のひとつだ。サーキュラーエコノミーに移行するためには、これらリニア型デザインで作られたすべてのものをサーキュラー仕様にデザインしなおす必要がある。

この写真は、ジョーが毎朝犬の散歩に行くときに撮りためている写真シリーズからの一枚だ。この写真から何が見えるだろうかーー。

使われなくなったさまざまな製品・資源が廃棄されている。赤い掃除機が笑顔でこちらを見ているように見える。製造メーカーによると、この掃除機は「長持ちする」ことが売りの製品だが、製品だけでなく、隣に廃棄されたパッケージも同じくらい長持ちしているようだ。しかし、パッケージがそこまで長持ちする必要はあるのだろうか?長持ちするということは、分解しづらく、ごみとして環境に負荷をかける可能性があるのではないだろうかーー。

このように、問いをいくつも考えてみることは、サーキュラーデザインにおいて重要な気づきをもたらせてくれる。サーキュラーエコノミーを実現するためには、このように問いを繰り返し、仕組み全体に及ぼす影響を考えながら作り直し続けることなのだ。

サーキュラーデザインの4つのステップ

サーキュラーデザインは4つのステップがある。

  1. 把握:製品を取り巻く利用者や仕組みの全体像を把握する
  2. 定義づけ:把握した全体像の中からあぶり出された課題と、作り手としての意図・目的を言葉にする
  3. 作る:アイデアを出し、デザインし、できるだけ多くの試作版を作って検証する
  4. リリース:デザインを世に送り出す。意図をストーリーとして伝えることで、顧客からロイヤリティを引き出し、製品に関係するすべてのステークホルダーを巻き込む

デザイン(設計)はステークホルダーと双方向に影響し合う過程であり、終わりはない。この社会は複雑に入り組んでおり、全体を把握したと思っても、気づかないところでポジティブそしてネガティブな副産物が生まれるからだ。したがって、1から4までを一方通行で行うのではなく、4までいったらまた1に戻り、繰り返す。

重要なふたつの視点「ズームイン」と「ズームアウト」

サーキュラーエコノミーのためにデザインするには、2つの視点を持つことが重要となる。それは、ズームインズームアウトだ。

ズームインとは、ユーザーに焦点を合わせた設計すること、すなわちユーザー中心の設計をすることだ。この点については、今日の社会でよく理解されているだろう。私たちを取り巻くすべての製品はユーザーの何らかのニーズや欲求を満たすためにデザインされている。しかし、ユーザーである私たち人間の欲求やニーズだけに着目し、製品を作り続けてきたことが問題だった。リニア型デザインにはズームアウトの視点が欠落していたため、多くの資源が廃棄され、汚染が急速に広がる結果につながってしまったのだ。

では、デザインに足りなかったズームアウトの視点とはどのようなものなのだろうか。ズームアウトとは、製品を取り巻く仕組みの全体像を俯瞰して見ることだ。ユーザーという一点だけを見つめるのではなく、製品の製造から利用、その後にいたるまですべてがつながっていることを理解したうえで、それぞれがどのように影響を与え合っているかを考え、デザインすることだ。選ぶ素材の寿命を考えたり、他の産業やステークホルダーと連携したり、意図しないポジティブあるいはネガティブな副産物がどこで発生しうるかを考えることは、すべてリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへと移行するのに必要な視点だ。

サーキュラーデザイン、6つの戦略

第1回で紹介した「サーキュラーエコノミーの三原則」ーーー1.ごみ・汚染を出さないための設計、2.製品と原材料を捨てずに使い続ける、3,自然の仕組みを再生するーーーは、すべてのサービスや製品をデザインするときの基盤になる。しかし、取るべきサーキュラーデザイン戦略はどうだろうか。ごみや汚染を出さない製品や、製品がずっと使い続けられるビジネスモデルには、正しい決まった型があるわけではない。サーキュラーデザイン戦略は、食・建築・パッケージ・輸送など分野や対象により大きく異なる。製品のパッケージは現在注目が集まっているトピックだが、それひとつとっても、ある魔法の解決策が決まっているわけではない。ごみにならないよう何度も使える耐久性の高い包装をデザインすべきかもしれないし、考えようによっては、使い終わったら消えてなくなり、環境を汚さない包装をデザインすべきかもしれない。サーキュラーエコノミーの原則に基づき、ズームアウトして仕組み全体を考えるとき、さまざまな異なるサーキュラーデザイン戦略を発想することができる。

次に、現存するサーキュラーデザインの事例から考える6つのサーキュラーデザイン戦略を紹介しよう。

CEデザイン戦略① 安全で循環する素材を選ぶ

何かを作るとき、どの素材を選べばいいのだろうか。すべての素材がサーキュラーエコノミーに適しているわけではない。素材によっては人や環境に危険な化学物質を含んでいたり、加工の過程で柔軟性や耐久性を高めるために添加物として混ぜられたりする。しかし、デザインによって有害な素材を組み込まないようにすることができる。安全で循環する素材を選ぶことによって、サーキュラーエコノミーに適した製品やサービスを作ることを可能にする戦略だ。

事例:海藻でできた食べられる袋「Ooho」

Image via Notpla

イギリスのスタートアップNotpla社は、海藻から食べられる袋「Ooho」を作る。この袋は食事をテイクアウトする際のソース入れやドレッシング入れとして利用したり、水を入れてペットボトルの代わりなどとして利用できる。袋は豊富な天然資源である海草から作られているため、自然食品とほぼ同じく4週間から6週間で生分解される。

(「Ooho」については、こちらの記事でも取り上げられている)

事例:石鹸でできたシャンプーボトル「SOAPBOTTLE」

© Jonna Breitenhuber

参加者が挙げた事例を紹介しよう。ドイツのプロダクトデザイナーJonna Breitenhuber氏が作ったのは石鹸でできたソープボトル「SOAPBOTTLE」だ。中身を使い終われば石鹸として使うことができ、使い終わったらなくなってしまうため、パッケージがごみになるという問題とは無縁だ。

CEデザイン戦略② 製品寿命を長くする

製品寿命を長くすることで、その製品が使い続けられるようにすることができる。物理的・時間とともに利用者のニーズが変わっていくことを理解したうえで、その変化に対応する、物理的・精神的に長持ちする製品をデザインする戦略だ。ダメージや劣化に耐えられる製品、使い続けたくなる気持ちにさせてくれる製品、もしくは人から人へと手渡されて使い続けられる製品は、すべてこのデザイン戦略に当てはまる。例えば、日本の伝統芸術の「金継ぎ」は、修繕することがさらなる価値を生む素晴らしい例である。

事例:Shoey Shoes

Image via Shoey Shoes

Shoey Shoesはハイクオリティの子ども靴を一定期間貸し出すサービスだ。創業者のトーマス・リーチ氏は「より多く」作ることに疑問を投げかけ、彼の作る靴の品質と耐久性を限りなく高めている。さらに、Shoey Shoesの靴は廃棄素材から作られており、分解することができ、再利用・リサイクルしやすいように設計されている。

CEデザイン戦略③ モジュール化する(部品ごとに分けられるようにする)

モジュラーデザインは、製品の修理・再製造・アップグレードを容易に行えるようにする戦略だ。製品の一部を簡単に取り外せるようにすることで、破損したときなどに簡単に分解し、安いコストでの交換を実現する。さらに、モジュール化した製品はカスタマイズしやすく、ユーザーのニーズに応じて変えていくことができるため、飽きたという理由で捨てられることを防ぎ、長い期間にわたって使われ続ける。

事例:Fairphone

Image via Fairphone

オランダのスタートアップFairphoneは人と環境に優しいスマートフォンを作る。リサイクル資源から作られているだけでなく、分解できるよう接着剤を使わない設計で、修理が容易なモジュール式を採用しているため、スクリーンなどが壊れても簡単に安く交換してもらえる。(「Fairphone」についての記事も合わせてご参照いただきたい

CEデザイン戦略④ 非物質化する

この戦略は、最小限の物質的資源でユーザーの求める価値を提供することだ。スポティファイネットフリックスなどのストリーミングサービスは、物理的なCDやDVDなどから利用者を解放する良い例だ。クオリティの高いサービスにアクセスさえできれば、所有する必要がなくなる。

事例:アプリと連動し包装を不要にした「MIWA」

Image via MIWA

チェコのスタートアップ「MIWA」はスーパーなどの食料品店向けに、容器いらずの量り売りのソリューションを提供する。購入するには自宅から缶や容器を持ってきて、必要な量を入れるだけだ。アプリでどの食材がどれだけ購入されたか自動で量り、計算・会計される。容器自体を不要にしてしまうデザインの良い事例と言えるだろう。

CEデザイン戦略⑤ 製品からサービスへ

サーキュラーエコノミーの中心には、所有することから利用する権利をもつことへとシフトするという考え方がある。たまにしか使わないのに、そのユーザーしか利用できないとなると、その資源は有効に使われずにいるということになるからだ。製品が必要なのがほんの短い時間だけなのであれば、使った後に返したり、他の人に使ってもらったりすればいい。レンタルやサブスクリプション・シェアリングなどのように、短期間製品を使えるようにするサービスはこの「製品からサービスへ」という戦略を取っている。

事例:デンマークのマタニティ服と子ども服ブランド「Vigga」

Image via Circos

オーガニックのマタニティ服と子ども服を一定期間貸し出すことで、時間・お金・資源を守るブランド「Vigga」。ファストファッションは膨大な量の廃棄を生むが、成長が早くすぐにサイズが合わなくなる子ども服や、数ヵ月しか着ないマタニティ服においても同じことがいえる。環境負荷が少ないだけでなく、本来ハイクオリティの服を利用したくても、利用期間に対してコストが高いため利用できない人にとっても利用機会が生まれる仕組みだ。

CEデザイン戦略⑥ 資源を「内側の円」に留めるデザイン

一度作られた製品が容易に資源に戻せるデザインは確かに素晴らしい。しかし、原材料にまで戻してしまうと、製品に加工する過程で費やされた多くの労働力やエネルギーが無駄になってしまう。資源に戻す段階に達するまでに、できる限り長く使い続けられるデザインを考えることが重要だ。サーキュラーエコノミーの「バタフライ・ダイアグラム」(第1回レポートを参照)では、「共有」「再利用」などが資源を取り巻く円の内側に描かれ、リサイクルは外側に描かれている。円の内側ほど価値がそのまま高く保たれ、外側の円に移るほど少しずつ価値が失われることを示しているのだ。資源を「内側の円」に留めることを優先するデザイン戦略は、いくつもの素晴らしいサーキュラー型ビジネスを生んでいる。

testエレン・マッカーサー財団 「バタフライ・ダイアグラム」

事例:循環型プラットフォーム「Loop」 

Image via Loop

米テラサイクルが始めた世界初の循環型ショッピングプラットフォーム「Loopは、従来使い捨てにされていた一般消費財や食品の容器を繰り返し利用可能な耐久性の高い素材に変え、使用後は消費者の自宅から容器を回収し、洗浄・補充したうえでリユースをするという新しい仕組みを提供する。再利用できる製品は、ちょっとふやけてしまう紙カップよりも、むしろアルミの容器は美しく、アイスクリームを冷たく保管するのに適している。(「Loop」についてはこちらのインタビュー記事も参照いただきたい)

2000人で議論した「素材から考えるサーキュラーデザイン」

冒頭で紹介した問いをもとに、パネリストと参加者らが議論を交わしたので紹介したい。

資源の選択はサーキュラーデザイン戦略において重要な要素だ。

冒頭紹介した上の4枚の写真を見て、考えてみよう。

・どんな資源が使われているだろうか?
・使われているのは生物資源?それとも(自然に還せない)人工資源?
・どのように資源が組み合わせられているか?
・それぞれの資源は使われた後どこに行くのか?
・有毒性や汚染リスクは?
・使用されている資源や、資源の組み合わせは最適?もっと良い代替案は?

下記に参加者から出された意見の一部を紹介する。

歯ブラシの写真

・昔の時代のように、歯磨きパウダーを使うのはどうだろうか。そうすればプラスチックチューブが不要になるし、輸送エネルギーも少なくてすむのではないか。

リュックの写真

・異なる素材が一緒に使われている。分解を難しくしているため、資源として再利用することを難しくしている。

・テキスタイルの世界では、人工資源と生物資源が入り混じって使われている。製品自体は人工資源だが、実際には生物資源のコットンや麻などが素材として使われている。人工資源と生物資源を取り外しやすいよう設計することで、修繕したり再度製品に作り変えることを容易にし、無限に循環し続けることを可能にするのではないか。

スマートフォン・PCの写真

・携帯電話の生産に使われる金の50%はそのまま廃棄される。携帯電話の回収システムは改善の余地がある。

・修理代が高いことを理由に、ユーザーがスマートフォンやPCを修理せず、そのまま新しい製品を購入する例が多くある。

食品テイクアウトサービスの写真

・食べられる素材のナイフやフォーク、皿を提供する

・新型コロナウイルス感染症対策の最中で非常に難しいトピックだ。店内に客を迎えられない国が多いなかで事業として継続するためにテイクアウトに切り替えるレストランが多いが、テイクアウトには現状として多くの使い捨て容器が使われる。

建物の写真

・大幅に軽くて強いグラフェンなどの素材がカーボンスチール製の鉄筋やパイプなどに取って代わるかもしれない。「プレハブ化」とモジュール化の技術が進歩することで、建物の常識は変わり、コンクリートのような環境破壊につながる素材が使われなくなり、工期が短縮されるだろう。

素材から考えることの大切さ

今回の問いでは素材に着目した。素材は、製品が仕組み全体にどのような影響を与えるか考える重要な出発点となるためだ。素材から考えると、意思決定が必要になる点が明確になる。例えば、次のような点だ。

・この製品の耐久性を上げるべきか、逆に分解されやすいようにすべきか

・価値のある資源に対して、(製造者として)所有権をもつのかもたないのか

・資源が価値を失わないようにするには何が必要か

このような点を洗い出したら、そこからどのようなビジネスモデルを適用すればいいか考えることができる。デザインを考えることはサーキュラーエコノミーの仕組みを思いつくための、とても良い入り口となる。

質問:100年ほど時間を巻き戻して、当時の様式に戻せばすべて解決するのではないのだろうか?

確かに、20世紀より前にデザインされたものの多くはサーキュラーなデザインが多い。その後の技術の発展により、多くのリニアなものが生み出されてしまった。しかし、生み出された理由を無視することはできない。例えば、いつもプラスチックは悪者扱いされるが、実際医療面や衛生面などでは多くの人命を救い、暮らしの安全性を高めてくれている。それは紛れもない事実だ。これをなかったことにして、すべてを昔の水準に戻すことはできない。しかし同時に、20世紀よりも前にデザインされたものにサーキュラーなヒントが多く残されていることも事実だ。だからこそ、今日の現状を理解したうえで過去にも学びながら、新しい利用の形を作っていくしかない。

質問:みんなで「丁寧な暮らし」を目指していけばいいのではないか?

歩きながら飲むから使い捨てのコーヒーカップが必要になる。カフェや家でゆっくり飲めば、使い捨てカップはそもそもいらない。家で酵母から育ててパンを作れば、美味しいし包装も必要ない。そんなに急がないで、多くを消費しないで、「丁寧に暮らし」ていくことは選択肢のひとつだ。しかし、世界には、物質的豊かさが当たり前ではない国が多くある。それらの国々では、中間所得層が今後爆発的に増えると予想されている。物質的に豊かな先進国に暮らす人たちが、これから物質的な豊かさを手に入れようとする人たちに、そんなに急がないで、多くを消費しないで、「丁寧に暮らそう」と働きかけることに、どれだけ説得力があるだろうか。ゆがみを解消するために消費者だけに消費行動を変えることを求めるのではなく、仕組みとして全体を変えていかなければいけない理由はそこにあるだろう。

質問:製造に大きなエネルギーを要するスチール製の水筒は、本当にペットボトルよりも良いと思うか?

・使い捨てでないデザインは非常に素晴らしいが、単に使い捨て素材を再利用できる素材に置き換えるだけで良いという単純なことではない。その製品が仕組みに与える影響をクリティカルに考える必要がある。スチール製の水筒は、確かにプラスチックごみが都度発生しないという利点はあるが、目的に対して耐久性がありすぎるかどうか考える必要がある。作るのにものすごいエネルギーと資源が必要となり、それはペットボトルを何本も、もしくは何十本、何百本も作るのに必要な資源・エネルギーに値するかもしれない。そのため、この一点だけを切り取ってどちらが正解ということができない。ズームイン・ズームアウトして、仕組みとして全体を考え、設計することが重要だ。

・マイタンブラーなどについても同様のことが言える。これらの製品にはよく「忘れちゃった」「なくしちゃった」問題が発生する。失くすとごみになってしまうし、忘れるとタンブラーを活用せずに結局使い捨てカップを使わなければいけない。いずれも、ズームイン・ズームアウトを行い設計することが大切だ。

エレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」第2回の今回はDesign for Circular Economy(サーキュラーエコノミーのためのデザイン)というテーマで行われた。第3回はCircular Business Models(循環するビジネスモデル)についてレポートする。

全12回レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール
第10回「壮大な見取り図
第11回「再生する農業
第12回「サーキュラーエコノミーと気候変動、より良い復興のために

【参照サイト】エレン・マッカーサー財団
【参照サイト】Notpla
【参照サイト】SOAPBOTTLE
【参照サイト】THOMAS LEECH
【参照サイト】A systemic approach to designing with resources
【参照サイト】Fairphone
【参照サイト】スポティファイ
【参照サイト】ネットフリックス

【参照サイト】MIWA
【参照サイト】Circos
【参照サイト】Loop
【関連記事】エレン・マッカーサー財団、サーキュラーエコノミーの無料オンライン学習プログラムを提供開始
【参照記事】Online circular economy programme launched
【参照記事】The Ellen MacArthur Foundation at Dezeen Day 2019
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本記事で紹介しているエレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular」の内容を基に、9月1日~11月24日にかけてCircular Economy Hub主催・全7回のオンライン学習プログラム「エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミーの全体像 ~ゲストセッション付き~」を開催いたします。本記事の内容を基にさらにサーキュラーエコノミーに関する知見を深めたいという方はぜひご参加ください。