本記事で紹介しているエレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular」の内容を基に、9月1日~11月24日にかけてCircular Economy Hub主催・全7回のオンライン学習プログラム「エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミーの全体像 ~ゲストセッション付き~」を開催いたします。本記事の内容を基にさらにサーキュラーエコノミーに関する知見を深めたいという方はぜひご参加ください。


Circular Economy Hubでは、サーキュラーエコノミーの実現を目指す国内外のさまざまな動きを発信している。そもそもサーキュラーエコノミーとはどのようなもので、実際の社会に適応されるとどのように機能するのかーー。サーキュラーエコノミーについて理解を深めるため、筆者はエレンマッカーサー財団が10週間にわたって提供するオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」に参加している。そこで得た学びを、毎週レポートする。

※本レポートは、エレン・マッカーサー財団に許可を得た上で、講義内容等を掲載したものです。

これまでの講義レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン

循環するビジネスモデルを考えるための問い

第3回の今回は「Circular Business Models(循環するビジネスモデル)」。講義が始まる前に、サーキュラーエコノミーを実現するためのビジネスモデルを考えられるよう、次のような問いが投げかけられた。

「あなたの考える循環型ビジネスを一文で表現しよう」

あなたはどう答えるだろうか。次に紹介する講義の内容を読み進める前に、一度考えてみてほしい。

目指すは完全に循環しつづけるビジネスモデル

今日にいたるまで、100%サーキュラーなビジネスモデルは存在したのだろうか。第1週と第2週で取り上げた事例に対して、参加者からは多くの質問が寄せられた。これまで紹介した事例は一見サーキュラーだが、突き詰めて考えるとサーキュラーではない箇所がある、という指摘だ。実際、2020年4月29日現在、100%サーキュラーなビジネスモデルというものは存在しない。なぜなら、私たちが今日おかれている経済という仕組みは、いまだほとんどがリニア型なのだから。しかし、希望はある。

リニアエコノミーという、壮大な仕組みを作ることができた私たちにとって、もうひとつ新しい仕組みを作れないわけがないのだ。技術的な制約があるものの、世界のデジタル化・新しいテクノロジー・新しい資源の開発は、半年や一年前には経済的に現実的ではなかったような新しいビジネスモデルを確実に切り拓いている。

大企業も次々とサーキュラー化に舵を切る

今、誰もが知るグローバル企業や大企業が次々とサーキュラービジネスモデルを採用し、実践し始めている。例えば、世界最大の家具ブランドIKEAは、地域ごと・世界規模それぞれの角度から革新的なサーキュラーモデルの事業を展開している。コカ・コーラ、ネスレ、ペプシコなどのグローバル企業も、着実にサーキュラーモデルへと歩みを進めている。

世界中でここまで成功した企業が、数十年から数百年かけて培ってきたやり方を一掃してでも循環型ビジネスモデルに切り替えようとする理由は何なのだろうか。環境的・社会的に良いインパクトを与えたいからだろうか。経済的なメリットを感じるからだろうか。

今週のゲストスピーカー、エレン・マッカーサー財団で大企業のサーキュラー化をサポートするJames George氏(以下、ジェームズ)によると、ビジネスモデルをサーキュラーに移行しようと戦略を考える企業のモチベーションの多くは、次の3つに分けられるという。

1つ目は、より良い世界をつくりたい。より良いやり方を見つけたい、という思いをもった会社。2つ目は、競合他社がやっているから、遅れを取りたくないという会社。3つ目は、このままではあと数年で会社として存続していけないことに気づいた会社だ。

仕組みを変えるには、大企業のサーキュラー化が必須

冒頭で挙げたコカ・コーラ、ネスレ、ペプシコなどの企業はこれまで大きな成功を収めてきた一方で、大規模なリニア型事業を展開することにより環境・社会問題を残してきた例に挙げられることも多い。例えば、コカコーラは年間300万トンものプラスチックを製造しており、世界中でプラスチックによる環境汚染がここまで大きな問題となっていることに大いに加担してしまっている。私たちが個人としてプラスチック問題解決を考えるとき、使用した後のプラスチックをリサイクルしたり、ビーチのごみ拾いをしたりすることなどが考えられるが、これらはあくまでも不要になりごみになってしまったあとの「ダウンストリーム」と表現される解決策だ。

しかし、もしもプラスチックごみ問題の重要な登場人物であるこれらの企業を巻き込み、製品が作られる仕組み自体を変えることができたなら、どれだけの変化がもたらされるだろうか。問題をもっと上流で捉え、資源の流れを変えることができれば、そもそも資源がごみに変えられて環境の中に放たれることはない。私たちがリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行を考えるとき、世界経済のエンジンとして機能する企業、特に大企業らを組み込むことは必要不可欠なのだ。言い換えれば、これらの企業はリニアエコノミーという問題の一部であり、その解決策であるサーキュラーエコノミーの一部でなければならないのだ。

利益を度外視しては動けない

循環型事業に、環境的、社会的価値があることは明らかになった。しかし、それがどんなに大きな意義をもっていたとしても、大企業は利益を度外視しては動けない。企業はサーキュラーエコノミーの財務要素、つまり、利益になるのかという点を無視することはできない。企業は今日の水準、リニア型の評価軸で測られているためだ。素晴らしいモチベーションでスタートする事業も、時間とともにきちんと収益化していけなければ続けることができない。

サーキュラーエコノミーへと移行できれば、ヨーロッパだけでも約138兆円もの利益を生み出せるとされている。これは大きなビジネスチャンスだが、実際に個々のビジネスにとって、どれほどの利益がどのようにもたらされるかについては、明確になっていないことも多い。この点が不明のままでは、事業の根底からの方向転換に踏み出すことができない企業が多いのも、ある種仕方がないといえる。

しかし、これもこの1年から1年半ほどで大きく変わっている。今日、ほぼすべての企業の事業戦略にサステナビリティとサーキュラーエコノミーは入っているのだ。企業によって優先度は異なるが、それでも戦略に入っているのだ。どう変わるかは明確でなくても、ほとんどの企業は何らかのアクションが必要だということには気づいた。これだけでも大きな前進と言える。

サーキュラービジネスモデルは利益になる

実は単純に利益だけを理由にしても、サーキュラービジネスモデルに移行するメリットは大きい。スマートフォン端末を例に挙げよう。

もしも私がアップルで働いていて、年間100台のiPhoneを作るとしよう。これを、回収し、分解し、次のiPhoneを作るという循環型ビジネスモデルで提供すれば、おそらくほとんどすべてのiPhoneが12ヶ月の間に手元に戻ってくる。みんな最新モデルが欲しくなるからだ。そこでiPhone専用の分解ロボットDaisyをフル稼働させて分解し、新しいモデルにして提供する。

ここで企業側にとっては、顧客を逃さないというメリットが生まれる。iPhoneを返却してもらい、次のモデルを渡すという双方向のコミュニケーションが生まれ、顧客は他社に流れにくくなる。また、製品を回収することで、製品に含まれる資源をも回収できる。iPhoneにはプラスチックやガラスだけでなく、リチウム・カドミウム・アルミニウムなどのレアメタルが含まれている。この資源を都度回収できれば、次に製造する製品の原材料のパイプラインを顧客から確保できることになる。つまり、顧客はここではサプライヤーでもあるのだ。

メリットはそれだけではない。採掘する場合と比べ、レアメタルの極端な価格変動や国同士の問題に影響されずに、安定的な資源の供給を確保することができる。しかも新たに採掘する場合と比べ、必要とされる人の手が少なく輸送距離も短いため、サーキュラービジネスモデルへと移行することは、企業にとって経済的にもリスクマネジメントという意味でも、理にかなっているのだ。

コラボレーションとコミュニケーション

サーキュラーエコノミーへの移行において大企業がサーキュラー化することは必要不可欠だ。しかし、大企業だけで成し遂げられるわけではない。政府や都市などの政策立案者が適切な状態に地ならしを行い、サーキュラーモデルの事業が芽吹き成長できる環境を作らなければならない。

サーキュラービジネス型のスタートアップ企業も重要だ。サーキュラーモデルの製品やサービスをグローバル、ローカル市場に持ち込む役割を担うからだ。異なるレベルの部署横断的なコラボレーションも必要だ。縦割りを解消するような枠組みや、業界内の企業同士、異なる産業同士のコラボレーションなどの多面的なアプローチが仕組みを変えていくためには鍵を握る。

社内コミュニケーションとガバナンスも重要だ。サーキュラーマネジャーやサステナビリティ担当者、CSR担当者など、サーキュラーエコノミー化を進めようとする立場の人はすでにサーキュラー思考をしていることが多い。社会的にも環境に対しても、企業として何を考えなければいけないかわかっている。

しかし、成功はその信条と知識をどのように企業内に広められるかにかかっている。CEO・CFO・マーケティング部長・プロジェクトマネージャー・販売員など、すべての人を巻き込まなければ事業のサーキュラー化は実現し得ないからだ。サステナビリティ担当者がひとりで考えるよりも、その持ち場のプロが、いかに自分の仕事をサーキュラーに変えていけるか考える手助けをするほうが効果的なのは明らかだ。社内のすべての人が「サーキュラービジネスへと変わることがなぜ重要か」を理解することは、会社全体を変えていくために大切だ。社員研修としてオンラインプログラムを用意し、社員や新しく入社するすべての人に受けてもらうようにするなどの施策も必要となる。

循環型ビジネスモデルの5つのパターン

サーキュラービジネスモデルは、経済を通して製品のあり方やマテリアルフローを変える。サーキュラー化することで採掘・利用・資源廃棄の回避またはそれらの頻度を下げることができ、環境負荷を減らすことができる。これらのビジネスモデルには、リサイクルや再利用、修繕など、昔から存在してきたものもある。家庭にある十分に活用されていないものを共有したり、製品を所有するのではなく借りることも、歴史を振り返れば数多く例がある。しかし、今日の循環型ビジネスモデルは、これまでになかったテクノロジーを使うことで多様化し、その産業の幅や完成度が格段に向上しているのも事実だ。今回は、循環型ビジネスモデルの代表的な5つのパターンをOECDの循環型ビジネスモデルから紹介しよう。

① 循環型供給(Circular Supply)モデル

製造に用いるのを従来型のバージン資源ではなく、生物由来、再生可能、回収可能な資源へと変えることで、原材料を安定的に確保し、調達にかかるコストを削減する。最初から廃棄物とごみのない設計をする。「ゆりかごからゆりかごへ」モデルだ。

第1回で取り上げた、サーキュラーファッションのTeemillはこのモデルの良い例だ。彼らは顧客をエンゲージする方法と、顧客にとって利便性の高い返却方法をよく理解して仕組みを作っている。古くなったTシャツを工場に返却することを促し、そうすれば最大5ポンドのクレジットが戻ってくるというインセンティブがあり、返却時の利便性も高い。顧客が同時にサプライヤーでもあるこのモデルを採用する企業は、その多くが顧客に仕組みや意義を教育する必要性を強く認識している。

Image via Teemill 

②資源回収(Resource Recovery)モデル

資源回収モデルは、これまで廃棄とみなされていたものを利用して製造を行う。他の製品の原材料へと作り変えることで、資源が廃棄されるのを防ぎ、同時に新たなバージン資源が採掘されるのを防ぐ。捨てなければいけないものを資源とした設計のビジネスモデルだ。これは自然の原理に忠実なモデルといえる。自然の中ではごみはない。すべてが循環する。

良い例にBritish Sugarが挙げられる。英国のノーフォークを拠点にしており、サトウキビを砂糖に加工する事業を営んでいる。その過程で出る、不要になっていた資源である二酸化炭素と水分を用いてトマトを栽培し、利益を上げることに成功した(今は医療用マリファナを栽培しているようだ)。第2回の講義で話したズームアウトの考え方が活かされている。製品を作る中で、最終的に製品としてできあがるもの以外に、資源やエネルギーはどこに流れていくかを理解し、活用されていないもの見つけ、そこに価値を見出しているからだ。

Image via British Sugar

③製品寿命延長 (Product Life-Extension)モデル

製品寿命延長モデルは、再利用することを想定し、製造時に耐久性を高める。使い続けるためメンテナンス・修繕を行い、修繕できない状態になったら再製造する。製品を使用できる期間を延長することで、資源採掘や廃棄を減らす。特徴としては、ユーザーが製品の所有権をもつが、製造元や他の製造者が修繕をすることで利益を得ることができる。

このモデルの良い例はパタゴニアだろう。中古市場を確立し、「新しい製品を買わないでください」とまで言えるほどに成功を収めた。「もしも壊れたら、修繕するお手伝いをします。もしも自分でできなければ、送ってくれたら私たちが直します」というのが彼らのメッセージだ。

Image via Patagonia

④シェアリングエコノミー(Sharing economy)型

シェアリングモデルは、十分に活用されていない製品が共有されるようテクノロジーを活用して促す。結果、新しい製品と資源採掘への需要を減らす。

良い例に、Peerbyがある。家庭にあるものの80%が1か月に1回も使われていない現状に目をつけ、ご近所から必要なものを借りられるようにした。近所同士で完結できることで、輸送にかかるエネルギーやコストも極力省く。

Image via Peerby 

⑤製品のサービス化(Product Service Systems)モデル

製品のサービス化モデルは、製品そのものを売るのではなく、サービスとして提供する。これまで構造的問題だった計画的陳腐化が行われる現状から脱却し、企業にとってより効果的な製品を開発することにメリットを見出すものだ。

良い事例に、空調のKaerが挙げられる。Kaerは、エアコンではなく空調整備された空間をサービスとして提供することで、建物内のエネルギー消費を最大7割減らせる空調サービスを提供している。Image via Kaer

循環するビジネスモデルは一企業だけでは機能しない

紹介した①〜⑤のビジネスモデルは大きく異なるようだが、実際には境目が曖昧だったり、いくつかのモデルの要素を合わせもつ事業もある。例えば、⑤製品のサービス化モデルは、メーカーが製品の所有権をもったままとすることで、修繕(③)や再製造(①)などの要素を合わせもつことも多い。また、ある企業が循環型ビジネスモデルを採用して活動を始めると、周りの企業がその事業に連動する循環型ビジネスモデルを用い始めるケースは多くみられる。

Image via Kalundborg Symbiosis 

デンマークの共生事業地域「Kalundborg Symbiosis(カルンボー・シンバイオシス)」はこの代表的な例だろう。コペンハーゲンより西の海岸部にある小さな都市カルンボーで、8つの異なる産業の企業間で廃棄物を再資源化し合い、資源やエネルギーを交換しながら共生する仕組みを取り入れる。45年以上も前の、サーキュラーという言葉で形容される前から続いている。この共生の仕組みは、「今週何か余ったらちょうだい!」などというような短絡的なつながりではなく、綿密な計画に基づいて設計されている。同じ地域に隣り合って並んでいる、という点も重要だ。物理的に近い距離に位置していなければ、資源を長い距離輸送しなければなくなってしまい、成り立たないからだ。

サーキュラービジネスの提供価値とは何か?

私たち人間は、自分が周りに与えられる影響を過大評価する傾向にあるという。社会学者ダニエル・カーネマン氏が著書「ファスト&スロー」の中で唱えた説だ。例えば、大手家具メーカーの家具開発のため協力を募りさまざまな人の意見を聞くと、彼らは必ずといっていいほど実際よりも大きく貢献したと考えるというものだ。この傾向は「環境に良い製品を選ぶ自分」にもいえるのではないだろうか。

消費者として私たちは、環境に良いからこの製品を買ったと考えたいのだが、実際には潜在意識の中で後から理由をつけてそういうことにしてしまっているのかもしれない。何かを買う時、私たちは咄嗟に「とても便利だな」「こういうのが欲しかった」「これくらいの値段なら買ってもいいか」などと判断している。それは、哲学的にどうなのか、といった思考よりもずっと早い。リニアエコノミーの中で企業各社がこれまで試行錯誤を重ね追求してきたこのバリュープロポジション(提供価値)は、サーキュラービジネスで顧客を獲得するうえでも同じように作用する。

中古品 VS エコな新品

先ほど紹介した①循環型供給モデル(資源供給を考え直し、再生可能資源・使用済み資源などから製造する)や④のシェアリングモデルの場合、企業は完全に循環するビジネスモデルを確立するために顧客をエンゲージしなければならない。それまでは消費者だった人たちが、突然サプライヤーにもなり、資源の供給元となるからだ。しかし、サーキュラービジネスというフックだけでは顧客を引き込むのが難しい、という声を多く聞く。人々のなかには使用済み、中古品への抵抗感が存在するためだ。

本来、この世で最も環境負荷が少なく「グリーン」なのは、すでに存在する製品を使いつづけることだ。でも多くの人のなかで使用済みの中古品=環境に良いという考えにいたらないため、中古品を選ぶよりも「エコロジカルな」、「サステナブルな」、「エシカルな」が売りの製品を新しく購入することを選ぶ。

つまり、循環するビジネスモデルを顧客の協力を得て成立させるためには、「エコな」こと以外の価値を提供し、一緒に動いてもらうことだ。多くの場合人を動かす大きな2つの要素は、その製品への愛着・精神的なつながりと利便性だ。

例えば、忙しい朝、私たちは仕事に行く途中で急いでいるなか、コーヒースタンドに立ち寄ってテイクアウトのコーヒーを買う。家にもっとエコなマイタンブラーがあるはずなのに、テイクアウトの紙カップのコーヒーをついつい買ってしまう。これは利便性のなせる技だ。また、製品への愛着や精神的つながりは、文化により異なるだろう。例えば、学校給食風のなつかしいコッペパンが日本では売れるかもしれないが、ロンドンのパン屋で同じものが売れるかといえば疑わしい。これは、文化によって異なる製品への精神的なつながり、愛着を持つがゆえ引き起こされることで、世界中の顧客に同じように働きかけられる訳ではない。1つの行動を促すためには、地域やアプローチしたいグループによっていくつもの異なるコミュニケーションが必要となる。

循環するビジネスモデルを一文で表現すると?

第3回の今回は「Circular Business Models(循環するビジネスモデル)」。講義が始まる前に、事前に主催者側から質問が与えられた。サーキュラーエコノミーのためのデザインを考えるために次の問いが投げかけられた。

「あなたの考える循環型ビジネスを一文で表現しよう」

この問いに対し興味深いコメントがいくつも寄せられた。その一部を紹介しよう。

循環型ビジネスとは:

・人工資源・生物資源の価値を保持することで、リニアエコノミーのリスクを回避するビジネスモデルだ。

・環境・社会・財務の価値を最大化し、企業と顧客との継続的なコミュニケーションを担保し、この惑星の(環境の)許容する幅の中での成長を実現する、多角的なバリュープロポジションだ。

今回、多くの人が“Creative Value”(価値の創造)というキーワードについて言及した。価値を創り出すことは間違いなくビジネスの本質だ。しかし、忘れてはいけないのは、今日価値とされるものは、そのほとんどが数百年の間に何度かの産業革命を経て形作られたリニアエコノミーにおいて価値とされてきたもので、この価値そのものが今後サーキュラーエコノミーにおいて再定義されることになるという点だ。その頃には、サーキュラーエコノミーさえも普通の「経済」とだけ呼ばれるようになっているはずだからだ。

また、ビジネスの視点でサーキュラーエコノミーをとても良く捉えた言葉があったので紹介したい。

「Why make and sell two products when you can make one and sell it twice?」(製品をひとつ作って2回売れるなら、2つ作って1回ずつ売る理由はない)

質問:企業の「成功指標」を再定義するのであれば、サーキュラーエコノミー時代の企業の成功を測る指標としてどんなものが用いられるべきか?

現在、世界的に企業の成功を格付けする「フォーチュン・グローバル500」や「フォーブス・グローバル2000」は、企業を株価などの指標に基づいて評価し、選出している。これはリニア型の評価指標だ。サーキュラー時代の企業の成功は、利益はもちろんのこと、どれだけプリコンペティティブなコラボレーション(市場で競争が始まる前の段階で、技術を共有し市場そのものの拡大を図ること)に貢献したか、コミュニティにおいての社会的意義、トリプルボトムラインの考え方などが統合された指標を作るべきだ。

また、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行期間においては、エネルギー削減やごみの埋め立て、二酸化炭素排出の削減量などを指標に取り込むことも効果的だろう。産業や国、地域、製品などによって必ずしも同じ指標でなければいけないわけではない。サーキュラーなビジネスモデルを評価するという意味では、この1年から1年半の間に劇的に変わったのは、投資基準かもしれない。投資家たちは石油や天然ガスを避け、明確なサステナビリティに関する目標を持ち、サーキュラー戦略があり、ビジネスモデルを循環型に切り替えた企業に熱視線を送っている。

質問:企業としてこれまでに環境問題に加担した過去があると、人々は信頼してくれないのではないか?

会社として、やり方はふたつある。1つ目は、まずはその会社の中で単発の1プロジェクトという形でもいいから、サーキュラービジネスモデルへ転換するための活動を人の目に触れる形で始めること。企業として、課題を課題として認識して解決に向けて動いているという明確な意思表示になる。それをひとつずつ増やしていくのだ。2つ目はガバナンスを利かせ、会社のオペレーションにきちんとサーキュラーモデルを根付かせることだ。これは外からは見えづらく、華やかではないが、ブレずに続けることで会社の本質となり、多くの顧客はこれに気づくだろう。

次週は「Circular Economy: A Wealth of Flows」著者のケン・ウェブスター氏が登場する。

ここでなぞなぞをひとつ。
「サーキュラーエコノミーはサンドイッチに似ている。パン二切れの間に何かが間に入っているからだ。パンの間に挟まっているのはなーんだ?」

エレンマッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」第3回の今回はCircular Business Modelsというテーマで行われた。第4回はNext Level Circular Economy(次の段階のサーキュラーエコノミー)についてレポートする。

全12回レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール
第10回「壮大な見取り図
第11回「再生する農業
第12回「サーキュラーエコノミーと気候変動、より良い復興のために


【参照サイト】エレン・マッカーサー財団
【参照サイト】Why the future of furniture is circular
【参照サイト】Apple、リサイクルプログラムを全世界で拡大
【参照サイト】Teemill
【参照サイト】British Sugar
【参照サイト】Patagonia
【参照サイト】Peerby
【参照サイト】Kaer
【参照サイト】Kalundborg Symbiosis
【参照サイト】The Circular Economy: A Wealth of Flows – 2nd Edition
【参考書籍】ファスト&スロー(上)(下) Kindle版 ダニエル カーネマン  (著), 村井 章子 (著, 翻訳)  
【参照レポート】OECD(経済協力開発機構):Business Models for the Circular Economy
【参考記事】
Coca-Cola Named The World’s Most Polluting Brand in Plastic Waste Audit
【参考記事】Coca-Cola admits it produces 3m tonnes of plastic packaging a year
【関連記事】エレン・マッカーサー財団、サーキュラーエコノミーの無料オンライン学習プログラムを提供開始


本記事で紹介しているエレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular」の内容を基に、9月1日~11月24日にかけてCircular Economy Hub主催・全7回のオンライン学習プログラム「エレン・マッカーサー財団から学ぶサーキュラーエコノミーの全体像 ~ゲストセッション付き~」を開催いたします。本記事の内容を基にさらにサーキュラーエコノミーに関する知見を深めたいという方はぜひご参加ください。