Circular Economy Hubでは、サーキュラーエコノミーの実現を目指す国内外のさまざまな動きを発信している。そもそもサーキュラーエコノミーとはどのようなもので、実際の社会に適応されるとどのように機能するのかーー。サーキュラーエコノミーについて理解を深めるため、筆者はエレン・マッカーサー財団が10週間にわたって提供するオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」に参加している。そこで得た学びを、毎週レポートする。

※本レポートは、エレン・マッカーサー財団に許可を得た上で、講義内容等を掲載したものです。

これまでの講義レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー

都市はサーキュラーエコノミーの重要拠点

都市は、世界経済において中心的な役割を担う。世界人口の半分が住み、さまざまな経済・文化・社会活動を展開する都市は、創造的でイノベーティブな成長の中心だ。都市は世界のGDPの85%を生み出し、世界の自然資源の75%が集まり消費される。

一方で、都市は世界の50%の廃棄を生み出し、60〜80%の温室効果ガスを排出する。つまり、採掘・生産・廃棄からなるリニアエコノミーの中心でもあるのが現状だ。サーキュラーエコノミーの原則を都市のまちづくりに用いることで、プラネタリー・バウンダリー(地球の仕組みを大きく損なわない範囲)の中で、市民に成熟した豊かさをもたらし、社会が長期的に繁栄していくことが求められる。都市は比較的狭い面積の土地に多くの資源・資本・データ・スキル・知識が集中しているため、サーキュラーエコノミーへの移行を促進する上で重要な拠点となる。

サーキュラーエコノミーに移行するためには、都市の計画・設計・財政から見直し、まちのあり方そのものを再定義する必要がある。それは、温室効果ガス排出を減らし、気候変動による影響に対応する持続可能な開発目標(SDGs)に沿ったものでなければならない。都市部がサーキュラー都市へと移行できれば、次の効果が期待される。

繁栄:サーキュラーエコノミー・渋滞緩和・廃棄ゼロ・コスト削減・新たな成長とビジネスチャンス・人々にとって新たなスキルを身につけ、雇用機会は増える。

住みやすさ:きれいな空気・汚染削減・社会的交流が豊かに。

レジリエンス:製品を使い続け、地元での生産とグローバルサプライチェーンとのバランスを取ることで、原材料への依存度を減らせる。

サーキュラーエコノミーは生き物を模した仕組みのようだと表現される。都市は人体に例えて考えてみるとわかりやすい。人体は循環器、呼吸器、消化器など、いくつもの部分組織からできている。健康な体はこれらの器官が他の器官とそれぞれ連動しながら効果的に機能する。それぞれの器官は独立していて、ダイナミックで、常に変化に対応し、適応している。体は、酸素や血液などの「資源」が駆け巡るから機能する。

都市も同じだ。健全な都市では、建設モビリティ製品とサービス食料などが「都市器官」として他の器官とそれぞれ連動しながら効果的に機能する。さらに、都市は資源・資本・知識・データ・エネルギーなどが駆け巡って機能する。都市をサーキュラーエコノミーに再構成していくためには、資源の健全な循環の仕組みが必要となる。

それぞれの都市機能がサーキュラーエコノミーの仕組みとして組み込まれるには、デザイン・サーキュラービジネスモデル・アクセス・デジタルテクノロジーの活用などが重要な鍵を握る。

循環する建設システムは、自然資源を「消費」ではなく「生産」する

2060年までに、世界中の建築物の総量は2倍に増えると予測されている。これは、毎月ニューヨーク市1つ分の建物を造る量に匹敵する。ナショナル・ジオグラフィックによると、世界の30%の温室効果ガス排出は都市での建設により発生している。これに加え、資源やスペースを非効率的に使ってしまえば大きな経済的損失をもたらし、人々が居住するための家が足りなくなる。具体的には、都市部に暮らす人の3分の1がまともな住居を得られないことになるのだ。

・10%〜15%の建築資材は建設中に無駄になり、廃棄される
・60%のオフィスビルは、営業時間中にも関わらず、使われていない
・50%の人々は活用できないほど広い住居に暮らしている
・20〜40%のエネルギーは、既存の建物で無駄に使われている
・54%の資材は、建物の解体後、焼却・埋立処分される

これは、ヨーロッパの平均的な都市の建設からくる廃棄の現状だ。

繁栄した、住みやすい、レジリエントな都市を作るには、これまでとは異なる思考と行動で建設を捉えることが必要だ。

建物がおもちゃのレゴのようにデザインできたら、と想像してみてほしい。容易に組み立てられ、解体でき、異なる部品や機能はそのまま取っておいてまた使うことができる。埋立処分など必要ない。柔軟でダイナミックな建物だ。

再利用可能な、有害物質を含まない資源を使うことで、建材の再利用・リサイクル性を高め、その役目を終えた後には自然に還すことができるようになる。つまり、新たな資源を育てるための栄養になる。このモデルでは、建物はエネルギーや自然資源を消費するのではなく生産する。水・栄養・資源・エネルギーのループを閉じ、完全に循環させることが可能になる。アメリカ・シアトルの「生きたビル」といわれる「ブリットセンター(Bullitt Center)」はその一例だ。

同じくアメリカ・シアトルに拠点を置く環境に優しい建築物を普及させるNGO「国際リビング・フューチャー協会(International Living Future Institute)によると、「”奪う(take)”のではなく”与える(give)”建物は、人と自然環境にポジティブな影響をもたらし、相互作用する」と、サーキュラー型建築について強調する。

この10年で未来型サーキュラー・モビリティへ移行

都市部では、その大きさと人口が爆発的に拡大し、モビリティの仕組みとインフラに負荷をかける。多くの先進国でこの50年ほどの間、自動車は主な移動手段として利用されてきた。自動車は非常に便利な反面、数々の課題を残してきた。自動車は生産に多くの資源を必要とし、充分に活用されず(90%以上の時間は駐車されているだけだ)、騒音問題と大気汚染を引き起こす。これらのマイナスの影響を抑え、「良いとこ取り」をすることなどできないのだろうか。

市民をアクセスの良い、手頃な価格の、使いやすい移動手段でつなぐには何ができるだろうか。循環型モビリティの仕組みには、複数の手段の組み合わせが必要だ。多くの都市はすでに複数の交通手段が利用できるようになっている。カーシェアリング・バス・トラム・電車・シェアサイクルなど。しかし、これらの移動手段がバラバラで機能するのではなく、連動する一体型のサービスとして利用できるようにすることが必要だ。アプリのような形態で、最適な移動手段をそのときに応じて提案し、案内してくれるようなサービスだ。フィンランドのヘルシンキなどでは、すでにこのようなサービスが利用できる。

ロンドンやモスクワなどの都市では、都市計画の中で最も効果的な移動手段として、ウォーキングやサイクリングなど、利用者が自ら動くアクティブ・モビリティを組み込んでいる。この移動手段は、環境負荷が少なく、低コストで、健康や経済的メリットが大きいことが特徴で、サーキュラーエコノミーのビジョンとうまく合致する。今後この考え方を採用する都市はさらに増えると予測される。

ニューヨークのタイムズスクエアでは、都市中心部を車の場所から人々の場所として市民に「返した」ところ、店舗の売り上げは急速に伸び、歩行者を巻き込んだ事故は半減した。

製造過程も重要だ。運転する人や動力となるエネルギーの種類に関わらず、車両の修理・再利用・再製造を可能にし、部品や資源をリサイクルできるサーキュラーデザインが必要だ。現実問題として、車両や部品を作るために多くのエネルギーが費やされている。このエネルギーを無駄にしないためにも、再利用は最優先事項となる。

自動車メーカーのルノーは、このサーキュラー車設計の非常に良い例だ。企業としてリサイクルの枠組みを確立しており、車が再利用できなくなると銅・スチール・テキスタイル・プラスチックなどの資源を取り出し、バージン資源と同様の機能を発揮する状態で、新しい車両に作り変える。現在、ヨーロッパで新たに生産されるルノー車両の36%はリサイクルされた資源から作られており、役目を終えた車の資源のうち85%はリサイクルされている。さらに、リサイクルの一歩先をいく取り組みも実践に移し、パリ郊外のショアジー=ル=ロアではエンジンと変速機を古い部品から再生産している。

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2019年2月に発表したモビリティに関する予測レポート「Mobility’s Second Great Inflection Point」のなかで、次のように述べている。

「2030年までに、私たちがモビリティをどう捉えるかという点において、100年前の“馬から自動車へ”の変化と同じくらいの変化が訪れる。しかも今回はずっと早く、多次元で訪れる。この変化の特徴は、ほんの少しではなく、大幅に良くなる、ということだ。市場概況は、電気自動車や自動運転車、相互接続された賢明な道路ネットワーク、新しいカスタマーインターフェースとサービス、テクノロジーの大手やスタートアップ、自動車メーカー大手が混在することで激変する。しかし、これは変化の一部にすぎない。費用対効果・利便性・体験・安全性・環境負荷が劇的に向上することで、これまでのビジネスモデルの多くが、これまでには想像できなかった規模で崩壊する」

下記は、予測されるモビリティの未来を表した図だ。(モビリティの未来については、マッキンゼーの記事が詳しく解説している。)

循環するフードシステムへ

これまでの食料の仕組みは激増する人口を支え、経済開発と都市化を支えてきた。しかし、この利益はある犠牲のものに成り立っていた。

・食料に1ドル支払うたびに、社会は2ドルの健康・環境・経済コストを払う。

・食料の仕組みの中で、資源はおそろしいほどリニア型の流れをたどる。生産され、消費され、不要になったものの大部分が廃棄される。不要になった食料や、消費された後の残渣物は、有機資源や堆肥として本来自然や栄養に還るのにも関わらず、実際に循環されるのは廃棄されるなかのたった2%にも満たない。

・世界で生産される食料のうち3分の1(約107兆円)は毎年廃棄され、一方では世界の1割の人は飢餓に苦しむ。

・化学肥料や農薬に依存する従来型の農業は、環境を汚染し、土壌を痩せたものにする。

フード(食料)システムにおいては、物理的に近い距離にすべてを置くことで、新しいビジネスモデルとイノベーションが生まれる。都市はテクノロジーを備え、高度なスキルをもった人々が密集するネットワークを有するため、イノベーションのための理想的な条件が整っている。また、市民・小売業・フードサービス提供者がすべて近接しているため、新しいビジネスモデルが実現する条件が揃っている。したがって、都市は食のサーキュラーエコノミーを完成する好都合な条件を備えているわけだ。

製品とサービスは所有からアクセスへ

消費者から利用者へ--。現代の経済で私たちは、膨大な数の製品に依存して暮らしている。これらの製品を作る技術は急速に進歩し、次から次へと新しいモデルを買い換えなければいけなくなる。スマートフォンはこの例に漏れない。しかし、私たちは新しいiPhoneが発売されればその素晴らしい機能に感嘆の声を上げるものの、そこに使われている資源についてはほとんど気にもとめない。しかし、考えてみてほしい。

・市などの自治体が出すごみのうち75%は捨てられた消費財で、そのうち80%は役目を終えた後の回収の仕組みが設計に組み込まれていないために、廃棄以外の選択肢がない。

・家庭にある製品のうち、80%は月1回も使われない。

・製品が環境に及ぼす影響は、設計段階で80%決まってしまう。

繁栄する都市では、サーキュラーエコノミーの原則に基づく製品やサービスに人々がアクセスすることになる。所有することは、重要ではなくなる。これらの製品やサービスを利用することで、人々は廃棄・汚染・健康被害・自然資源の枯渇などの心配がない状態で働き、創造し、コミュニケーションをとり、高い水準の生活を送ることができる。所有することではなくアクセスし、必要なときだけ利用することがこのモデルが機能する条件となる。

サーキュラーエコノミーの政策とは何?政策立案者は何をする人?

これらの都市機能を適切に配置し、サーキュラーエコノミーとして機能させるためには、政策立案者(ポリシーメイカー)を切り離しては考えられない。

サーキュラーエコノミーの文脈において、政策(ポリシー)とはその国やまちでサーキュラーエコノミーへ移行するためのロードマップ・戦略・実行計画・プログラムなどを指す。法律や規制など、制限する存在のように思われがちだが、実際にはそれ以上の、非常に多くのものを含む。

政策立案者とは、国家レベルの政府機関、自治体、国際機関などの立場から政策の策定・施行に携わる人たちのことを指す。国際的または地域的な政策、国家政策、さらに各自治体の政策は、層は異なれど、一貫性をもたせることで最大の効果を発揮する。

アメリカ・ドイツ・オーストラリア・メキシコなどの連邦制をとっている国は、それぞれの行政区分が小回りのきく政策を策定・施行する。中国のような中央集権型の政府は、国家レベルで統一した政策を策定・施行する。EUのような枠組みは、国境を超えた政策を作り、その地域内で強い実施力を発揮する。

サーキュラーエコノミーを実現するためには、政策立案者が方向性を示し、正しい環境へと整え、イノベーションと投資を呼び起こす役割を担う。レジ袋の有料化や公共の場の禁煙化などはわかりやすい例だ。政策立案者は人々の行動変容を促すことができる。

政策立案者の5つの役割

2019年5月にエレン・マッカーサー財団はレポートを発表し、政策立案者が担う5つの役割をまとめた。

①ビジョン:ロードマップを作る

ロードマップと戦略は、全体的な方向性を明確にする。サーキュラーエコノミー型の都市戦略とロードマップは、目標を明確に設定するために都市の方向性を示し、都市計画の基準や資源・廃棄物の分類や規制など、他の政策手段の開発において一貫性を持った指針となる。ロードマップの開発に都市のステークホルダーが参加することで、ロードマップの有効性を高め、都市全体で共有・共感されるものになる。

このとき、多くの異なるステークホルダーを巻き込むことが重要だ。大企業・中小企業・市民社会・高等教育機関など、幅広い立場の人が入ることで、より効果的で、住む人々にとってより良いものとなる。また、その際に示すビジョンには、都市のメタボリズム(新陳代謝)ツールが導入されるべきである。これは、都市内の資源・物質の流れを可視化するものだ。どこから着手すべきか優先順位を示し、何をもって施策の成功とするかを決め、測定することを可能にする。また、これにより公共調達のような他の施策と紐付けることが可能になる。ビジョンの策定は、先進的な他の国・他の都市のものをそのまま採用するのではなく、自都市の特徴に合わせたもの策定することが重要となる。

(例)オランダとアムステルダムのサーキュラーエコノミーに向けたロードマップ

国としてのオランダと、その国の都市としてのアムステルダムは非常に良い例だ。オランダが国として発表した2050年までの目標を、自都市の現状に照らし合わせて解釈し、アムステルダム市として2025年までの5年計画を策定し採用した。(日本語版の解説はこちら

②エンゲージメント

市などの行政は、業界を超えて多くのステークホルダーを巻き込み、エンゲージし、行動変容を促すといった特殊な役割を担う。これは都市のサーキュラーエコノミーを実現するための鍵だ。セクター間での理解・協力・実行が重要になるためだ。この手段として、招集と提携、認知向上、キャパシティ・ビルディングなどが用いられる。サーキュラーエコノミーのビジネスチャンスを広く認識させ、スキルや知識を強化する(中小企業向けのキャパシティ・ビルディングのプログラムや研修プログラムなどが考えられる)ことなどが具体的に考えられる。

さまざまな方法でステークホルダーを集め巻き込むことは、サーキュラーエコノミー型都市への指針に対して、共有意識を創り出したり、民間企業と協力することで規制上の障壁を事前に見つけて対応したり、他にはどのような政策が必要となるか理解したりするために重要だ。また、これにより共創やパートナーシップが生まれる可能性が高まるのもプラスの副産物となる。

(例)ニューヨーク市の#WearNextキャンペーン

ニューヨーク市は、使用済みの衣服の回収率を高めるために、民間企業と連携して#WearNextキャンペーンを行った。スマートマップ上で、どこで服を回収してもらえるか確認できる仕組みだ。使わない服はバス停など自宅のすぐ近くで引き取ってもらえるため、ごみ箱に入れないでほしいというキャンペーンだ。政府とビジネスが共同で、行動変容を促した良い事例だ。

③都市管理

都市は、都市開発や資産管理、公共購買おいても大きな影響力を持つ。例えば、まちに新しいエリアを作るとき、もしくは再設計するとき、アクセスとサービスを向上することで、資源がより容易にまちじゅうを循環しやすくなる。モノが修理・再利用・再生産できるようにしたり、循環するマテリアルフローになるよう計画したり、二酸化炭素排出量の少ない移動手段を選択したり、都市内・都市間をより良くつなぐためのモビリティを計画したり、モノのサービス化を促進することもできる。

また、都市開発・資産管理・公共調達はそれぞれも大きく影響し合う。土地をどのように活用するか決めると、その土地にある資産をどのように管理するかが影響を受け、サーキュラーな資源管理は公共調達の基準も影響を与え…という具合にだ。都市管理はそれ単体で完結するわけでなく、サーキュラーエコノミー戦略や政策に支えられ、共創とパートナーシップを生み出し、経済的インセンティブによりメリットを作りながら進められる。

OECD加盟国、つまり先進国の国々では、国家予算の12〜30%が公共調達に使われる。これだけの大きな予算で行われる「仕入れ」を、サーキュラーエコノミーの原則に基づいて行えば、非常に大きな力を用いてサーキュラー化を推し進められることを意味する。

例えば、市役所ビルなどの公共建築物やインフラを建設したり、改装するときにサーキュラーエコノミーの原則に基づいて進めれば、サーキュラーエコノミーへの移行を一気に加速させられる。サーキュラーエコノミーのビジネスが育ち、成長できるよう市場を刺激し、後押しすることが可能になるからだ。望む行動変容を促すために経済的インセンティブを使うのは、非常に有効である。

都市の所有する資産(車両・建物・ 駐車場・多様なインフラ・データ)などをサーキュラーエコノミーの機会を最大化するために活用することも重要だ。また、建築資材の交換を促すようなプロジェクトのつなぎ役として自治体が機能することもできるはずだ。

(例)スウェーデンの都市ウーメオー

スウェーデンの都市ウーメオーでは、政府が自らの所有する駐車場を活用することで、サーキュラー型モビリティのスタートアップが作るビジネスモデルの試験運用を行っている。デリバリーモデルやシェアモビリティなどのサービスはどこかに駐車しなければならず、好立地の場所で行おうとすれば高い駐車料金がかかる。これを政府が支援することで、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルが規模拡大するのを後押しする。

④経済的インセンティブによる誘導

都市自治体がサーキュラーエコノミーを推進するうえで行うことができる経済施策は、大きく分けて2つある。金融支援と財政措置だ。

金融支援は、サーキュラーエコノミーの研究開発などに直接資金提供したり、民間企業と合同でサーキュラーエコノミーのインキュベーターやCE投資プログラム、サーキュラー化のためのプロジェクトなどに投資することが考えられる。民間部門単体の場合はリスクを避けて行われない投資でも、公的資金を入れることでリスクが軽減できれば活性化することができる。

財政措置は税制や罰金などからなり、レジ袋の有料化などがわかりやすい例だ。この2つを必要に応じて使い分けることで、充分に活用されていない資源が活用されるよう、さらに有害な行動がされないよう、ビジネスを推進・抑止することができ、これによりサーキュラーエコノミーを促進することができる。

(例)深センのe-bus

深センでは、二酸化炭素排出量削減、汚染と騒音問題解決などを目的として、都市を走るすべてのバスを電気自動車に切り替えた。製造業者は再利用・修理・リサイクルからなるデザインに車両を再設計した。現在までに、16,000台のe-busが導入され、市内を走る。

⑤規制と法令(Regulation and Legislation

規制と法令は政府の役割の中核となり、市場を形づくり、行動変容を促し、前進するための障壁を取り除くために重要な役割を担う。規制と法令は混同されがちだが、規制はどうやってそこにたどり着くかということ、そして法令は目的地そのものを示す。この機能により、他の政策手段(都市計画のプロセスに影響するであろう住宅密集度や現実的な価格に保つ規制など)を強化し、支援することができる。規制や法令は、地方自治体や国と共同で策定されることが多い。

(例)テキサス州オースティン市の「中古建材交換プラットフォーム」

米国テキサス州オースティン市は、2040年までに廃棄をゼロにするという目標達成のためのプロジェクトのひとつとして、Austin Materials Marketplaceを立ち上げた。オンライン上で建材を交換できるプラットフォームで、サーキュラーエコノミーの原則に基づいて作られている。使い終わった建材を売ることができるため、地元企業にとってもコスト削減・新たな収入源の創出につながった。

コロナショックからの回復とサーキュラーエコノミー

今回は、都市という非常に大きなテーマに対し、さまざまな視点からの議論が交わされた。その一部を紹介したい。

質問:サーキュラーエコノミーのためには、国を超えた国際協定が重要になるか?

サーキュラーエコノミーを実現するにあたり、国際協定は間違いなく重要だ。まず前提として、廃棄は二次資源だと考えてほしい。これらを国境を超えて動かせるようにしたり、再利用・修理・再生産できるようにするには、何が廃棄物で、何がバージン資源で、何が二次資源か定義する必要がある。市と市、国と国をまたぐとき、政策が適用されていないケースが多いため、効果的に進めることの障壁になっている。この点において、EUはサーキュラー施策を推進するための体制を整えつつある、効果的な組織といえる。

しかし、国際協定以上に今重要なのは対話なのではないだろうか。地域間や国家間でのより良い対話は、世界全体でサーキュラーエコノミーに向けどのように進んでいくべきか、どのような手法を取っていくべきか、障壁になっているものは何かを明らかにし、この対話においてのみ解決策にたどり着けるはずだからだ。特に、サーキュラーエコノミーに向けて大きく進んだ国と、まだ歩みを始めたばかりの国が共に効果的に歩みを進めていくためにも、対話が重要となる。

質問:政府が高等教育機関とビジネスを巻き込むことも、サーキュラービジネスへの移行において重要なのではないか?

政府と大学のパートナーシップは非常に有効だ。研究を進めるうえで高等教育機関が重要となり、政府の後押しがあればこれがさらに加速する。また、大学キャンパスはビジネスのパイロット版を試験運用をするのに非常に適している。学習のために人が毎日訪れ、飲食サービスが提供され、学生寮には人が暮らしており、いわば小さな町のようだ。特にオランダではサーキュラービジネスの実証実験が大学で活発に行われている。また、最近ではアリゾナ州フェニックス市とアリゾナ州立大学が共同で、廃棄から生みだすサーキュラーエコノミービジネスの実証実験をスタートしたという。キャンパスでは市場調査という意味でも有効だ。

質問:これまでに挙げたサーキュラーエコノミー都市の事例は、なぜ北半球に偏っているのか?

多くの場合、アフリカ・中南米・アジアなどの途上国では(もちろん一部の豊かな都市や富裕層は除く)、サーキュラーエコノミーは日常生活の一部だ。スマホや冷蔵庫などを修繕して使うのは当たり前のこととして行われる。新しいものを買う金銭的・物質的余裕がないため、修繕は生活の一部となっている。しかし、南半球の国にはサーキュラーエコノミーの実践者は多くいるものの、サーキュラーエコノミーという言葉を用いることをしていない。そして、これらの活動の多くは非公式経済の一部で、組織化されていない。組織化すべきか否か、という議論もなされるべきであるし、それ以上に、政府としてどのような政策を用いれば、(リニア型に成長せずに)このサーキュラーエコノミーの活動が続けられるのか、向き合う必要がある。

南半球の事例として、活用されていない資源を利用するブラジルのベロオリゾンテ市の取り組みが素晴らしい。ベロオリゾンテ市は、企業に壊れたIT機器を提供するよう依頼。同時に修理センターを作った。若い人にどうやってIT機材を直すか教育し、直った機材をコミュニティセンターに送る。こうすることで、お金のないコミュニティにもテクノロジーが行き届き、いわばデジタルインクルージョンの素晴らしい施策としても機能している。

質問:コロナショックからの社会的・経済的回復において、都市はどのような役割を持つか?

コロナショックが落ち着いたころ、ショック以前と比較して行動変容がどうなるか現時点ではわからない(一時的なものも多くあるかもしれない、もしくは反動もあるかもしれない)ため、断言できることは多くない。しかし、サーキュラーエコノミーが環境と健康に恩恵をもたらすことは明確だ。よって、都市は今回の危機から復興するための労力・予算を、レジリエントでサーキュラーな都市を作るために使うべきだ。

コロナショックからの復活を目指す今、いまだかつてないほどにサーキュラーエコノミーが必要とされている。今回の事態は、今日のグローバルサプライチェーンの脆さを露呈し、それによって私たちの生活がどこまで大きな影響を受けてしまうかを明らかにした。食料生産において特にこれは顕著だ。現在、多くの国が経済的打撃から回復するために、巨額の経済復興策を打ち出している。経済を回すためにお金を出す際に、何を推進するためにお金を出すのかが改めて国・都市には問われているといえる。化石燃料にお金を払うのか、サーキュラービジネスに投資を優先するのか、という判断が問われているのだ。

例えば、ブリュッセルはすでにグリーンリカバリーの施策として自転車専用道路を広げ、サイクリングを移動手段として重要視していきたい考えを明らかにし、他のヨーロッパの都市も同様の動きを見せている。また、今回、フードサプライチェーンの脆さがわかったことで、よりレジリエントなサプライチェーンへと作り変えていくことが重要だということもわかった。大規模で再生可能な近郊農業は、この解決策になりうる。都市型農業だけではすべての食料を賄えないが、大規模な近郊農業は都市に必要な食料を供給することを可能にする。近郊農業とアグリテックを組み合わせることで、農業や食のサプライチェーンにおいて資源投資を減らすことを可能にする。

エレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」第6回の今回は都市というテーマで行われた。次回は、ファッションについてレポートする。

これまでのレポート

第1回:「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #1
第2回:「サーキュラーエコノミーのためのデザイン」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #2
第3回:「循環するビジネスモデル」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #3
第4回:「次の段階のサーキュラーエコノミー」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #4
第5回:「プラスチックのサーキュラーエコノミー」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #5

【参照サイト】エレン・マッカーサー財団
【参考サイト】SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS KNOWLEDGE PLATFORM
【参考サイト】ブリットセンター(Bullitt Center)
【参考サイト】国際リビング・フューチャー協会(International Living Future Institute)
【参考動画】Re-thinking Progress: The Circular Economy
【参考記事】Green Buildings Could Save Our Cities
【参考記事】This New “Mobility Service” App Will Help Helsinki Ditch Car Ownership
【参考記事】The Circular Economy Applied to the Automotive Industry
【参考記事】Reimagining mobility: A CEO’s guide
【参考記事】Ellen MacArthur Foundation Case Study: City of Amsterdam
【参考記事】City and industry in collaboration to save clothes from landfill
【参考記事】Ellen MacArthur Foundation Case Study: Shenzhen
【参考記事】Ellen MacArthur Foundation Case Study: Austin
【参考記事】Ellen MacArthur Foundation Case Study: BELO HORIZONTE
【参考レポート】Mobility’s Second Great Inflection Point
【参考レポート】CITY GOVERNMENTS AND THEIR ROLE IN ENABLING A CIRCULAR ECONOMY TRANSITION
【参考レポート】The Circular Economy in Umeå, Sweden
【関連記事】エレン・マッカーサー財団、サーキュラーエコノミーの無料オンライン学習プログラムを提供開始
【関連記事】アムステルダム市が公表した「サーキュラーエコノミー2020-2025戦略」の要点とは?