Circular Economy Hubでは、サーキュラーエコノミーの実現を目指す国内外のさまざまな動きを発信している。そもそもサーキュラーエコノミーとはどのようなもので、実際の社会に適応されるとどのように機能するのかーー。サーキュラーエコノミーについて理解を深めるため、筆者はエレン・マッカーサー財団が10週間にわたって提供するオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」に参加している。そこで得た学びを、毎回レポートする。

※本レポートは、エレン・マッカーサー財団に許可を得た上で、講義内容等を掲載したものです。

これまでの講義レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール

国際物流か地産地消か?

今回の講義の前に、参加者へ次の問いが投げかけられた。

あなたの考えは次の意見のどちらに近いですか?なぜそう思うのか、理由を考えてみましょう。

  1. 人類は環境負荷がずっと少ない国際物流を再設計することができる。
  2. 本質的な解決策は製造をその地域の中で行い、輸送の必要性を排除することにあると思う。

あなたはどう思うだろうか。読み進める前に一度考えてほしい。

世界のトップ経営コンサルがサーキュラーエコノミーに目覚めた理由

「ある時、たまたま自宅の地下室でテレビを見ていた時のことでした。ヴァンデ・グローブという単独無寄港無補給の世界一周ヨットレースが生中継されていました。私もセーリングをするので、世界で最も過酷なこのレースの行方が気になっていました。その時のことを今でも良く覚えています。荒れ狂う海の中、ある女性が、セーリング界では名前もまだあまり知られていないような経歴もない女性が、勝ってしまいそうだったのです。(結果彼女は世界2位でしたが、その数年後の2005年、世界記録を更新しています。)しかもさらに驚いたことに、その女性はそれより数年前、セーリングを通して私も個人的に会ったことがあるデイム・エレン・マッカーサー氏だったのです」

そう話すのは、エレン・マッカーサー財団のCEO、Andrew Morlet氏(以下、アンドリュー氏)だ。アンドリュー氏はマッキンゼー・アンド・カンパニーのプリンシパルとして米国・欧州・アジアで企業の経営コンサルティングを行った後、2008年にコンサルティング会社アクセンチュアに移ってIT戦略室長を務め、その後2012年よりエレン・マッカーサー財団の一員となり、2014年よりCEOを務めている。

「それから数年がたち、彼女のことがふと頭をよぎりました。どうしているだろうかと思い調べてみると、その後エレン・マッカーサー財団という財団を始め、サーキュラーエコノミーの完成に向けて取り組んでいることがわかりました」

(TED「私が世界一周単独航海で学んだ意外なこと」をご確認いただきたい。動画では、エレン・マッカーサー氏がセーリングで世界一周を志し、その経験からサーキュラーエコノミーを目指すようになるまでが話されている)

「それまで私は27年ほど経営コンサルタントとして働いていました。どのように企業の経営を”成功”させるか、というのが私の仕事でした。しかし、彼女の掲げるサーキュラーエコノミーというコンセプトはただただ衝撃的でした。今まで私の信じていた”成功”とは全く異なるコンセプト、異なるビジョンだったのです。私はあっという間に魅了され、取り憑かれたように考え続けました。

今から50〜60年も前の60・70年代頃から自然破壊の問題は指摘されていました。自然が汚染され、失われていることは広く知られていました。皆こんな仕組みはおかしいと言いながらも、同じ仕組みの中でだましだましやることしかできていなかった。根本的な解決はもはやできないことように思われました。私自身、個人的には環境保護やサステナビリティにずっと関心はあったものの、何の行動も起こせないままいました。

このサーキュラーエコノミーというコンセプトに出会った時、ピンときました。『電球がつく瞬間』とはこのことだ、と感じられるほど、すべてがひとつにつながり、理解できました。経済を成長させるために私たちは努力してきましたが、人口が増えることで消費が激増することはわかっていました。この仕組みは、もう「だます」にもだませないところまできていたのです。実態を見抜いたサーキュラーエコノミーというコンセプトは非常にしっくりくるものでした。自然資本を生み出し、長期的に機能するという仕組みの構想はとても魅力的でした。しかも、エレン・マッカーサー財団はちょうどその頃、ビジネスプログラムの事業を率いる人を探していたのです。すぐにエレンに連絡し、正式に財団に加わることになりました。2012年のことでした」

野心的な目標に世界のCEOが賛同する理由

エレン・マッカーサー財団創設者、デイム・エレン・マッカーサー氏

エレン・マッカーサー財団は、経済という大きなシステムを変え、サーキュラーエコノミーを完成させるという大きな目標を掲げる。この目標を前に、自信がなくなったり、無理だと思ったりすることはないのだろうか。アンドリュー氏は次のように話す。

「エレンと私で一緒に企業を訪問し、打ち合わせを行うことがあります。企業の重役たちが並ぶ会議室で、彼女は決まってこう言います。『私たちは世界経済を変える必要があります』と。今でもこの言葉を聞くたび、目の前がクラクラします。それくらい法外なことをやろうとしているのです。しかし、正しい道だという自信が揺らぐことはありません。

この15〜20年間で、経済はナショナルエコノミー(国民経済)からグローバルエコノミー(グローバル経済)へと移行しました。グローバル市場は大きく開かれ、世界にまたがるグローバルサプライチェーンが張り巡らされ、世界中で中間所得者層が激増し、日々目まぐるしいスピードでデジタル技術が生み出されている。

私は実際に、環境問題や社会課題を解決すると同時に、サーキュラーエコノミーを完成させることは可能だと考えています。今、この時代には、サプライチェーンやマテリアルサイエンス(材料工学)を設計しなおし、リニアの概念に基づく「効率型」から、環境再生型で自然を回復させ資源循環させ続ける、サーキュラーエコノミーへの移行が可能な条件が整いつつあるからです。私たちエレン・マッカーサー財団は、アプローチ・ツール・デジタル技術・ネットワーク(人脈)をひとつにして、人々と企業がひとつになれる場を創り、システムに変化を起こし始めています。革新的な企業・政府・都市・異なる業種を束ね、解決策を提供することで、バリューチェーン、エコシステムを変えていくのです。

例えばプラスチック。一度作られたプラスチックが失われることなく経済を循環し続けるようにするには、ポリマー製造企業だけに働きかけるのでは足りません。その仕組みを取り巻くすべてのプレイヤーやブランド、都市、サプライチェーン上のすべての人を巻き込む必要があります。また、企業を動かすにはCEOや企業戦略に深く精通し、企業方針の決定権をもつ人たちを巻き込む必要がありました。

もともとエレン・マッカーサー財団の活動の基盤となったのは、エレンがセーリングのキャリアを通して関係性があった、かつてのスポンサー企業のCEOのネットワークでした。そのCEOらにサーキュラーエコノミーの概念を証明するため、早い段階で世界的な経営コンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーを巻き込みました。マッキンゼーにはこれまで数々の企業経営を成功に導いてきた信頼がある。彼らがサーキュラーエコノミーの成功を信じ、共に歩んでくれることで、世界の多くの企業経営者や政府などに経済的なチャンスを示すことができました。ここまでくると、興味をもって共にサーキュラーエコノミー完成を目指す企業が飛躍的に増えていきました。

私がエレン・マッカーサー財団を率いることになってから一貫して目指してきたことは、サーキュラーエコノミーを拡大し、ビジネスのメインストリーム(主流)にすることです。仕組みを変えるには、一部の人たちだけではなく、多数派を動かさなければいけない。実際にサーキュラーエコノミーは大きなビジネスチャンスで、環境・社会に対しても大きなメリットをもたらします。複雑に絡み合う問題を解決し、サーキュラーエコノミーへ移行するには、人々と対話する以外の方法がないことを見せていく必要性があります」

中国のサーキュラーエコノミーがおもしろい

「このプログラムの中で、私たちの活動や企業パートナーがヨーロッパに集中しているというコメントがありました。もちろん私たちは小さな組織で、ヨーロッパに位置しているため、ヨーロッパ企業をより多く巻き込むことに成功しているかもしれません。しかし、実は中国にも10名ほどのオフィスを構えて活動しています。

あまり知られていないかもしれませんが、中国のサーキュラーエコノミーを取り巻く環境は非常に興味深い。エレン・マッカーサー財団では、2016年に中国のサーキュラーエコノミーについての調査をして報告書にまとめたことがありました。中国はたった10年ほどの間に、産業エコロジーの分野のリーダーとして、集権的計画を駆使して産業共生をつくり、企業間の資源循環を可能にしてきました。資源の安定的な供給に陰りが見えていることを早くから察知し、鉄鋼などの資源には限りがあり、まもなく尽きてしまうことを認識していました。再製造や再利用の仕組み、二次資源市場の確立、シェアリングエコノミーの一般化、環境再生型農業への移行など、アプローチが遅い領域もありましたが、今ではサーキュラーエコノミーの特定の分野では世界を牽引するリーダーです。世界最大のEコマース・エコノミーとして、すばらしいイノベーションが数多く生まれている。今後、サーキュラーエコノミーにおいてもその影響力は拡大していくでしょう。

ヨーロッパ以外の地域という意味では、アフリカでは食のサーキュラーエコノミーについてのプロジェクトが進行しています。また、情報をスペイン語・フランス語・ポルトガル語・中国語などの複数言語対応にすることで、より多くの人がアクセスできるようにしています」

垂直型イノベーションだけではスケールしない

「ある時、12社ほどのCEOと共に資源を何種類か選び、サーキュラーエコノミーを達成するにはどこでどのような変化が必要になるかシミュレーションしてみることにしました。その資源の一つがプラスチックです。1社1社は大きな企業でしたが、それでも世界で製造されるプラスチックのたった2%しか製造していませんでした。それだけでは構造的変化は起こせないことがわかりました。サプライチェーンに関わるすべての人たちを変え、プラスチックを製造する企業が一丸になってシステムを変えていかなければなりません。さらに、資源のたどる道の透明性が重要であることがわかりました。それに、マテリアルフローを理解するための指標、どこでイノベーションが重要となるかなどが明らかになったのです。

そこで、ひとつ非常に興味深かったのは、サーキュラーエコノミーに移行するために必要なのは垂直型イノベーション(vertical innovation)ではなく、システム的イノベーションだということが明らかになったことです。垂直型イノベーションとは、バリューチェーン上の異なる人がそれぞれ自分たちの担当分野だけで起こそうとするイノベーションを意味します。リサイクルにおけるイノベーションや、プラスチックの環境負荷を減らすためのイノベーションに取り組むことももちろん重要だとは思います。ただ、これら単体ではスケールしないのです。もちろんそれではシステム全体を変えることもできません。

具体的な例を挙げましょう。複数の企業が、素晴らしいスピードでプラスチック容器にイノベーションを起こしていました。しかし、自治体の管轄下にあるプラスチックリサイクルの仕組みを変えるには4年という長い月日がかかりました。企業が次の新しい革新的な包装容器を発表する頃になって、ようやくリサイクルのインフラは4年前に出た技術に対応したばかりだった、といった時差が生じてしまったのです。よって、このふたつの変化がうまくつながりませんでした。

ここからわかったことは、仕組みそのものを根本的に変えるためには、マテリアルフロー上にいるすべての人たちが同時に変化を起こすしかないということです。グローバル経済という仕組みそのものを変えるには、変化の必要性を共有するとともに、どのように変えていくのか、という共通目標を定義し、共通認識をつくる必要があるのです。

市場に出るすべての資源は「リサイクル可能」「再利用可能」「生分解可能」でなければなりません。しかも、リサイクル可能・再利用可能・生分解可能というのは、技術上共通の規格でなければならず、同時にすべての人たちの共通認識になっていなければならない。これは鳥肌の立つようなチャレンジです。

この事実がわかったところで、私たちはプラスチックのマテリアルフローを取り巻くすべてのステークホルダーが、2025年までにこれらの目標とビジョンを私たちと共に設定しました。ポリマー製造企業や包装容器製造企業、ブランド、都市のリサイクルインフラ、すべての人たちです。そのすべての人たちがこの認識を共有し、同時に動くことで初めてシステムを変えることができるのです。

エレン・マッカーサー財団の『New Plastic Economy』というイニシアチブは、世界で初めてこれが実現したもので、今では800を超える団体がコミットする取り組みにまで成長しました。これでグローバル市場におけるプラスチック製造者の2割程度を押さえたことになります。一方、国ごとのイニシアチブ『Plastic Pact』は、プラスチックのサーキュラーエコノミー完成に向けたビジョンや目標をそれぞれの国の文脈や事情にあったものに解釈し、担う役割をもっています。

2050年までに海を漂う魚よりもプラスチックの方が多くなる、というのは世界に働きかける上で非常に重要でわかりやすい数字だと考えたため、資源としてまず始めにプラスチックを選びましたが、他の資源も同様のアプローチが必要だと考えています。企業が共通の解決策を見据え、コミュニティにおいてその問題が認識され、政策が連動したときにのみ、仕組みを変えることができるのです。私たちは、このプラスチックのためのサーキュラーエコノミーのアプローチをフレームワークとし、ファッションや食などの他の分野にも横展開しています」

環境はようやく整った

参加者のうち一人が、25年前ビジネススクールで経済と資源の利用がdecouple(分離する)必要があると話していたことを覚えている、と明かしてくれた。それから25年の月日がたった今、私たちはまだ解決に至っておらず、同じ課題に直面したままだ。唯一違うのは、解決のために私たちにはもう25年もの歳月は残されていないことだけだ。それでは、私たちは25年間の間一体何をしていたのだろうか。アンドリュー氏は話す。

「確かに、25年くらい前であれば、論文などはこの点について指摘していたでしょう。しかし、私たちは今、初めてこれだけ多くの異なる階層の組織と協力し、しかも複数の異なるトピックや分野に並行して取り組んでいます。これは、決定的に25年前とは違います。

皆が、このサーキュラーエコノミーという仕組みは実際に機能するもので、経済的にもメリットが見込むことができ、その上で気候変動対策にも寄与するということを共に認識して実際に動き始めているのです。

世界を動かすに至った大きな勝因は、概念をビジネスのフレームワークに落とし込むことができたことによるでしょう。実際に測定できるよう数値化したり、事例として切り出したりして、人々がわかる見せ方をすることの重要性がここにあります。これらの組み合わせによって産業は動き始めました。

もちろん非常に難しい道のりではあります。何年もリニア型の「成功」を収めてきた企業の環境を変えてしまうと、経済的にあっという間にうまくいかなくなってしまう可能性もあるためです。

しかし、マクロとしての解決策が見えてきたことや、社会におけるサーキュラーエコノミーについての理解が深まったこと、テクノロジーが整ったことは、25年前とは全く立ち位置が異なっていることを意味しています。そして、今年の新型コロナ危機によって、オペレーション上のリスクも明らかになりました(パンデミックはたまたま起きたのではなく起こるべくして起こっています)。つまり、イノベーション・変化を推し進める上で必要な要素が揃ったのです。

リニアエコノミーのリスクは、各所に目に見える形で現れるようになりました。同じ仕組みがもう続かないことは、多くの人にとっても目を逸らしようのない事実です。人々が目を覚ましたことだけでなく、政治による後押しや、企業への経済的優位性と解決策の確立という、必要だったすべての要素がひとつになりつつある今だからこそ、サーキュラーエコノミーの実現がこれ以上に現実的だった時代はありません。

実際に大企業が次々と参入し、サーキュラーエコノミーに取り組み始めています。2017年には、現在共に活動するユニリーバが、2025年までに100%再利用・リサイクル可能・堆肥化できるプラスチックしか使わないと目標を立てました。毎日20億個もの被包装製品を製造する企業がコミットすることの影響はものすごく大きい。私は、コミットメントと実行することはそれぞれが同じくらい重要だと考えています。コミットメントに対する進捗を、透明性を持って追うことも欠かせない要素です」

世界を代表する大企業経営者が見据える先は?

「世界を代表する大企業の経営者は、企業にはより社会的な側面が重要となっていることに気づいています。例えば、先週エレン・マッカーサー財団とイケアとのパートナーシップが公になりました。彼らはこれまで、効率、デザイン、そしてよりよいソリューションを追求することでここまで大きくなった企業です。自分たちの家具をすべての家庭においてほしい、という考えから、広く普及させるためのデザイン(democratised design)を突き詰めてきました。企業単独で考えれば、素晴らしい成功を収めています。しかし、もっと大きな仕組みの一部として製品を捉えると、見え方が一変します。どのようにすれば再利用・修理・リサイクルできるように変えられるか、というビジネスモデルの話になります。リースやサービスとしての製品(PaaS)などのモデルを用いていくことになるかと思いますが、そのモデルの中でどのようにコストを下げ、多くの人が利用できるようなサービスにできるかがポイントになっていくでしょう。

先程例に挙げたユニリーバも、もともとは超ロングセラーの商品を多く持つ企業です。100年以上の歴史があるものもあります。しかし、今の顧客の中心は移り変わりつつあります。30代、働いている女性、シングル、環境に関心が高い、となるとどうでしょう。自ずとすべきことは見えてきます。

私たちは、かつて掘削を行う産業だけをリニア型産業と呼びました。しかし今は、すべての産業がリニア型モデルだったことが広く知れ渡っています。今以上に、ブランドが社会的な立ち位置を明確に示し、どのような社会的意義をもたらすのかを示していくことが求められた時代はないでしょう。サーキュラーエコノミーへと移行することは、広い社会性を提供するという意味で、企業の向いている方向と一致します。移行へのプロセスではイノベーションが必要で、それによって人々により良い価値を提供していくのですから。この、人々により良い価値を提供していく、というのはどの産業であったとしてもビジネスの大原則です。

私たちは、サステナビリティに対する意識の高い人にだけ届くような製品を設計しようとしているわけではありません。もちろん、なかには金銭的・精神的余裕があり、環境について考えて選ぶ人もいるでしょう。でも、大多数はそうではありません。環境に良いけれど高いものよりも、自分のお財布に優しい安いものを選ぶのが自然です。この大多数の人たちに向けてより良い価値を提供することが、サーキュラーエコノミーにつながってきます。サーキュラーエコノミーの原則に沿うことと人々のニーズに応えることは同一線上にあると言えます」

新型コロナ危機がサーキュラーエコノミー移行を加速させる契機に

「今回の新型コロナ危機は、多くの問題を引き起こしたように報じられています。もちろん、多くの大切な命が失われ、過酷な環境で労働を強いられた方が多くいたことは非常に痛ましいことでした。しかし、それ以外の混乱は、新しく起こったことではありません。すでに起こっていた変化が急激に早まり、加速したに過ぎません。新型コロナ危機は、グローバルサプライチェーンの脆弱性を露呈し、イノベーションのスピードを飛躍的に早め、リアルからオンラインへの移行を早めました。

金融分野での変化は特に興味深いものでした。世界最大の資産運用会社ブラックロックのCEO、ローレンス・フィンク氏と本日打ち合わせをしましたが、彼によると、ESG分野へと移行していた投資ファンドはこの危機の中でもアウトパフォームし、優位性が証明されることとなりました。

また、コロナ危機からの『Build Back Better(より良い復興)』が求められる中、サーキュラーエコノミーへの移行は最適な手段といえます。私たちは今、新しい「成長」を見つけなければなりません。失われた職に対して、新たな雇用機会を見つけなければなりません。そして、今後起こりうるさらなる混乱に対して、レジリエンスを高めなければなりません。これは、すべてサーキュラーエコノミーがもたらすものと一致しています」

最後に、冒頭で紹介した質問に対して、参加者からは数多くの答えが寄せられたのでその一部を紹介したい。

あなたの考えは次の意見のどちらに近いですか?なぜそう思うのか理由を考えてみましょう。

  1. 人類は環境負荷がずっと少ない国際物流を再設計することができる。
  2. 本質的な解決策は製造をその地域の中で行い、輸送の必要性を排除することにあると思う。

参加者からの意見

  • 2に取り組むことで、自ずと1につながってくるのではないか。
  • 2に同意する。これはサプライチェーンのレジリエンスを高め、さらに経済におけるプレイヤーの多様化につながる。さらに、地域社会に資本を戻すことにつながり、その地域社会の繁栄につながる。しかし一方で、完全に輸送の必要性を排除することはできない。そのため、ローカルとグローバルのバランスが大事なのではないだろうか。
  • 私は1が正しいと感じる。ローカライズすることは大事だし、地域で完結できるならばすべきこともある。しかし、それだけが解決手段にはなりえないと思う。グローバルでもローカルでも、モノを輸送する手段は化石燃料を使わないシステムに移行する必要があり、すでに実現に向けた取り組みが各所で進められている。

エレン・マッカーサー財団のオンライン学習プログラム「From Linear to Circular: Open to All」第10回の今回は「CEOが語る壮大な見取図」というテーマで行われた。次回はRegenerative Agriculture(環境再生型農業)についてレポートする。

これまでの講義レポートはこちら

第1回「サーキュラーエコノミーとはそもそも何か?
第2回「サーキュラーエコノミーのためのデザイン
第3回「循環するビジネスモデル
第4回「次の段階のサーキュラーエコノミー
第5回「プラスチックのサーキュラーエコノミー
第6回「サーキュラーエコノミーと都市~建築、交通、食糧システムを変える~
第7回「ファッションのサーキュラーエコノミー
第8回「食のサーキュラーエコノミー
第9回「サーキュラーエコノミー移行のためのツール

【参考動画】TED「私が世界一周単独航海で学んだ意外なこと
【参照レポート】THE CIRCULAR ECONOMY OPPORTUNITY FOR URBAN & INDUSTRIAL INNOVATION IN CHINA
【参照サイト】New Plastics Economy
【参照サイト】Plastics Pact
【参照サイト】ブラックロック
【関連記事】イケアとエレン・マッカーサー財団、サーキュラーエコノミーへの移行に向けて提携