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拡大生産者責任(EPR)とは?

拡大生産者責任

拡大生産者責任(EPR)とは?

拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)とは、製品の環境負荷に対する生産者の責任が、製品の設計・製造・使用段階のみならず、消費後の廃棄・リサイクルの段階にまでに及ぶという考え方。

消費後の製品に対する生産者の責任として、以下の内容が含まれる。

  • 使用済み製品の回収
  • 適正な廃棄処理、廃棄物の減量化
  • リサイクルの仕組みの整備、リサイクル率の向上

この概念は、1990年代にスウェーデンの研究者、トーマス・リンクヴィスト博士(Thomas Lindhqvist)により提唱された。その後、2001年に経済協力開発機構(OECD)により拡大生産者責任のガイダンスマニュアルが発表され、2016年には改訂版が発表されている。

拡大生産者責任(EPR)が必要な理由

拡大生産者責任のアプローチが提唱された当時、各国は公害や廃棄物の増加への対応に追われていた。廃棄物処理費用が増加し続け、処理施設を新たに建設するための土地の確保も困難になっていたのだ。切迫した事態に対応するために登場したのが、「拡大生産者責任」のアプローチだ。消費後の製品の処理に関する生産者の責任を求めるこの仕組みは、財政面および環境面から効果が期待されている。

財政面

廃棄物処理に関する責任が、自治体や納税者から生産者に移転することで、自治体・納税者の財政的負担が軽減される。

環境面

廃棄・リサイクルに伴う環境負荷や費用を考慮し、生産者が製品の開発設計を行うようになる。その結果、リサイクル率の向上、廃棄物量の削減など、環境負荷の低減に繋がる。

拡大生産者責任(EPR)の動向

各国の環境政策に影響を与えている、拡大生産者責任のアプローチ。以下は、その動向をまとめたものである(※1)。

  • 世界では約400の拡大生産者責任に関わる制度が実施されている。そのうち、4分の3以上が2001年以降に成立した。導入済みの制度のうち、約9割が欧米主導である。
  • 制度の主な対象製品は、電気電子製品(35%)、タイヤ(18%)、容器包装(17%)、自動車・自転車用電池(17%)など。
  • 生産者が責任を果たす形態として最も多いのは、製品回収(70%)である。その他に、前払処分料金制(17%)、デポジット制度(11%)などがある。
  • 製品の回収や処理にあたっては、生産者責任団体(Producer Responsibility Organization)を設立し、個々の生産者の代わりに回収・処理システムの構築や運用を担うケースが多い。

拡大生産者責任(EPR)の課題

多くの国と生産者が拡大生産者責任に取り組んでいる一方で、制度の導入や運用にはハードルもある。

制度の設計とガバナンス

効果的な制度設計にあたっては、導入する国の環境政策や製品固有の特徴を踏まえる必要がある。また関係者が複数いる場合には、責任の希薄化を防ぐため、役割と責任を明確に定義することが必要。制度の効果を測るうえでは、定期的なモニタリングが求められる。しかし、制度以外の要因と切り離した効果測定が難しく、制度の内容も国や製品によって異なるため比較も容易ではない、といった課題もある。

ただ乗り(フリーライダー)、生産者不在の製品に対する対応

多くの生産者が取り組む一方で、一部の生産者が責任を果たしていない「ただ乗り」の状態が、OECDにより指摘されている。また、生産者が倒産した、もしくは個人が部材を集めて製品を組み立てたなどの理由で、生産者の特定が難しい製品への対応が課題となっている。

新興国、途上国における制度の運用

世界では約2,000万人のインフォーマルワーカーが、廃棄物処理やリサイクルに従事していると言われている。その多くが、新興国、途上国の人々だ。インフォーマルワーカーが果たす役割は大きい一方で、危険で劣悪な労働環境に置かれている傾向にもある。これらの点を踏まえつつ、環境面と安全面の両面を配慮した制度設計が求められる。

拡大生産者責任(EPR)の事例

日本では、循環型社会形成推進基本法や資源有効利用促進法をはじめとし、拡大生産者責任のアプローチが取り入れられた法律がある。製品の回収・リサイクルに関する生産者の責任が明確化された例として、以下のリサイクル法が挙げられる。

  • 容器包装リサイクル法
  • 家電リサイクル法
  • 自動車リサイクル法

まとめ

近年、サーキュラーエコノミーやサステナビリティの観点から、改めて注目を集めている拡大生産者責任のアプローチ。各国、各事業者のますますの連携が求められる。

※1 拡大生産者責任-効率的な廃棄物管理のためのアップデート・ガイダンス 日本語要約版(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)

【参照サイト】OECD「拡大生産者責任ガイダンス・マニュアル」について(経済産業省)
【参照サイト】拡大生産者責任-効率的な廃棄物管理のためのアップデート・ガイダンス 日本語要約版(公益財団法人 地球環境戦略研究機関)
【参照サイト】拡大生産者責任と企業の社会的責任 -容器包装リサイクル制度を題材として-(特定非営利活動法人 国際環境経済研究所)
【参照サイト】拡大生産者責任(EPR)とリサイクル(国立研究開発法人 国立環境研究所)
【参照サイト】拡大生産者責任(一般財団法人 環境イノベーション情報機構)
【参照サイト】廃棄物・リサイクル対策(環境省)
【参照サイト】大塚直、「EPR ガイダンス現代化とわが国の循環関連法」、廃棄物資源循環学会誌(一般社団法人 廃棄物資源循環学会)
【参照サイト】新興国・途上国での拡大生産者責任(EPR)の課題(国立研究開発法人 国立環境研究所)
【参照サイト】Extended Producer Responsibility (ELLEN MACARTHUR FOUNDATION)
【関連記事】米カリフォルニア州、繊維および衣料品の拡大生産者責任法を制定
【関連記事】英国、包装資材メーカーに拡大生産者責任を2025年10月から適用
【関連記事】EPR制度を循環経済の推進力に。Zero Waste Europe報告書

(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「拡大生産者責任(EPR)」を転載しております。)

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