グリーンリカバリーとは?
新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興にあたり、環境に配慮した回復を目指す景気刺激策のこと。具体的には、サーキュラーエコノミーやクリーンエネルギーなどの研究に対する助成、生態系の回復を促進する措置などが挙げられる。欧州を中心に広がっている政策であり、日本でも議論を加速させるべきだという声が上がっている。
WWFジャパン(世界自然保護基金)によると、グリーンリカバリーのポイントは次の2つだという。
- 地球温暖化対策の国際協定である「パリ協定」の達成に貢献すること
- 国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも一致した施策を実施すること
グリーンリカバリーの事例
2021年2月現在、世界で見られるグリーンリカバリーの事例としては、以下が挙げられる。いずれの事例にも、環境への配慮だけでなく社会の繁栄や雇用の創出といった視点が盛り込まれている。
欧州
欧州委員会は2020年5月、新型コロナウイルス感染症からの経済再建を図るための復興基金案「次世代のEU」を公表。その総額は7500億ユーロ(約89兆円)であり、同基金案の柱の一つとしてグリーンリカバリーが挙げられている。この案の中には、約100万のグリーン関連雇用を創出することが含まれている。
シンガポール
持続可能性環境省(MSE)は2020年8月、今後10年間でグリーンリカバリーに関連した産業の雇用機会が5万以上創出される見込みだと発表した。食料自給率を上げるための投資や、気候科学の分野で活躍できる人材の育成に力を入れる。
グリーンリカバリーを具体化するための理論的支柱
上記の事例とは別に押さえておきたいのが、オランダの首都アムステルダムが都市計画の一環で採用した「ドーナツ経済学」の考え方だ。もともとは同市が2020年4月に公表した、サーキュラーエコノミー移行戦略で採用された概念だが、図らずもポストコロナ経済を回復させる方法論としても注目されるようになった。
ドーナツ経済学は、経済学者のケイト・ラワース氏が2011年に提唱した新しい経済の概念であり、国・都市・人間が地球とバランスを取りながら共に繁栄することを目標にしている。エネルギー・水・住宅など、人が暮らす上で必須となるものは満たしつつ、それが地球環境の許容範囲を超えないようにするバランスのよいアプローチは、グリーンリカバリーを支える理論的支柱になり得るだろう。グリーンリカバリーの今後の行方を見守りたい。
【参照サイト】 ドーナツ経済学とは・意味
【参照サイト】 「グリーン・リカバリー」が鍵 コロナ禍からの復興
【参照サイト】 新型コロナ危機からのグリーンリカバリーを確かなものにするために克服すべき課題(OECD)
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(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「グリーンリカバリー」を転載しております。)