ベジタリアンとは?
ベジタリアンとは、肉、魚介類および、それらの副生成物(含有食品)を食べない人のこと。肉・魚介類に加え卵・乳製品なども一切食べないヴィーガン(ピュアベジタリアン)、植物性食品・卵を食べるオボベジタリアン、植物性食品・乳製品を食べるラクトベジタリアンなどのタイプに分かれる。魚も食べるぺスコ・ベジタリアンや鶏肉を食べるポーヨー・ベジタリアンなどもあるが、世界的なベジタリアン推進団体である国際ベジタリアン連合(International Vegetarian Union)はこれらのタイプをベジタリアンと認めていない。
「ベジタリアン」という言葉は1840年頃にイギリスで使われ始めたと考えられており、由来は「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語“vegetus”だという説と、“vegetable”(野菜)に、人を表す“tarian”の語尾を付けたという説がある。
ベジタリアンになる理由・動機
近年では、肉食主義の環境への負担や動物保護の観点からベジタリアンになる人が増えているが、古代より人類は様々な理由で菜食主義を取り入れてきた。ベジタリアンになる動機は代表的なものだけでも下記のようにさまざまだ。
宗教上の理由
世界の宗教の中には、菜食主義を奨励しているものがある。インド発祥のヒンドゥー教とジャイナ教が代表的。仏教では自分の手で殺生をすることは禁じられているが、肉食の容認・禁止については宗派によって異なる。イスラム教は肉食を禁じていないが、ハラールミート(イスラム教徒がアッラーの名を唱えて屠殺したもの)の入手が困難な状況では菜食が求められる。
健康上の理由
がん、糖尿病、肥満、高血圧、心臓病などの生活習慣病や認知症のリスクが減るなどの研究報告がされており、健康上の理由でベジタリアンになる人もいる。一方で、極端な食生活はかえって健康リスクを招くといった指摘もある。体質的に肉や乳製品が合わず、必然的にベジタリアンになる人もいる。
倫理的な理由
味覚や栄養のために動物を殺すのは、人を殺すのが許されないのと同様に倫理的に許されないと考える人もいる。また動物福祉の観点から、畜産動物の扱い方に問題があるとして肉食を反対する人もいる。去勢や母子の引き離し、鶏のケージ飼い、フォアグラのための強制給餌(ガチョウの肝臓を肥大化させるため)などが問題視されている。
環境保護のため
畜産業が地球環境への大きな脅威となっているため、肉の消費量を減らすためにベジタリアンになるという人が増えている。畜産業が環境に与える影響は、生産・輸送における大量の二酸化炭素・メタンガスの排出、放牧のための伐採による森林破壊、糞尿の不適正処理による水源汚染などがある。
世界の食糧問題の解決のため
世界では8億2100万人、人口の9人に1人が慢性的な栄養不足状態である。さらに人口増加や肉食の増加、異常気象による農作物の不足によって、いずれ世界的な食糧危機に陥るのではないかという懸念も指摘されている。肉を作るのには大量の穀物と大豆を消費し、広大な土地も必要となるため、肉の消費量・生産量を抑え、これらの土地や資源を農作物の生産にあてた方がより多くの人が飢餓から救われると考えられている。
ベジタリアンの種類
植物性食品に加え何を食べるかによってタイプが分かれる。
- ヴィーガン(ピュアベジタリアン):肉・魚介類に加え卵・乳製品なども一切食べない。蜂蜜などの動物由来のものも食べず、食用以外の革製品などの動物使用も排除する
- オボベジタリアン:植物性食品・卵を食べる。肉・魚介類・乳製品は食べない
- ラクトベジタリアン:植物性食品・乳製品を食べる。肉・魚介類・卵は食べない
- オボラクトベジタリアン:植物性食品・卵・乳製品を食べる。肉・魚介類は食べない
- ぺスコ・ベジタリアン(ぺスタリアン、ペスキタリアン、ぺスクタリアン):植物性食品・卵・乳製品・魚介類を食べる。肉は食べない
- ポーヨー・ベジタリアン:植物性食品・卵・乳製品・魚介類・鶏肉を食べる。鶏肉以外の肉を食べない
なお、マクロビオティックは基本的には肉・魚介類・卵・牛乳を食べないが、「陰陽調和」の思想によりそれらを許容することがあるなど、欧米の菜食主義とは思想が異なっている。
近年では、週1日など頻度を決めてベジタリアンやヴィーガンの習慣を持つパートタイム・ベジタリアンやパートタイム・ヴィーガン、無理のない範囲で肉を食べる量を減らすセミ・ベジタリアン、フレキシタリアンなど、さまざまなスタイルも生まれている。
ベジタリアンになっている有名人
日本人では、シンガーソングライターのイルカ、ミュージシャンの財津和夫がベジタリアンとして有名。元SKE48の松井玲奈は卵・乳製品・魚介類は食べるノン・ミート・イーターである。海外では、アメリカの歌手アリアナ・グランデ、アメリカの政治家アル・ゴア、アメリカの歌手マドンナ、イギリスのミュージシャンのポール・マッカートニーなどがいる。
故人では、インドの宗教家・政治指導者マハトマ・ガンディーが厳格な菜食主義者だったほか、作家の宮沢賢治、アップルの共同設立者スティーブ・ジョブズ、アメリカの歌手マイケル・ジャクソンなども一時期ベジタリアンであった。
ベジタリアンの今後
環境問題や食糧問題は深刻であり、個人ができる解決策の一つとして、ベジタリアンは今後ますます注目されていくと思われる。
一方、欧米に比べて日本では「ベジタリアン」が少なく、ゆえに飲食店や食品業界の対応が遅れている。そのため、日本に来る外国人観光客は「メニューがベジタリアン対応かどうか分からない」「ベジタリアン用の食事がない」などの悩みを抱えている。こうした悩みの解決策として、食の制限に対応できる多言語のウェブサイトvegewelが2016年から公開されたり、飲食業界でもベジタリアン対応に関するセミナーや勉強会を開催したりしている。今後もこうした動きは加速しそうだ。
【参照サイト】国際ベジタリアン連合(International Vegetarian Union)
【参照サイト】日本ベジタリアン協会
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【関連ページ】ヴィーガン
(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「ベジタリアン」を転載しております。)