株式会社日本総合研究所は10月21日、EV電池の資源循環に関する報告書「EV電池サーキュラーエコノミー白書」を発表した。同白書は、国内で中古化した電気自動車(EV)の8割超にあたる累計約9.4万台が海外に流出していると試算し、これが国内での資源循環を阻む最大の要因だと警鐘を鳴らしている。

同社の試算によると、中古EVとともに海外へ流出したリチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルは累計で約4,300トンに上る。白書は、国内に存在する使用済み製品を資源の供給源と見立てる「都市鉱山」になぞらえ、これらを「EV鉱山」と呼び、貴重な資源が国外へ流出している実態を指摘した。

世界的にレアメタルの争奪戦が激化し、EUや米国、中国で自国のサプライチェーンを優先する「レアメタル保護主義」の動きが加速する中、資源を輸入に頼る日本にとって国内循環の確立は急務だ。国内では経済産業省や環境省を中心に政策が進むが、個別の取り組みが連携不足に陥っている課題も挙げられた。

日本総研は、こうした状況を踏まえ、EV電池のサーキュラーエコノミー形成に向けて、次の5つの施策を提言している。

  • リユース・リサイクル市場形成に向けた政策立案
    国・自治体・民間が連携し、資源循環モデル構築に向けた普及策と制度設計を推進する。
  • 電池診断技術の整備と活用促進
    中古EV・リユース電池の価値を適正に評価できる診断技術の活用環境を整備する。
  • 中古EV・リユース電池の需要創出
    自治体と連携した計画的な市場開拓により、初期需要を喚起する。
  • 中古EV・リユース電池の需要創出
    自治体と連携した計画的な市場開拓により、初期需要を喚起する。
  • 加工貿易型サーキュラーエコノミーの確立
    国内外から使用済み電池や「ブラックマス(再生資源粉末)」を受け入れて再資源化し、国内需要を満たした上で余剰分を輸出して収益化する。

日本総研は、保護主義的な政策や地政学リスクが高まる今こそ、「EV鉱山」の活用によるEV電池のサーキュラーエコノミー形成を進めるべきだと結論付けている。

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