貿易・環境・SDGsに関するフォーラム「TESS(本拠スイス)」はこのほど、報告書「貿易、循環経済、持続可能な開発:貿易関連の循環経済政策と手段の設計アプローチと実践例に関するガイダンス」を公開した。

報告書は、英国王立国際問題研究所(通称チャタムハウス)・Circular Innovation Lab(本拠デンマーク)・米Infisum・SMEP(Sustainable Manufacturing and Environmental Pollution Programme、本拠南アフリカ)・The Or Foundation(本拠ガーナ)・Tulip Consulting(本拠スイス)の共同刊行。

貿易・循環経済・持続可能な開発の関連性への注目が高まるなか、公正な循環移行において貿易に関する包括的な国際協力が不可欠だとTESSはみている。そのため、TESSは学術機関・シンクタンク・政府間組織・利害関係者組織の専門家で構成するグループを招集。グループは貿易関連の循環経済政策と措置(TrCEM)における優れた実践とアプローチに関するガイダンスをまとめ、TESSは報告書として発表した。

報告書の目的は、公正な循環移行を支援する貿易政策に関する包括的な国際協力と共同行動の促進だ。TrCEMは世界貿易機関加盟国ですでに広く採用されており、TrCEM開発で基盤となる目的は次の3つに分類できるとしている。

  • 安全な循環の観点から、不要な・有害な・問題のある製品と材料および化学物質を排除、市場から排除、段階的に廃止する。もしくは、さまざまな規制・基準・関連基準に基づいて、これらの製品の取引を制限する
  • 市場投入された製品が規制・基準・関連基準に準拠していることを確認する。これらの規制・基準は、環境・健康・持続可能な開発の優先事項の支援と、資源効率が高く安全な循環移行への貢献を目的とする
  • リバースサプライチェーンを含む安全で環境配慮型かつ循環型のサプライチェーンの機能を促進する。安全な循環と資源効率向上を実現する製品・サービス・技術の開発と普及、および利用可能性と採用を促進する

TrCEMの設計と実施に関するガイダンス作成において、報告書は考慮すべき10項目を下記のとおり特定した。

  1. 用語・定義・分類に一貫性と整合性を持たせる
  2. 適切な規制慣行に従い、TrCEMを設計・監視する
  3. 調和・同等性・相互承認などを通じて、規制の不均一性を軽減する
  4. 違法な材料・製品・廃棄物の貿易フローを制限および排除する手段の設計と実装に協力する
  5. 循環経済の要件・基準の透明性と明確性を確保する
  6. 拡大生産者責任システムに関する国際協力を強化する。世界の製品バリューチェーンの状況と、使用済み製品の管理およびリバースサプライチェーンの貿易を反映させる
  7. TrCEMと国内政策の一貫性を高め、責任ある慣行を推進する
  8. 関税もしくは非関税、開発・普及・手頃な価格・採用に関する支援手段への協力などを通じて、循環経済目標を支援する環境配慮型の製品・サービス・技術の貿易を推進する
  9. 使用済み製品の安全で環境配慮型のリバースサプライチェーンを促進する
  10. 公正な移行支援に向けた協議・影響評価・能力構築・技術支援・資金調達・適切な技術の手頃な価格での利用を確保し、開発途上国と民間部門、特に中小企業が直面する特定の課題に対応する

そのほか、報告書は考慮事項の根拠と実践例を提示。考慮事項の実践には国際協力も必要であるとし、国際協力を実施できる可能性のあるフォーラムを考慮事項ごとに明示した。

【参照記事】Trade, Circular Economy, and Sustainable Development: Guidance on Approaches and Good Practices for the Design of Trade-Related Circular Economy Policies and Measures
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