ニューヨーク循環型都市イニシアチブが10月1日に発表したビジョンとレポートは、ニューヨーク市・企業・金融機関にサーキュラーエコノミー推進の一連の活動を促した。この取り組みは、新型コロナ危機からの回復、廃棄物の抑制、雇用創出、そして資源利用の最大化を支援するものだ。同イニシアチブは、世界で活躍する2,800人の弁護士からなる大手国際法律事務所フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所によって召集されたもので、ニューヨーク市経済の再設計に積極的な市長室・市当局・多国籍企業・財団・学術機関の連合だ。

レポート「Complex Challenges, Circular Solutions」は、将来の新しいビジョンと循環型経済を確立するロードマップを示している。同レポートによれば、循環型経済は製品と原材料をうまく活用そして再利用することで、廃棄物を埋め立てず環境汚染を最小限に抑えることが可能になり、多様な社会的背景のある様々なスキルを持った人々に雇用が生み出され、適切な報酬が与えられる。具体的には、第1に11,000人に雇用を創出、第2に110億ドルを超える経済的利益、第3に2030年までに廃棄物ゼロを目指すものとなっている。

同レポートは、ニューヨーク市の企業・公共部門・社会が循環型経済へ移行を推進するため、市場、政策、雇用、教育など10分野で次のような取り組みを推奨している。

  • 市場:都市周辺の既存の原材料市場を構築・開発・促進する。
  • 調達:循環型調達ガイドラインを作成し、公共調達における循環型経済の目標を設定する。
  • 拡大生産者責任(EPR):消費者が使用した後の製品の処分や廃棄について、生産者が財政的または物理的に責任を負う。
  • 雇用:都市周辺の循環型経済に関連する仕事・職を特定・促進し、雇用を創出する。
  • 計画:循環型経済の原則を土地利用区画・土地開発政策に組み込む。
  • 金融:サーキュラーエコノミーに関する技術や事業、スタートアップを金融支援するためのメカニズムとインセンティブ政策を確立する。
  • 政策:循環型製品にインセンティブを与える政策、例えば、消費税の引き下げ、循環型製品の市場の創出、廃棄物処理有料制などを策定する。
  • イノベーション:製品設計・製造過程・ビジネスモデル・カスタムメイドのプロジェクト・新商品の考案において、循環型製品を創出する。
  • コミュニケーション:サーキュラーエコノミーの利点や好事例を市民や事業者に伝えるキャンペーンを展開する。
  • 教育:サーキュラーエコノミーの考え方を職業訓練校・大学・ビジネススクールのカリキュラムに組み込む。

上記のような説得力あるアプローチとアイデアに支えられて、フレッシュフィールズブルックハウスデリンガーは、次のような公的部門と民間部門の両方で20社・機関のステークホルダーを集めた。

アラップ、BSR、Circle Economy、シスコシステムズ、Closed Loop Partners、エレン・マッカーサー財団、ゴールドマン・サックス、H&M、HSBC、Ideo、ING、ニューヨーク市経済開発公社、NYC Mayor’s Office for Climate Change、Danish Cleantech Hub、Queen of Raw、Recycling Partnership、SIMS、Stern NYU、テラサイクル、ユニリーバ

ニューヨーク市経済開発会社のCEO兼最高経営責任者であるジェームズ・パッチット氏は「循環型経済を構築すれば、ニューヨーク市にはより強く持続可能な未来がある。サプライチェーンを強化し、資源をより効果的に使用することで、イノベーションと経済を活性化し、環境への影響も軽減できる。このイニシアチブは重要な役割を果たす」と述べた。

【参照】The New York Circular City Initiative
【レポート全文】Complex challenges. Circular solutions.