欧州に本拠を置くアパレル業界の12の企業や機関は11月24日、EUが資金提供する「ニューコットンプロジェクト」に参画することを発表した。同プロジェクトは最先端技術を共同で活用し、衣料品生産のための完全な循環型モデルを実証することを目的としている。
3年間実施される同プロジェクトでは、廃棄された衣服から貴重な原材料を回収し、高品質のセルロース繊維を再生して新しい糸を紡ぎ、生地を織って衣服をデザインする。同プロジェクトにおける12機関の役割は、以下のとおりだ。
- Infinited Fiber Company(フィンランド・繊維再生技術):セルロースの豊富な繊維廃棄物を、見た目と感触が綿に似た繊維に再生する。同プロジェクトの主導的役割を担う
- Inovafil(ポルトガル・繊維メーカー)、Tekstina(スロベニア・繊維メーカー)、Kipas(トルコ・繊維メーカー):再生された繊維を使用して糸と織物、およびデニムを製造する
- アディダス(独・スポーツ用品)とH&Mグループ(スウェーデン・アパレル):生地から作られた衣服をデザイン・製造・販売する。アディダスは顧客からのフィードバックを収集し、回収プログラムを開発する
- Frankenhuis(オランダ・繊維リサイクル):同プロジェクトで使用される繊維廃棄物を分類して前処理する
- フィンランド南東部応用科学大学:前処理において繊維廃棄物を連続プロセスで処理するための技術ソリューションを開発する
- REvolve Waste(オランダ・繊維):繊維廃棄物に関するデータを収集・管理して、欧州での原料の入手可能性を推定し、使用済み繊維廃棄物の等級を定義する
- RISE(スウェーデン・研究所):Infinited Fiber Companyと共同で、プロジェクトの持続可能性と技術の経済分析を行い、生地と衣服のエコラベルを管理する
- アールト大学(フィンランド・リサイクル):開発されたエコシステムと循環型ビジネスモデルを広範に分析し、プロジェクトで最も実現可能なビジネスモデルを定義する
- Fashion for Good(オランダ・ファッションイノベーションプラットフォーム):利害関係者の協力を促進し、トレーニングを実施する。アールト大学とInfinited Fiber Companyの支援をもとに、コミュニケーションとブランディングおよび普及を主導する
EUは、アパレル産業が循環型モデルへの移行の可能性が高いことを認識しており、持続可能な循環型の生物由来の原材料を製造・設計するための技術を早急に開発する必要性を強調している。持続可能な製品を特別でないものにして廃棄物を削減し、循環性に関する世界的な取り組みを主導することは、EUの循環型経済行動計画に概説されている。欧州連合のHorizon 2020の調査イノベーションプログラムは、同プロジェクトに674万ユーロ(約8億3,000万円)を提供した。
Infinited Fiber Companyの共同創設者兼最高経営責任者(CEO)のペトリ・アラバ氏は「私たちは、アパレル産業の循環性を実現するために新境地を開拓する当プロジェクトを主導することに非常に興奮し、誇りに思っています。コンソーシアム全体が集まって、よりクリーンで持続可能なファッションの未来に向けて取り組んでいる熱意とコミットメントは、刺激的です」と述べている。
クリューガー量子
クリューガー量子(くりゅーがー りょうこ)ドイツ在住、ハイデルベルク市公認ガイド。土木工学を学び日本で土木技術者として働いた後、メキシコでスペイン語を習得、日西通訳として自動車関連企業で働く。2003年に渡独。専門分野:ドイツのサーキュラーエコノミー関連政策・企業動向、企業現地視察サポート、建設業界のサーキュラーエコノミー移行。個人ブログ:http://ameblo.jp/germanylife10/ 。(この人が書いた記事の一覧)