スマートモビリティとは?
スマートモビリティとは、交通・移動を変える新たなテクノロジーの総称だ。カーナビや自動運転車、IoT(モノのインターネット)を使ったセンサー、などがこれに含まれ、いずれも(主に都市部での)移動を「スマート」にしてくれるものである。ここでいうスマートとは、より安全で効率的であり、都市部の長年の課題であった交通渋滞や大気汚染などの課題を解決しうるものを指す。
データから人々の行動を分析し、テクノロジーで都市を最適化する「スマートシティ」に欠かせないのが、移動や交通を司るスマートモビリティだ。具体的には、以下のようなものが含まれる。
- 自動運転車
- カーシェアリング・ライドシェアリング
- AI搭載のコネクテッドカー
- 道路のIoTセンサー
- MaaS(Mobility as a Service)
スマートモビリティ化のメリット
スマートモビリティは、私たちの生活をただ便利にしてくれるだけではない。以下にメリットをまとめてみた。
- 安全性の確保:先進運転支援システム(ADAS)は、死角など隠れた「危険」をドライバーに警告することで安全対策を行うもの。緊急時に自動的にブレーキをかけることも可能なので、交通事故の死傷者を減らすことができる。他にも、Vehicle to Everything(V2X)を使用したスマートカーは事故が発生したときにすぐ救急車を呼び出せるシステムだ
- 交通渋滞の緩和:MaaSなどで交通機関を最大限スマートにし、車を使う必要がなくなれば必然的に交通量は減る。他にも自動運転車の普及が進み、それぞれの車両のスピードを調節したり、停止や動き始めのヒューマンエラーを最小限に抑えたりすることができる。さらに、リアルタイムの交通量データから、ピークのときや空いているときで値段を調節することも可能だ
- 経済的メリット:安全性を高めて、混雑を減らすことが、数十億米ドルの燃料費と生産性を節約することにもつながる。全米道路交通安全局(NHTSA)は、交通事故の年間コストを2,995億ドルと推定しているのだ
- 環境汚染の減少:都市のCO2排出と大気汚染の緩和にもつながっている。自家用車の所有を減らし、複数の交通手段をつなぐことで、人々の利便性を高めながら環境政策にもなるのがスマートモビリティだ。今後のゼロエミッション車両の普及がカギとなる
国交省・経産省の「スマートモビリティチャレンジ」とは
日本のスマートモビリティ関連のプロジェクトといえば、国土交通省と経済産業省が行う「スマートモビリティチャレンジ」である。IoTやAIなどのテクノロジーを活用しながら、日本国内での新たなモビリティサービスの実装に向け、地域と企業の協働をうながす動きだ。
2019年には28の地域・事業を選定し、実証実験等への支援を行った。2020年には、先駆的にスマートモビリティの社会実装に挑戦する地域を公募し、兵庫県神戸市や神奈川県川崎市など日本全国から52の地域が選ばれている。すべての地域や事業者は以下のリンクより確認できる。
新しい地域MaaS創出を推進!令和2年度スマートモビリティチャレンジの実証地域を選定しました(2020年7月31日発表)
日本国内のスマートモビリティに関する最も大きな動きの一つであるため、このチャレンジの結果については引き続き注視していきたい。
スマートモビリティのこれから
海外の例をあげると、フィンランドのヘルシンキは、2025年までに「自動車がいらない社会」を目指してMaaSアプリの運用やライドシェアリングに取り組んでいる。他にもスペインのバルセロナ、オランダのアムステルダム、韓国の仁川など、さまざまな都市でスマートモビリティの普及が行われているなど、現在の都市問題を解決するための一大テーマとなっていることは確かだ。
国交省・経産省のほかに日本でもう一つ大きな動きをしているのが、トヨタ自動車である。AIとネットワーク技術を融合させた新たなカーナビのシステムである「次世代テレマティウス」や、道路と自動車をネットワーク上でつないで渋滞の情報などをリアルタイムで取得できるようにする「協調型ITS」、フランスのグルノーブル市や愛知県豊田市での「i-road」実証実験など、さまざまなことに取り組んできている。
さまざまなテクノロジーが登場するなかで、もはや車の安全性や見た目のカッコよさ、速さなどを重視する時代から、「交通」がより人々の生活を豊かにし、環境も守る時代に移り変わってきた。スマートモビリティの今後が楽しみだ。
【参照サイト】Smart Mobility
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(※こちらの記事は、IDEAS FOR GOODの用語集「スマートモビリティ」を転載しております。)