Alliance to End Plastic Waste(廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス、以下AEPW)は9月2日、2020年進捗レポートを発表した。

同報告書は「廃棄物管理とリサイクルのインフラ」「イノベーション」「教育と関与」「クリーンアップ」の4つに重点が置かれ、環境におけるプラスチック廃棄物をなくして、循環型経済に貢献するための世界的な取り組みや投資の概要が記されている。AEPWはプラスチック廃棄物問題の最前線にある東南アジア・インド・アフリカの6カ国の14都市で14件のプロジェクトを立ち上げた。さらに報告書のなかで、総予算4億ドル(約424億円)に相当するAEPWメンバーによる55件のプロジェクトを取り上げている。

2019年に設立されたAEPWは、世界各国のプラスチックバリューチェーンに携わるさまざまな業界の主要企業が参加する非営利団体で、循環型経済実現に向けた解決策の提案や投資を行っている。

今回報告されたプロジェクトの例は、以下の通り。

  • インドネシア:新しい雇用を創出し、年間2万トンの廃棄物収集を目指すシステムを構築(プロジェクト名:Project STOP)
  • インド・ベトナム:環境へのプラスチック廃棄物の漏出と都市の人々の暮らしを改善する持続可能なソーシャルビジネスを開発
  • シンガポール・アメリカ・フランス:プラスチックバリューチェーンに影響を与える可能性のあるスタートアップなどを育成
  • タイ:AEPW創設メンバーであるスエズ(フランス、水・廃棄物管理・エネルギー)が、タイでのプラスチック廃棄物流出に対処する技術を開発し、プラスチックリサイクル工場を建設中。30,000トンのポリエチレンフィルムを再生原料にリサイクルする

クロスバリューチェーンの協働(連携して価値を生み出す取り組み)の例は、以下である。

  • ミリケン(アメリカ、服飾・化学)、リヨンデルベーセル(アメリカ、化学)、およびベリー・グローバル・グループ(アメリカ、プラスチック梱包)が共同で取り組んでいる、紙やプラスチックなどの再生率を高めることを目標にした二次選別システムの研究
  • ペプシコ(アメリカ、食品飲料)・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(アメリカ、一般消費財)・CPケミカル(アメリカ、化学)・ダウ(アメリカ、化学)が、サーキュレート・キャピタル(シンガポール・投資)のオーシャンファンドに投資。中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムなど、アジアのプラスチック廃棄物回収のための資金不足に対応することが目的

AEPWの会長で、プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニーの最高経営責任者(CEO)であるデビッド・テイラー氏は報告書のなかで、「プラスチック廃棄物は、迅速な行動と強力なリーダーシップを必要とする深刻な課題であるが、集団行動とイノベーションとパートナーシップを通じて解決できる。AEPWは、個人や公共・民間部門が関与するバリューチェーンに沿った一連の革新的な対策を支援することで、プラスチックの循環性と経済的価値を引き出せる」と述べている。

また、「プラスチック廃棄物問題は解決可能だ。私たちの戦略は、完全なプラスチックバリューチェーンの専門知識と資源をもとに全体的なアプローチを適用することだ」と、AEPWの社長兼最高経営責任者(CEO)であるヤコブ・デュア氏は語る。

2020年の進捗レポートでは、以下のAEPWの2025年の目標も発表された。

  • 複数の都市でプラスチック廃棄物ゼロを実証し、問題が深刻な100以上の都市でのアライアンスプロジェクトを通じて、数百万トン以上のプラスチック廃棄物を他の用途に使用する
  • 廃棄物管理を地域で行うことで、1億人以上の人々の健康的な生活を支援する
  • 従来と比較して5倍以上の投資を行い、プラスチック廃棄物ゼロと持続可能な都市構築を目指して行動し、解決に努める

プラスチック廃棄物問題の深刻な地域におけるAEPWのプロジェクトと投資が、人々に真の豊かな生活をもたらし、循環型経済の実現に大きく貢献していくことが期待される。

【プレスリリース】Alliance to End Plastic Waste Releases 2020 Progress Report