欧州議会の環境委員会と域内市場・消費者保護委員会は7月7日、使用済み自動車規則案について、欧州議会としての修正案を賛成多数で可決した。9月に実施される本会議で正式に採択予定だ。この規則案は、部品の再利用やリサイクルを容易にするための設計要件、再生材利用に関する拘束力のある目標、廃車の収集・処理における生産者責任の強化などを盛り込んでいる。
修正案は、欧州委員会が当初提案した内容を、欧州議会が独自に修正したものだ。特に、新車への再生プラスチック利用目標について、当初の案よりも段階的な目標へと変更された。具体的には、規則発効から6年以内に20%の再生プラスチック使用を義務付け、その後10年以内に25%まで引き上げるという、より現実的な道筋が示されている。欧州委員会は今後、実現可能性調査を経て、再生鋼材やアルミニウムに関する目標も導入すべきだとしている。
また、日本の産業界が特に懸念していた炭素繊維の含有制限に関する文言はすべて削除された。当初の修正素案では、炭素繊維の使用に制限が設けられる可能性が示唆されていたが、業界からの強い働きかけにより、最終的な案からこの条項が取り除かれた。なお、バイオプラスチックを再生プラスチック含有率に含められるとする旨も削除された。
その他の変更点として、新車は修理・リサイクルしやすいよう設計が求められ、メーカーがソフトウェアで部品交換を妨げることも禁じられた。
廃車管理の側面では、メーカーの責任を拡大する「生産者拡大責任(EPR)」が強化される。これにより、メーカーは自社製品が廃車となった際の収集・処理にかかる費用を負担することになる。また、各国当局に対しては、廃車処理施設の査察をより頻繁に行い、違法行為を特定するための査察計画を策定するよう求めている。中古車の輸出に関しても規制が強化され、廃車と見なされる車両の輸出を禁止するために、廃車の基準を明確化する。
共同報告者を務めるイェンス・ギーゼケ議員とパウリウス・サウダルガス議員は、「本日の委員会での採決は成功だ。幅広い支持を得た議会の妥協案は、自動車セクターにおけるサーキュラーエコノミーを推進するものだ。我々は、業界に過度な負担をかけないよう、現実的な目標、官僚手続きの削減、公正な競争を通じて実現可能性を確保した。9月の本会議採決に向けた強固な基盤となるだろう」とコメントした。
EUでは毎年約650万台の車両が廃車となっている。今回の新規則案は、この現状を踏まえて資源効率を大幅に高めることを目的としている。規則が発効した場合、乗用車とバンには1年後、バスや大型車などには5年後に適用される予定であり、軍用車両や歴史的価値を持つ車両などは適用除外となる。既存の「指令(Directive)」を、より包括的でEU全域に直接効力を持つ「規則(Regulation)」に置き換えることで、取り組みの実効性を強化する狙いがある。
【プレスリリース】Circular economy: new EU rules to make the automotive sector more sustainable
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