新型コロナウイルス感染拡大が収束しないまま2021年に入り、世界中において政府は経済を軌道に戻そうとしている。学校は休校になり、労働者は解雇され、人と集まることができないままでいる。こうしている間にも人々は焼却炉から排出される汚染された空気を吸い続け、温室効果ガスは大気中に放出され、数百万トンの固形廃棄物は世界中の埋立地・ごみ集積場・道路・水路などに蓄積され続けている。コロナ禍は、地球全体において社会が直面している困難な課題の山に新たな課題を追加しただけだと言える。

GAIA(*)によって公開されたレポート「廃棄物ゼロと経済回復:廃棄物をなくす解決策が生み出す雇用創出の可能性」は、#BeyondRecoveryキャンペーンにおける最初の出版物であり、廃棄物をなくす戦略が経済の回復において社会的・環境的および廃棄物管理における目標の達成をいかに後押しするかを明らかにしている。

データの有効性により、レポートの範囲が修理・リサイクル・再製造・堆肥化に限定されるものの、他の研究では、飲料容器などのデポジット返還システムといった廃棄物ゼロ戦略から大きな雇用機会が得られると示唆されている。さらに、廃棄物ゼロシステムは、廃棄に関する雇用よりも優れた仕事を生み出し、労働者が単純な肉体労働を超えたスキルを活かす機会を生み出し、より高い賃金や安定した地位を提供し、生活の質を向上させるとしている。

年間10,000トンあたりの資源処理における雇用創出数を示した廃棄物ヒエラルキー(出典:GAIA 廃棄物ゼロと経済回復:廃棄物を無くす解決策が生み出す雇用創出の可能性 P3 より)

廃棄物ゼロ戦略は、多くの地域における雇用機会につながり、ベトナムのホーチミン市では18,818人、タンザニアのダルエスサラームでは18,133人、ブラジルのサンパウロでは36,701人分の仕事を生み出すと試算される。全体として、修理は埋立や焼却よりも200倍、リサイクルは50倍、再製造は30倍もの雇用を創出するとしている。

人々は、資源が廃棄され、低所得で他から疎外されたコミュニティが見捨てられ、汚染産業がはびこるようなリニア型経済に戻ることはできない。この調査は、世界が抱える最大規模の環境ハードルのいくつかに取り組み、また、現在のシステムによって最も影響を受ける人々のために多くの良い仕事を生み出すことを両立させる新しい方法を示している。

廃棄物ゼロ戦略は、雇用創出の可能性を生み出すだけでなく、自治体の出費を抑え、最悪の経済状況を改善するという。さらに、廃棄物による環境への影響を低減させ、経済成長を促進するという両面において利益をもたらす。そのため、パンデミックによる影響への対応に苦戦している政府にとって見逃すことのできない戦略であるとしている。

*GAIA

90か国以上、800を超える草の根グループ・非政府組織・個人によって構成される世界規模の同盟。廃棄物と汚染に対する解決策を推進する草の根の社会運動を強化することにより、世界が環境に関して正しい方向に向かうことを促進している。

【参照記事】Less Waste = More Jobs – Zero Waste (zerowasteworld.org)
【参考】ZeroWasteJobs-Infographic (zerowasteworld.org)
【参考】Fact Sheet: Deposit Return Systems Create More Jobs