関西経済同友会 環境・エネルギー委員会は4月5日、提言「アジアのプラスチック問題解決と我が国の経済成長の両立に向け、循環経済への移行を加速させよ」を発表した。「課題認識」「循環経済への移行に必要となる主な対応」「提言」の3章で構成される同提案の概要は、以下である。
課題認識
プラスチックの大量廃棄は環境に負荷を与えている。リニア型の経済モデルは限界に近づきつつあり、循環経済への移行が求められている。
循環経済への移行に必要となる主な対応
企業・行政・消費者は一体となって、以下に取り組む必要がある。
- 企業による環境配慮設計:資源投⼊量を最⼩限に抑え、リサイクルにも配慮して設計し⽣産する
- ビジネスモデルの変革:デジタル技術などを活⽤したビジネスモデルの変⾰により新たな顧客需要を捉える
- 消費者の意識変革:エシカル消費や追加的コストの受容などの意識変⾰が不可⽋である
- リサイクル社会実現の加速に向けた技術開発・仕組み作り:循環経済、循環型社会の実現に向けたイノベーションや制度設計が必要である。行政は研究開発・実装への財政を支援し、法と制度を整備する
提言
1.企業は、循環経済移行に向けたビジネスモデル変革に覚悟を持った取り組みを!
- 企業は循環経済への移行を世界的な不可避の潮流と認識し、生産・サービス両面で事業モデルの変革に覚悟を持って取り組むとともに、資源の循環とマネタイズに向けた人材育成に注力すべき
- デジタル技術を活用し、新たな顧客需要の獲得と資源循環の両立を果たすべき
2.消費者の行動変容に向けて行政と企業は連携し、サステナビリティ教育のさらなる充実を!
- エシカル消費などのサステナブルな消費を「クール」と捉える社会に向けて、行政は初等・中等教育におけるサステナビリティ教育の充実を図るとともに、企業は行政と連携して実感や共感を生む教育プログラムの開発・提供に取り組むべき
- 企業は消費者の行動変容に向け、自社取り組みの適切な発信に努めるべき
3.企業はプラスチックを中心としたリサイクル技術のイノベーションに取り組むとともに、政府は研究開発や国内外への普及に向けた支援を!
- 循環型社会の実現に向けて、リデュース・リユース・水平リサイクルの拡大などのイノベーションが不可欠
- 企業は企業間連携・産官学連携・スタートアップの活用などを通じてイノベーションに取り組むとともに、政府は研究開発やイノベーション製品の流通面における普及初期段階の支援拡充に取り組むべき
- 政府は資源循環に関する日本の優れた製品・サービスの海外展開に向けた財政支援、リスク補償を充実させるとともに、アジア諸国への働きかけを通じてイニシアチブを取るべき
最後に、同提言は目指すべき姿を次のように示した。
- 循環経済への移⾏に向けて、企業・⾏政・消費者が一体となって取り組むとともに、日本の優れた製品やサービス、社会インフラを資源循環の仕組みが十分に整っていないアジアを中心に世界展開することで、世界の社会課題解決と日本の経済成⻑の両⽴を実現する
- 2025年の⼤阪・関⻄万博で、未来の循環型社会のあり方を示し、来場者が体験・価値観を共有する
同提言は、教育を含む消費者の行動変容や企業によるイノベーション促進、そして世界展開における行政の支援など、幅広い取り組みを求めた。同提案が目指す姿の実現に向け、企業・行政・消費者が共同で循環経済移行への取り組みを進めていくことが期待される。
クリューガー量子
クリューガー量子(くりゅーがー りょうこ)ドイツ在住、ハイデルベルク市公認ガイド。土木工学を学び日本で土木技術者として働いた後、メキシコでスペイン語を習得、日西通訳として自動車関連企業で働く。2003年に渡独。専門分野:ドイツのサーキュラーエコノミー関連政策・企業動向、企業現地視察サポート、建設業界のサーキュラーエコノミー移行。個人ブログ:http://ameblo.jp/germanylife10/ 。(この人が書いた記事の一覧)