経済産業省は1月20日、ネットスーパーおよび消費者の家庭における電子タグ(RFID)を活用した食品ロス削減に関する実証実験を開始したことを発表した。同実験は、経済産業省委託事業「令和2年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したスーパーマーケットにおける食品ロス削減事業)」(委託事業者:株式会社日本総合研究所)として行われる。
日本の流通業においては、少子高齢化による深刻な人手不足やそれに伴う人件費の高騰、消費者ニーズの多様化が進行してきた。また、サプライチェーンに多くの事業者が存在していることなどが、食品ロスや返品が発生する一因となっているともいわれている。こうした状況を踏まえ、経済産業省は2017年4月にコンビニ各社と「コンビニ電子タグ1000億枚宣言(※1)」を、2018年3月に日本チェーンドラッグストア協会と「ドラッグストアスマート化宣言(※2)」を発表した。同省は、RFIDなどを活用したサプライチェーンの効率化を進めており、2020年11月から約2カ月間、コンビニエンスストアにおける電子タグ(RFID)を活用した食品ロス削減に関する実証実験を実施した。
同事業では、生鮮食品について、産地でRFIDを貼り付け、出荷以降のサプライチェーン上のトレーサビリティを確保するとともに、温湿度ロガーを活用して食品の鮮度を可視化し、鮮度情報に応じた価格で販売する実証実験を行う。また、スマホアプリと連携し、消費者による商品購入後の家庭内での食品在庫管理などを行う実証実験を実施する。これらの事業を通じて、サプライチェーンの情報の可視化や食品ロスの削減、付加価値の提供など、サプライチェーンの効率化・生産性向上を図る。
実証実験の概要は、以下のとおりだ。
実施期間
2021年1月20日~2021年2月9日
委託事業者(実施主体)
株式会社日本総合研究所
協力事業者
伊藤忠インタラクティブ株式会社、株式会社イトーヨーカ堂、凸版印刷株式会社、三井化学株式会社、大手SIer、全国約20産地
対象商品
青果物・肉・魚などの生鮮品、そのほか日配品約60品目、約3000点(RFID付与点数)
実験内容
- 産地にて対象商品にRFIDを付与し、産地の出荷から、卸・ネットスーパーの配送拠点、消費者までの一連のサプライチェーン上の情報を、食品情報追跡管理システム「foodinfo」にて管理し、食品のトレーサビリティを確保する
- 青果物については、産地出荷時に温湿度ロガーも合わせて梱包し、流通過程で記録した温度・湿度情報を「鮮度予測・可視化システム」と連携して、商品ごとの鮮度予測情報も管理する
- 実証実験協力小売事業者は、実証実験に参加する消費者向けのECサイト「eatmate store」にて商品を試験販売する。鮮度予測情報をもとに、食品の鮮度を「採れたて度」という指標でサイトに表示し、採れたて度に応じた価格で販売(ダイナミックプライシング)する
- 実証実験に参加する消費者は「eatmate store」を通じて食品を購入する。購入した食品の履歴はスマホアプリ「eatmate」に自動連携され、消費者はアプリから家庭での在庫や食品の消費・廃棄量などを確認できる
- 実験結果を踏まえ、食品のトレーサビリティの確保、鮮度情報やそれに基づくダイナミックプライシングによる食品ロス削減への効果、家庭内における食品ロスの削減への効果などを検証する
出典:経済産業省「電子タグ(RFID)を活用した食品ロス削減に関する実証実験を行います」
※1:サプライチェーン全体で食品ロスや返品を削減することを目標に、2025年までにセブン-イレブン・ファミリーマート・ローソン・ミニストップ・ニューデイズは、年間推計1000億個のすべての取扱商品に電子タグを貼付けて商品の個品管理を実現するという宣言
※2:サプライチェーン全体で食品ロスや返品を削減することを目標に、2025年までにドラッグストアの取扱商品に電子タグを利用するという宣言
【プレスリリース】電子タグ(RFID)を活用した食品ロス削減に関する実証実験を行います
【参照サイト】IoT技術を活用したスーパーマーケットにおける食品ロス削減事業
【参照サイト】「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定しました~サプライチェーンに内在する社会課題の解決に向けて~
【参照サイト】「ドラッグストア スマート化宣言」を策定しました~サプライチェーンに内在する社会課題の解決に向けて~
【関連記事】経産省、電子タグ(RFID)を活用した食品ロス削減の実証実験を開始