ドイツに本社を置く化学メーカー大手BASFのカナダ支部が、ブロックチェーンを活用したプラスチック資源のサーキュラー化プロジェクト「reciChain」の試験運用を開始した。

reciChainは、ブロックチェーンをデジタルバッジやループカウントの技術と組み合わせて活用することで、バリューチェーン上におけるプラスチックの分別、トレース、モニタリングを向上するものだ。さらに市場で安全に情報を共有することが可能になる。

資源の透明性が向上するため、ブランドオーナーはリサイクル・処理業者から確証を持って資源を購入できるようになる。これにより、リニアモデルと比べサーキュラー・サプライチェーンに競争優位性が生まれ、プラスチックの資源としての寿命を延ばすことに繋がる。

現在BASFとDeloitteが共同でカナダ・ブリティッシュコロンビア州で試験運用しており、今後カナダ全国に広げ、プラスチック回収・再資源化の世界的リーダー・カナダとして国を位置づけていきたい考えだ。

プラスチックのリサイクルを取り巻く経済は世界的な課題だ。Deloitte for Environment and Climate Change, Canadaが発表したレポートによると、カナダが2016年の一年間に廃棄したプラスチックは330万トンに上る。そのうち11%はリサイクルされたが、残りは埋め立てられるか自然の中に廃棄されたことになる。これは同水準で続く見通しで、2030年までに年間で廃棄するプラスチック資源の価値は金額にして111億ドル(約1兆2,000万円)にも上る。

BASFカナダの代表、マルセロ・ルー氏は次のように語る。「reciChainを使うことで、私たちはプラスチックの価値を蘇らせ、サプライチェーンにおけるサーキュラリティを格段に向上することを目指しています」

ルー氏はさらに、マニュアル化された工程と資源の汚染が資源回収と分別における課題だと指摘する。ブランドオーナーや小売を巻き込む中で、資源のトレーサビリティも課題となる。

reciChainはもともとBASFがブラジルでテスト運用を開始したが、それはリサイクル証明書の発行をめぐる社会的不平等と規制上の懸念の問題に対処したいという市場でのニーズからだ。reciChainはプラスチックのリサイクル価値をトークン化する機能があるため、他の業態と比べリターンが低いと考えられる協同組合にも、サプライチェーンにおいて付加価値を公正に分配することを可能にするからだ。

マテリアルフロー(資源採取から廃棄までの流れ)の透明性が向上することにより、リサイクルの文書のコンプライアンスが向上する。このプロジェクトはすでにブラジルの主要企業の参加を得ており、今後もカナダのパイロットと並行して開発が進められる予定だ。

BASFブロックチェーンラボ責任者のアンソニー・ディプリンツィオ氏は次のように話す。「reciChain の実装が成功すれば、プラスチック製造業者、サプライヤー、政府機関、小売業者、廃棄物回収業者、リサイクル業者が手を取り合い、プラスチック資源を循環させ続けることを目的とした共同のデジタルコンソーシアムが誕生することになります」

サーキュラーエコノミーへの移行において、ブロックチェーンは重要な鍵を握る。このプロジェクトの成功は、切実なプラスチック廃棄問題解決の糸口として世界から注目されている。

【参照サイト】Envisioning Plastics Circularity