ベルギーに本拠を置くゼロウェイスト普及に取り組む非営利団体Zero Waste Europe(ゼロウェイストヨーロッパ、以下ZWE)は 3月4日、循環型経済パッケージ(2018年版)の中核をなす廃棄物に関する新埋立指令(以下、新埋立指令)を分析し、新たな提案を含む政策提言「The new 10% landfill target may work against the circular economy(新たな10%埋立目標はサーキュラーエコノミーの原則に反して作用する可能性がある)」を発表した。

政策提言の主なポイント

1999年に制定された廃棄物埋立指令(Landfill Directive、以下、埋立指令(1999/31/EC)は、 EUの廃棄物政策の中核を担い、すべての廃棄物の埋立に関わる指令として、EUの循環型経済移行への原動力となってきた。2018年5月22日にはこの埋立指令を改正する新埋立指令(New Landfill Directive(2018/850))を採択。EU加盟国に対して数値目標が義務化された。

新埋立指令では、2035年までに自治体から排出される埋立削減目標を全体の10%以下にするという目標(以下、10%以下目標)などが柱だ。同指令は、リサイクル・再利用・分別回収を促す廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive)と一帯になっているが、ZWEの分析によると、循環型経済パッケージの原則とは相容れないとしている。

10%以下目標は、野心的な性格をもつと言及。さらに、埋立廃棄物量の計算年は任意の年であることや目標数値が10%と絶対重量ではなく削減割合となっている。そのため、国や自治体はこの目標達成のために容易な方法である焼却を推進してしまうことになると懸念。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の原則は、そもそも廃棄物発生の削減や原料回復量の最大化という「入口」の部分で努力するというものだ。新埋立指令は、廃棄物発生を前提としたとも捉えられかねない内容、すなわち廃棄物発生削減よりも埋立削減という「出口」の部分での対策である指摘する。従って、サーキュラーエコノミーの原則と矛盾してしまうとしている。

埋立指令・廃棄物枠組み指令とは?

同提言が話題としている埋立指令(1999/31/EC)2018年改正(2018/850)廃棄物枠組み指令(2008/98/EC)2018年改正(2018/851)のポイントは下記の通りだ。

埋立指令(2018年改正含む)

  • 埋立禁止物質の指定(液状廃棄物・感染性廃棄物・使用済みタイヤ・未処理の廃棄物など)
  • 生物分解性廃棄物量の段階的削減
  • 埋立前の都市廃棄物(日本でいう一般廃棄物うち個体を指す)の前処理の事実上の義務化。すなわち前処理が施されていない場合は、埋立不可。
  • 2035年までに自治体から排出される都市廃棄物の埋立削減量を全体の10%以下にすると定め、加盟国は必要な措置を講じる。

廃棄物枠組み指令(2018年改正含む)

  • 都市廃棄物のリサイクル率を2035年までに65%とする。
  • 拡大生産者責任(EPR, Extended Producer Responsibility)の強化。
  • 紙・アルミニウム・鉄・ガラス・木材・プラスチックなど個別のリサイクル目標の設定。
  • バイオ廃棄物は2023年中、家庭から出る有害廃棄物は2025年1月1日までにそれぞれ分別体制を構築する。

政策提言が指摘する2つの問題点とは?

10%以下目標はサーキュラーエコノミーへの移行を実現する有効な施策に映る。しかし、同提言はその目標設定の仕方に問題があるという。大きく2つの問題点を挙げている。

1つ目は、10%という削減割合で示すことに問題がある点である。廃棄物排出量の絶対重量での削減という本来の目標は重視されない。従って、10%以下目標は達成するが、一人当たり廃棄物排出量をキログラムに換算すると、高い埋立への依存度となってしまうケースもあるという。

2つ目は、埋立廃棄物量の計算年は、特定の基準年ではなく任意の年と定められている点。特定の基準年を設けないと、例え廃棄物発生量が減ったとしても、10%以下目標には届かないケースもあると指摘。1つ目の削減割合での目標の問題点とも相まって、廃棄物削減のメリットが認識されづらいという。例えば自治体は、廃棄物発生を削減する方向ではなく、ペットボトル等のリサイクル可能な廃棄物を保有しておき、その後一気にリサイクル率を高めて10%以下目標を達成するような間違った動機を与えてしまう。

具体的事例として、2018年のデンマークとゼロウェイストに取り組んでいるイタリアのトレヴィーゾ県の廃棄のデータを比較している(下表参考)。

デンマーク 2018年 トレヴィーゾ県 2018年
廃棄物発生量 kg / 一人あたり(年間) 766 388
焼却された廃棄物kg / 一人あたり(年間) 392 0
残留廃棄物 kg / 一人あたり(年間) 49
スラグ / 灰 (焼却された廃棄物の25%と計算) 一人あたり (年間) 98

The 10% landfill target works against the circular economy”(P11)Zero Waste Europe (ゼロウェイストヨーロッパ)による分析に筆者が和訳

デンマークでは、年間一人当たり766kgの廃棄物発生量に対してトレヴィーゾ県は388kg。デンマークの焼却量は392kgに対してトレヴィーゾ県は0kg、すなわち焼却はしていない。デンマークの焼却から生まれる焼却灰などの重量は98kgに対してトレヴィーゾ県の残留廃棄物(資源化・減量化を行なった後に出る残余ごみ)は49kg。この場合、デンマークの削減率は12.8%(=98kg÷766kg×100)となるが、絶対量で見た場合はトレヴィーゾ県の2倍(=98kg÷49kg)の量が埋め立てされることになる。しかし、割合で見ると、トレビーゾ県の削減率は12.6%(=49kg÷388kg×100)とほぼ変わらない。絶対量はデンマークと比べて約2分の1だが、削減率はほぼ同じである。

トレヴィーゾ県は、リサイクル可能な廃棄物の回収率改善・生ゴミの別処理・ごみ処理有料制・残留廃棄物のモニタリングの実施などゼロウェイスト施策を実行している。そもそもの年間廃棄物発生量がデンマークの半分となっている所以だ。しかし、削減率だけで見ると結果は同じに映ってしまう。

前述のように、そもそも廃棄物枠組み指令では、65%以上のリサイクル率目標がある。10%の埋立量削減目標があるため、残りの25%(=100%-65%-10%)は焼却すればいいのではないかという自治体の考えもあるという。しかし、65%は「最低で」という形容詞がついていることに留意すべきだとしている。トレヴィーゾ県の事例のように、さらなるリサイクル率向上などゼロウェイスト施策の積み重ねによって、焼却に頼ることなく10%以下目標は達成可能だと主張する。

さらに政策提言は、焼却へのインセンティブが働いて、焼却炉建設の投資を回収する必要が発生すると述べている。従って、焼却炉の稼動を担保するために、一般廃棄物の量を確保せざるを得ない。サーキュラーエコノミーは究極的には廃棄物という概念をもなくす経済・環境・社会のシステムの転換である。それは、トレヴィーゾ県のように年間一人当たりの廃棄物削減や廃棄物からの原料回復量増加という「入口」の部分の取り組みに重きを置くことを意味する。しかし、この例のように新埋立指令は廃棄物発生の絶対量削減に誘導する方向になっていないのがZWEの主張の根幹である。

これらを受け、政策提言は下記2つの提案を公表した。

1. 埋立廃棄物量の基準年を設定する(例えば2019年の埋立廃棄物量を基準とするなど)。現在は、任意に設定した年となっているため、基準年を設定することで廃棄物発生を抑制するインセンティブを働かせ、廃棄物削減を最優先事項と認識してもらう。

2. 年間一人当たり埋立量をキログラム換算した絶対重量での削減目標を採用する。この目標は現在の10%という目標を置き換えるものか補完するものかいずれかとして機能する。トレヴィーゾ県のような廃棄物発生削減に取り組む自治体が報われるようにすることがねらいだ。

この発表の1週間後には新しい循環型経済戦略である「新循環型経済行動計画」が発表されたが、同提言はこれに少し先駆けて埋立削減目標設定のあり方に釘を刺した形となった。新循環型経済行動計画では、埋立指令について直接触れられていないが、今後の廃棄物関連政策の動向が注目される。

政策提言が浮き彫りにすること

同提言をCircular Economy Hubで取り上げたのは、以下の2点を浮き彫りにすると考えたからだ。

まず1点目は、廃棄物の削減や原料回復に誘導するサーキュラーエコノミーの原則について、改めてその役割を認識する機会になる点である。サーキュラーエコノミーは、あらゆる手段を講じて廃棄物発生自体を削減することに重きを置く。新埋立指令の埋立を減らすという最終目的には合致するものの、廃棄物発生を前提にするとも捉えられかねない目標設定の仕方に問題があるため、ZWEが新たな案を提唱したということがポイントである。

2点目は一人当たりの廃棄物削減という考えを再認識することである。日本では、ごみ総処理量における直接焼却の割合は約8割(2017年のごみの総処理量に占める直接焼却量)と、諸外国と比べて高く、埋め立ての割合は1割未満と低いが、一人当たりの廃棄物削減という考えは今後の廃棄物政策を考える上でますます重要となるだろう。

Circular Economy Hubでは、過去から日本が参考にしてきたEUの廃棄物政策や新しく発表された新循環型行動経済計画を受けた法律類の改正動向に着目をしていく。

【参照サイト】Zero Waste Europe
【参考サイト】The new 10% landfill target may work against the circular economy
【参照サイト】埋立指令(Landfill Directive(1999/31/EC))
【参照サイト】新埋立指令(Landfill Directive 2018(2018/850))
【参照サイト】廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive(2008/98/EC))
【参照サイト】廃棄物枠組み指令2018改正(Waste Framework Directive 2018(2018/851))