国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)は3月26日、ポリ乳酸が抱えるもろさと生分解性の課題を、微生物により生合成される乳酸と3-ヒドロキシブタン酸の共重合体(略称:LAHB)をブレンドすることで克服したと発表した。産総研のマルチマテリアル研究部と、触媒化学融合研究センター、国立大学法人神戸大学、株式会社カネカの共同研究により実現した。

ポリ乳酸は、代表的なバイオ資源由来プラスチックだが、力学的にもろく、生分解性が限定的といった課題があった。今回の研究では、LAHBをポリ乳酸にブレンドすることで、ポリ乳酸の伸びの大幅な改善に成功したという。

また、LAHBのブレンドによりポリ乳酸の海水中での生分解が促進されることを発見。バイオ資源由来プラスチック材料の普及促進への貢献を図る。

ポリ乳酸は、バイオ由来資源の乳酸発酵により得られる乳酸をモノマーとして、化学重合により合成されるバイオプラスチック材料。ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート(PET)と同程度の物性を示し、透明性、生体適合性などの特徴を有することから、石油由来プラスチックの代替材料として利用拡大が期待されている。しかし、ポリ乳酸には、伸びにくくもろい、限定的な環境下でしか十分な生分解性を示さないなどの問題があり、利用拡大の妨げとなっていた。

産総研は、ポリマー材料をマトリックスとした複合材料開発、複合化プロセス技術開発と複合材料の構造評価に取り組んでいる。神戸大学の田口特命教授らの研究グループは、遺伝子組換え大腸菌により、乳酸(LA)と3-ヒドロキシブタン酸(HB)の共重合体(LAHB)の生合成に成功。カネカは、水素細菌を利用したバイオプラスチックの量産技術を確立している。3者がそれぞれの実績と技術を生かし、ポリ乳酸にLAHBをブレンドすることで、ポリ乳酸の課題の克服に挑んだ。

産総研と神戸大学は、国立研究開発法人科学技術振興機構の委託事業「研究成果展開事業/研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(育成型)/微生物産生コポリマーLAHBのポリ乳酸多機能改質材料化」(2023~2025年度)で本研究を継続する。

LAHBの一次構造(モノマーの比率や配列、分子量など)およびポリ乳酸とのブレンドの相構造と、ブレンドの力学・熱特性、生分解特性との相関関係を調べ、ポリ乳酸の課題を克服するのに最適なLAHBの構造を明らかにすることに取り組む計画だ。ポリ乳酸/LAHBポリマーブレンドを、生分解性と優れた力学特性を兼ね備えたバイオ資源由来プラスチック材料として活用する基盤構築を図る。

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